能動してみる
せーさんが出て行ってから気が付いたというか思い出した。
そういえば私はここにせーさんに次は何をするべきなのかを聞きに来たのだった。
みんな忙しそうな中に私もぬるっと参加しちゃったからすっかりと忘れていた。
どうしよう?むむむ…いやしかし、せーさんに何をするのかを尋ねるという事は結局それは最終的に受動的行動になるのではないだろうかと思う所存。
私がするべきは能動的行動なのだ。
よし、ここは誰にも何も聞かずに何かをやってみよう。
そうとなれば私が今やりたいことを考えて実行に移すのが最善最速。
そして私の今やりたいこととは何と意外なことに…お腹が空いたのでご飯が食べたいという事だった!!
おそらく誰もが予想だに出来なかった行動でしょう。
いいね!こういう想像もつかない行動をとるという事も能動ポイントが高いよ~!
「うむ、ではそういうことでアヤメちゃんにエクリプスちゃん。ご飯を食べに行きませぬか?」
独りではなく皆を誘う。これはすさまじい能動ポイントげっつ!
しかしなんと二人とも首を横に振る!ふぅ~!現実は厳しー!ひゃぁー!
…あまりにもテンションが迷子だ。
これは能動的という言葉の迷路に捕らわれてしまっているのかもしれない。少し落ち着きませう。
「わたしぃ~さすがに~ちょっとぉ~色々とぉ~資料とかまとめてぇ~ポリちゃんと交流を持ってたのがぁ~不可抗力だったとぉ~証明しないとぉ~ヤバそうなのでぇ~すみません~ん~」
そう言いながらエクリプスちゃんは喋り方とは真逆のきびきびとした動きで部屋を勢いよく出て行ってしまった。
「アヤメちゃんは?なにかご用事?」
「あぁ。ちょっくら古巣にと思ってな」
「古巣?」
「緑神領だよ」
「急ぎで?なにかあるのですのん?」
「ここでぼーっとしてると知り合いにあっちまいそうだからな。チビしかり…「青」とかもな。聖の大将にも私は死んだものとしててくれと言ってあるからお前もそう言う事にしといてくれ。金神領にいた面々は仕方ねぇが…これ以上広がるのは無しでな。んじゃ」
止める間もなくアヤメちゃんは窓から出て行ってとんでもないスピードで走り去ってしまった。
…走って緑神領まで行くつもりだろうか?
なにはともかく二人ともいなくなってしまった。
仕方ない、一人で寂しくごはんを食べますか。
「いや!ここで自分でご相伴相手を探すことこそ能動!私は諦めない!誰か一緒にご飯を食べてくれる人を探し、声をかける!」
夢への近道は最初の一歩を成功させること。そう母が言っていた。
私は私の決心を確たるものとするために能動的に誰かを誘い、ご飯を食べる!
やるぞー!やってやるぞー!
という訳で私も部屋を出る!
まずは扉を開ける!ノロちゃんとエンカウント!パーティーメンバーげっつ!!完!!!
「ノロちゃん何か食べたいものある?」
「お腹が…空いて、おりません…」
そんなことある?お腹なんていつだって空くものでしょうに。
しかしあれだね、こうなるとノロちゃんをご飯メンバーにカウントするのはダメなのかもしれない。
あまりにもあっさりと達成してしまったし、せめてもう一人誘うとしませう。
というわけで私はノロちゃんと仲良くおててを繋いで屋敷の中を探索することにした。
しかし探索とは言ったものの、実はすでに目星はつけている。出来るドラゴンなのでね。
せーさんの執務室から見える中庭の方にちらっとうさタンクの姿を見たんだよね。
あの子に会うのもなんだか久しぶりだし、一緒にご飯を食べるのも良いでしょう。
そんなわけでいざ中庭へ。
そしていざたどり着くと目当てのうさタンクはすぐに見つかった。
今日のウサタンクはたまに見る鎧を着たでっかい姿だったので見つけやすかったのだ。
というか周りにリンカちゃんと…これまたお久しぶりの黒神領市民の皆さん代表のシルモグとカナリの姿があった。
みんなで何かしている最中なのだろうか?というかリンカちゃんはずっと体調を崩して寝込んでいたという話だけどもう大丈夫なのかな?…うん、そこら辺の事情を聴くのもついでにご飯に誘うのがいいのかも。
「おーい、みんな────おや?」
声を掛けようとして少しだけ不思議なことに気が付いた。
うさタンクがなにか縄のようなものを握っているのだ。
そしてその縄はリンカちゃんの下の方に繋がっているように見える。
ちょうどみんなの下半分が植え込みに隠れてよく見えないから気にしてなかったけど…よくよく見るとリンカちゃんの動きがおかしい。
不自然に上下しているというか…何かに乗ってる?そしてその何かにうさタンクのロープは繋がっているらしい。
なんだろう?もしかして大きなペットでも飼い始めたのかな?
なんとなく真剣な様子だったのでもしかしたらペットの調教中とかなのかもと声をかけるのを一旦遠慮して私は四人を観察した。
そして進んでいく四人が植え込みの切れ目に差し掛かり…リンカちゃんが何に乗っているのかが見えた。
まさかの「人」である。
燃えるような髪をしてメイド服を着た知らない女の人。
その人が首に縄をかけられて四つん這いになってうさタンクに引かれてて…その上にリンカちゃんが乗っている。
シルモグとカナリもそれを見守ってて…もうなんか何もわからぬ。
「はひぃ…はひぃ…!こあらマイン様ぁ…!も、もう限界でしゅぅ…!」
「う、うさタンクちゃん…もういいから…この人可哀そうだって…」
「ならぬ。我が主が言っていた。混乱する頭を落ち着かせるにはさらに奇怪な状況に身を置くのが一番だと」
私そんな事言ったかなぁ…?言ったかもしれない。しかしそれを私に伝えたのは母なのですべての責任はあの女にある。
だからノロちゃんよ、そんな目で私を見るのはやめておくれ。
うん、ここにこれ以上長居するのはマズイ。
ここは能動的撤退を選択するべきだろう。
「ノロちゃん行くよ!」
「…」
何か言いたげなノロちゃんを引きずってその場を後にした。
能動的に動くってむずかちぃにゃぁ…。
続く。




