失われていた命
私という名のドリルで謎空間から脱出してから数日。
そこそこの大変なダメージを受けてしまった金神領はてんやわんやの毎日。
…いや、うん…主に私のせいなんですけども。
ニョロちゃんを追って迷い込んだあの謎空間…なんと普通に謎じゃない空間にもつながっていたらしく…私がノリで使ってしまった超必殺の影響が出てしまい、大変なことになってしまっていました。
これはさすがに反省ドラゴンした方がいいと思ったので反省ドラゴンしたのだけど、神父おじさんは笑って許してくれた。
「むしろこの程度の被害でアレの脅威を退けられたのなら安いものだ」とかなんとか。
たぶん死縛獣の事を言ってるんだろうけど、そこまで脅威でもなかったよ?とは内心思いつつ、藪からドラゴンが出てきても困るので、黙ってましたん。まぁ怒ってないならいっか!というあれでここはひとつ。
たださすがにこのまま知らんぷりしようと言うのは私の中にある良心の呵責というものがあれなので復興作業のお手伝いをすることにした。
というかくもたろうくんとヴィオさんが神父おじさんとなにやら難しい話をしてるっぽいので、そこに混ざれない私はどっちにしろ暇だからね。
というわけで国が大変なことになって落ち込んでいるであろう金神領ぴーぽーたちの助けになろうと意気込んでみたのだけど…。
「さー!賭けた賭けた!赤か白か黄か!」
「うおおおおおおお赤に賭けるぞ俺はー!3口だ!」
「ふっ…ここは確率的に白一択に決まっているわ。この勝負はもらいね」
「へっ…へへへ…なんだぁ…?誰も黄に賭けねのかぁ…?なら俺は…黄に賭けるぜ…ぜ、全持ち札をだ…ひひひひひっ…これで大穴…当たりは全部俺のもんだぁ…ふひゃははははははぁ!!」
瓦礫の上で賭けに興じる皆様の姿がそこにはあった。
それだけではなく、余った端材を子供たちがおもむろに持ち去って詰み上げ始めたかと思えば、あっという間に大きな専用のリングを作り上げ、その中でこれまたお手製の独楽を回し始めた。
「いけー!僕のブラックサンダーライジングビートル!」
「負けるなー!私のブラックメテオセイバーバッファロー!」
「うぉおおお!蹴散らせ!俺のブラックエボルブスフィアリバイアサン!」
「あれ!?父ちゃん!?」
「私に勝てると思うのかっ!行きなさい!ブラックウイングバーニングライガー!」
「ママ!?」
突如として始まる仁義なき決戦。
こんな光景がそこらじゅうで繰り広げられている。
当然だけどちゃんと作業もしている…しているんだけど、突然スイッチが入ったかのように遊び始め、そしてスイッチが入るように仕事に戻る。
なんというか…私のアレ以外にも色々と被害が出てるはずだし、もう少し暗い雰囲気なのかと思っていたけれど、むしろお祭りのような雰囲気さえある。
伊達に娯楽の国と呼ばれているわけではないという事を思い知った。
そしてそうなれば私も遊ばないわけにはいかない。
郷に入りては郷と一体化せよと母も言っていた。
ここの一般ぴーぽーぅは前から黒髪の私に厳しくはなかったけれど、事件後は何故か輪をかけて優しくなっていて色々と混ぜてくれた。
だから私はみんなを連れて復興を手伝いつつも遊んでいたのだけど…。
「うおおおおおおおお!またまた白銀のクイーンの一人勝ちだー!!」
「やっぱクイーンはすげぇぜ!!」
高台の上に設置された椅子の上に座らされ祀られている銀龍さん。
なぜかあの人、異常に賭け事が強くて連戦連勝。
圧倒間に賭博部門で頂点に上り詰めていた。
なお本人は椅子の上でずっと「?」と言った様子でされるがままになっている。
ちなみにあの人が入国後に行方不明となっていたのはカナちゃんとユキちゃんが喜びそうなお土産を見つけてフラフラと引き寄せられ、当然のように私達と逸れた後に呼び込みに捕まってしまい、頭に「?」を浮かべたまま賭け事に参加させられ、頭に「?」を浮かべたまま勝ちに勝ち…最終的に頭に「?」を浮かべたまま豪勢な生活をしていたから…らしい。
あまりに自由人!
私みたいに規律と協調性を重んじるドラゴンからすれば驚きである。
そんなわけで銀龍さんが離脱。
くもたろうくんとヴィオさんはお話ちう。
ネムは「私に光は眩しすぎる…」とか言い残してどっか行った。
なので私の現在のぱーてーはニョロちゃん。そして…。
「ねぇね~むぎゅーっ」
「────」
ずっとニョロちゃんを抱き上げてくっついているマリちゃんだ。
戻ってきてからと言うものずっっっっっっっっっっっっ────とこの調子で、元は一つだったという言葉を証明するかのようにずっとくっついてる。
マリちゃんが大人体型、ニョロちゃんがお子ちゃま体型なのでずっとマリちゃんがニョロちゃんを抱えている感じ。
ほっぺ同士をむにむにとさせてみたり、お互いの髪を編み込んでみたり、とにかくもう一生べたべたむにむにもちもち状態で大変だ。
「えへへ~ねぇね~ねぇね」
「────、────」
「きゃーっ!ぎゅーっ!」
「────!」
うむ。微笑ましい。
久しぶりの家族の再会なのだからべたべたしている方がらしいでしょう。
…そう言えば私、二人のマミーを燃やしてしまったけど大丈夫なのだろうか。
いくら仲が悪くてもお母さんだし、少しは思うところがあるんじゃ…と思って聞いてみると。
「お母さん?なにそれ。そんなんどうでもいいし」
「────?」
二人とも母親を家族と認識はしていないというような返答だった。
…そう言う事もあるのか。
いや龍としてはそれが普通なんだろうか。
…私としては少し思うところがなくもないけれど、まぁご家庭によるよねと納得した。
そしてひとまずお昼休憩のご飯。
色々と大変な状況なのでたくさんは食べられないので一つ一つに感謝して味わって食べる。
「ねぇね、あーん」
「────」
「えー?アタシもねぇねにあーんしたいー!ねぇねだからって私にばっかあーんするのずるいー!」
「────!────?…────」
「もうっ!ねぇねのわからずやっ!」
「────!」
「喧嘩しないの―。じゃあ間を取って私がふたりにあーんしてしんぜよう。あーん」
「あーん」
「────」
両手に持ったパンの欠片をくっついている二人に食べさせる。
うん、なんだか餌付けしているみたいだ。
「えへへ…楽しいなぁ~…ねぇねにマブダチと一緒で…えへへ…」
「────」
「それはよかった。それにしてもずっとくっついてて暑くないのん?」
「ないよー。それよりずっと離れてたからねぇねから違う匂いがするんだもん。アタシの匂いで上書きしておかないと!」
「────」
うんうん、仲良しですな。
そんなこんなで時間は過ぎていき、夜になって…。
────ニョロちゃんとマリちゃんが姿を消した。




