感動の再会
ひとまず死縛獣を討伐してから数分。
これからどうしようかとニョロちゃんと作戦会議…という名の休憩をしつつ、動かないマリちゃんをどうしようかと私たちは頭を悩ませていた。
「どうしようかニョロちゃん」
「────」
「あぁわかるわかる。おいしいよねー」
「────」
しかしどうすることもできないので強硬手段に出るしかないかと思い始めてきたところ…。
「…あっつ!!?なにこれあっついんですけど!!」
先ほどまで死んだような目でボーっとしてて何の反応も見せなかったマリちゃんが唐突に顔を上げて叫び始めた。
確かに先ほど私がついうっかり超火力ファイアーしてしまったので暑いですね。ごめんよ。
でもどうやら意識を取り戻して?くれたっぽい。
「マリちゃん」
「ん!?なに!?ダレ!?」
「おっと、そう言えば大きくなってるんだった。私だよメア」
「マ!?確かに匂いがずっともじゃん!マブダチウェーイ!」
「まぶだちうぇーい」
拳をあわせてごっつんこ。
マリちゃんとお話してすぐに色々とあったからどうなってるのかと思ってたけど、お友達宣言は有効らしくて一安心。
これならスムーズにお話が出来そうだ。
「マリちゃんマリちゃん」
「なになに?」
「はいこれニョロちゃん」
「────」
「えっ」
差し出したるはニョロちゃん。
色々と聞きたいことと言うか、やらなくちゃいけない事とかたぶんあるんだけど…家族とのひと時よりも大切なことなんてないよね。
「ニョロちゃんって…うそ…でも…ねぇね…なの…?」
「…──…────(こくり)」
「ねぇね…」
「…」
ピタリと動きを止めたまま動かない二人。…おや?なんか思ってた展開と違う。
もっとこう…だーっ!と走って、がしぃ!とハグして、もしゃもしゃぁ!と一緒にご飯を食べる展開じゃないのかい。
「どしたの二人とも」
「────…」
「…ねぇねのこと…メアが連れてきたの…?」
「え?うん」
連れてきたというか、巡り合わせの成り行きなんだけれど説明をするのもめんどくさいし、そう言うことにしておきませう。
「ねぇね…本当に生きてたんだね…」
そう言うとマリちゃんは膝をついて泣き始めた。
「───」
「よかった…ねぇね…アタシ…もう一度だけねぇねに会いたかった…それでずっと謝りたかった…」
「…────」
「迷惑かけてごめんなさい…嫌なことしてごめんなさい…たくさんたくさんごめんなさい…だからねぇね…アタシ…」
なんか話がおかしな方向に行き始めた。感動の再会はどこへ。
あ、そういえばニョロちゃんとマリちゃんはお互いに誤解をしてた…させられてたんだっけ。
先代の金龍にお互いが邪魔だと思っているというふうに吹き込まれていたらしい。
マリちゃんはその誤解をしたまま、必死に首を振っているニョロちゃんの姿も見ずに泣きじゃくって公開を口にし続けている。
はぁ~やれやれ。
「マリちゃんマリちゃん」
「ぐすっ…ひくっ…ねぇね…ごめんなさい…アタシ…ねぇね…が言うのなら死んだって…」
「おばかー!」
「あいたー!?」
炸裂、メアちゃんビンタ。
「なにするのメア!」
「これはねずっともの気付けだよ。マリちゃんね、いつまでも他人に言われて思い込んだ自分の中の誰かを見てちゃダメ!目の前にニョロちゃんがいるでしょ!泣いてばかりいないでニョロちゃんの事を見てあげて!」
そこでようやくマリちゃんが顔を上げる。
そうすることで見えたでしょう。泣きそうな顔でマリちゃんをなだめようとするその姿が。
「ねぇね…」
「────…」
「あのね、ニョロちゃんはすっごい頑張って一人でここまで来たんだよ。大切な妹が大変な目に遭ってるからって必死にここまできたの!だからマリちゃんもニョロちゃんを見てあげて!仲良し家族だったんでしょ!悪い方にばっか考えてないで、ちゃんと見て!ニョロちゃんは大切な妹に酷いことを思うような悪い子じゃないでしょ!ね?」
「う…うぅ…ねぇねは…アタシのこと…嫌いじゃなかったの…?」
「…」
ニョロちゃんは何も言わない。
ただ行動で示した。ぎゅっと強く妹を抱きしめて。
元は一つだったと証明するかのように。
二人の間に境界なんてないと思わせるほどに力強く。
「うっ…うぇぇぇぇえええええええええん!ねぇねー!!わぁあああああああああん!!」
