続・能動してみる
────前回までのあらすじ。
能動。
以上。
「お、あれはアザレアでは?」
圧倒的能動力で中庭から退避し、次の獲物を探し求めてキョロキョロしていると、窓から覗く屋敷の中にアザレアの姿があった。
アザレアにもご迷惑をおかけしたし、お話ついでにご飯に誘ってみよう。
思えばアザレアを誘われこそすれど誘ったことはそんなにないような気がするしね。
「それでは行きませう」
「…はい」
なぜかちょっとノロちゃんの機嫌が悪くなったような気がする。
いや今そんな気がしただけで確証はないけど、なんとなくそう感じた。
…まぁ表情とかも変わってないし、気のせいか。
「おーい、あーざーれ────おや?」
早速屋敷に戻り、アザレアに声を掛けようとしたのだけど先客がいるらしく、誰かとお話をしている。
というかニョロちゃんだ。
「…あなた誰?どこの子かしら?」
「────!」
「セラフィムが出入りするようになって気が付けば知らない子が増えてるなんてことは日常茶飯事だけど、私が把握できてない子が紛れ込むのは問題よね。どっかからの刺客とかならどうするつもりなのか」
「…────」
「…もしかして喋れないの?」
「────!────!」
うん、大体わかった。これはあれだ。
どうやらアザレア選手…ニョロちゃんが誰かわかってないっぽい。
いやこれに関しては無理もない。
だってニョロちゃん…人型になってるからね。
ちなみにニョロちゃん本人曰く、頑張って戻ろうと思えば見慣れた蛇状態に戻れるそうだけど、マリちゃんの面倒も見ている都合上、基本は人型でやっていくことにしたそうな。
そんなわけで今の状況なわけだけど、確かにアザレアに説明しておかないといけなかったねこれは。
ニョロちゃんが自分での説明が難しい以上はこうなるのも必然なわけで…うん、ここは遅くなったけど私が説明しなければ。
これぞ能動。ついでにニョロちゃんもご飯に誘う事で二重能動ポイント総取り大決戦フェスティバルである。
完璧な能動作戦を胸に二人に近づこうとしたその瞬間だった。
「────!!」
ぶしゃぁあああああ!とニョロちゃんが口から毒を吐き出してアザレアの顔に直撃させたのだ。
「ほぎゃぁああああああああああ!!!?おぼはぁ!?うごごごごごごご…!」
当然だけど普通の人間であるアザレアにニョロちゃんの毒なんて大変なものであるわけで、アザレアは顔を抑えて床を転がりのたうち回っている。
「────!」
「あ、あんたいったい何を…!って…あら?この毒…もしかしてクロロ…?」
おぉ…ちょっと苦しんだだけで立ち上がった。
そういえばアザレアはニョロちゃんの毒を昔から少量ずつ取り込むことで耐性を手に入れたとか言ってたっけ。
もしかすればいつかアザレアも私と一緒にニョロちゃんの毒でお茶をできる日が来るのかもしれない。
「ちょっとクロロ!あなたどうしたの!?なんでそんな姿に…」
うんうん、やっぱりびっくりするよね。
「────」
「クロロ…どうして…」
ずしゃぁ!と音を立ててアザレアが崩れ落ちた。
なんかショックを受けてるっぽい?…私たちは「びっくり!」だったけどアザレアは蛇の姿になにか愛着があったんだろうか。
まぁくもたろうくんみたいに人型になる魔物を見慣れてる私達とアザレアじゃ違うか。
そう思っていたけど、次の瞬間にアザレアは鬼の形相でニョロちゃんの両肩を掴んだ。
「どうして…どうしてそんなにおっきくなるのよおおおおおおおおおお!!!」
「────?」
「あと2センチと4ミリ小さければ…あなたそれ身長142センチ3ミリあるでしょ!?140未満じゃないとだめでしょ!?うちの子なのになんでそんなに大きくなったの!!!なんでなのよぉぉおおお!!」
「…」
もう大泣きだった。
何がそんなに悲しいのか分かんないけど、とにかくアザレアが大泣きしている。
大人がここまで人目もはばからず大泣きしている姿と言うのはなかなかに貴重なのではないでしょうか。
「ねぇねーこのうるさい人だぁれー?」
「…は?」
にょろちゃんの背後からひょこっとマリちゃんが顔を出した。
位置的に見えなかったけれどずっとニョロちゃんの背中にしがみついていたらしい。
「ちょ…ちょっとまって…待ちなさいクロロ…その小さき命はいったい…?ねぇね…?ねぇねって言ってた…?妹さん?妹さんがいたの?クロロ。答えなさいクロロ」
「────(こくり)」
ニョロちゃんが背中に手を回してマリちゃんを掴んでアザレアのほうに寄せた。
どうやらマリちゃんを紹介したかったみたいだ。
「ひ…102センチ8ミリ…!!うそうそうそでしょ…な、なんでこんな究極生命体がこんなところに…!はぁ…!はぁ…!まずい…うまく呼吸が…!ぐっ…!お、お嬢さん…お名前は…なにかしら…」
「ねぇね…なんかこわいぃ~…」
「────」
「ねぇね呼びが可愛しゅぎりゅ…!ね、ねぇクロロ…あなたの妹と言う事は実質私の妹よね…?ね!?そうでしょ!?ほ、ほらぁ…お嬢さん…はぁ…はぁ…私の事も…ねぇねって…はぁ…!呼んでみない…?」
具合でも悪いのか、激しく呼吸を乱しながらアザレアはニョロちゃんの手の中のマリちゃんに手を伸ばす。
そしてその手が触れるかどうかという瞬間…マリちゃんが口から大量の毒霧を吐き出してアザレアに吹きかけた。
これはマズいかもしれない。
いくらニョロちゃんの毒に耐性があったとしてもマリちゃんのにはないだろうし、そもそもマリちゃんは小さくなったと言っても正真正銘の金龍だ。
急いで解毒しないと!
「うっ…ぐぐぐぐぐ…き…き、き…効ーかーなーい!!!」
「────!?」
「え!?」
なんとアザレア選手、マリちゃんの毒霧を突破してニョロちゃんからその小さな身体を見事に奪い取って見せた。
「ほ、ほぁあああああああああ!!あ、暖かい!幼女特有のぷにぷにぼでーから感じる高い体温がっ!!こんなにもっ!!心地いい!!!はすはす!すんすん!そして甘い!香りが!空気が!存在が!ほほほほほぉぉおおおおお!?」
「みゃぁああああああああ!!ねぇねーーー!!!」
「────!!────!!────!!!!」
…うん、なんか忙しそうだし、声をかけるのはやめておこう。
他人の事情を考慮して身を引くのもまた能動と言える。
能動的撤退パート2だ。
「ノロちゃん行こうか」
「それが…よいか、と…思います…」
何故か少し機嫌がよくなった気がするノロちゃんの手を引いて次なる能動ポイントに向かう。
「…ん!?あら!?今メアたんいなかった!?もしかして見られた!?ち、違うのよメアたん!これは浮気じゃないの!!違うのメアたぁああああああああああああああああああん!!!」
「やー!はーなーしーてー!」
「────!!!!」
「あっ、ちょっ…なにそれ、ちょっと、まっ────おぅごほぁ!!!!!!?」
うんうん、みんな仲良しで元気。それが一番なんだから実に健全だ。
続く。
申し訳ありません。現在エンサーではないほうのインフルにかかってしまい、寝込んでおります…!なので次回更新まで間が空いてしまうかもしれません!
のんびりとお待ちいただければと思います。