大な声で泣きながらマリちゃんもニョロちゃんを強く抱き返して…ようやく私が想像していた感動の再会になった。
うんうん、めでたしめでたし。
…
………
…………
………………ってなったのはいいんだけど。
「どうやってここから出る?」
「────?」
「そもそもここどこぉ…って感じなんですけど」
感動の再会からたぶん30分くらいあと。
二人が落ち着いたのでここからの脱出方法を話し合う。
「どこってたぶんだけどマリちゃんの中だよ?」
「アタシの中?なにそれ!」
何かおかしいぞとマリちゃんの話を聞いてみたところ、マリちゃんには死縛獣になるちょっと前からの記憶が何もないらしい。
だから当然なぜ私とニョロちゃんがここにいるのかも把握していないみたいで…これはもうあれしかないか。
「じゃあ最終手段だと思っていたあれをしませう」
「あれ?」
「はい、どこからともなく取り出しますはとても長いロープ」
「────(ぱちぱち)」
「えーなにそれーどっから出したん?メアちょーすげー」
「そしてこのロープの先端を握ってものすごい勢いで私の身体にぐるぐると巻きつけていきます」
「────」
「簀巻きで草ぁ」
「そして最後に残ったロープの先端を二人に進呈」
「────!」
「なになに?どうすんの?」
「それを思いっきり引っ張ってほしいのです。全力だよ?全力で。ドラゴンぱぅわー全開でおながいしゃっす」
「えぇ?それでどうなるの?メアの目がめっちゃ回るだけじゃん?」
「────!!」
「まぁねぇねがそういうのなら…じゃあメア行くよ?」
「どんとこぉい」
せぇの!と掛け声を出してニョロちゃんとマリちゃんが紐を思いっきり引っ張った。
私に巻き付けられていた紐が引っ張られることによって私の身体は回転をはじめる。
その勢いはとどまることを知らず、私の身体は螺旋を纏う!
見よこれぞ母直伝のハイパードリルアタックだ!
高速回転する私の身体は地面を削り、周囲の空間をも巻き込んでさらに回転力を高めていく。
ドリルとは全てを貫通する最強の突破力を持つモノの名前だと母が言っていた。
その回転は地を穿ち、空間にさえも穴を開けると。
これならばこの謎空間からも脱出が可能だろう。そして────
────────────
ドン…!と空を轟かせるような大きな音がして空の化け物が動きを止めたのをくもたろう達は見ていた。
そして次の瞬間、ストガラグ達を襲っていた苦痛が嘘のように消え去り、何事もなく立ち上がることができたのだ。
「これは…」
「ストガラグさん!カルラさんに神父さんも!皆さん無事なんですね!」
「おうボンちゃん…お前さんは元気そうじゃのう。じゃが…なんぞこれは?急に身体が楽になりおったが…」
「まさかこれは…概念の影響が消えたというのか…?だとすれば…」
ポリアデルスは全ての元凶である空の死縛獣を見上げた。
そしてその腹に亀裂のようなものが奔っているのを目ざとく見つけた。
「あれは…」
ドン!
もう一度音がした。
そして死縛獣の腹の亀裂から小さな雫が零れ落ちる。
その雫は地上に墜ちるや否やその周囲の地面を溶かし、穴を開ける。
そんな雫がぽつぽつと小雨の降り始めかのように落ちてくる。
「いいっ!!!?この刺激臭…まさか…うそでっしょ!?おい!ネム!銀龍様に紫龍様も!早く逃げるっす!そこの教会の連中も寝てないで起きて走るっすよ!!」
「え?え?どうしたの?くもたろうくん」
「くもたろう!キミはアレが何か知っているの────」
「うるせぇんすよ!!!グダグダ無駄話をするなっす!!こちとら親切で警告してるんすよ!はよ走れっすボケぇ!!!」
次の瞬間、死縛獣の腹が完全に裂けてその腹の中から雨が降り注いだ。
ざーざーと見た目反の変哲もない雨なのに、まるで氷に熱湯をかけるかのように町が溶けていく。
建物に瓦礫、ガラスに食べ物、床に地面。何もかもが等しく溶けて煙となって蒸発する。
それは死の水。
この場でただ一人…くもたろうの脳裏にのみ焼きつけられている最悪の光景。
主人が産み出し、そしてその母がブチギレて封印させた禁断の雨だ。
「逃げろっすぅうううううううう!ううう!!!!!」
そうして全員が弾かれたように走り出す。
幸い市民は避難済みのため被害はなかったがこの日…金神領の首都である町に半径5キロに及ぶ大穴が空き、その場所には草木の一本すら残らなかった。




