黄金を侵す毒3
私のX(@migitako_yamane)にて以前に公開したメアのイメージイラストにくもたろうくんを追加したものを公開しています。
素人の自イラストですので注意ですが、なんとなくのイメージでも見てみたいという方はぜひ。
各種反応等はしてもしなくても大丈夫です!お気になさらず。
黄金の死縛獣となった先代の金龍。
この場所に住まうそれにはもはやまともな意識があるとは言い難く、その正体はマリーに取り憑く死想だ。
死してもなお滅ぶことのなかった執念、妄執…そして怨念。それらがマリーを飲み込んで自身を否定した全てに復讐せんと動いているだけ。
故に感情をむき出しにし暴れているが、同時に剥き出しになっている感情以外の心の動きは一切ない。
怨みと執着心だけで動く正真正銘の怪物だ。しかし死縛獣はその時確かに上を見上げた。
偶然なのかもしれない。ただ一粒だけ落ちてきた水滴に対する反射的な反応なのかもしれない。
雨など降るはずのない世界に降ってきたそれについつい気を取られてしまっただけなのかもしれない。
もしくは…一部の感情に覆い尽くされてなお消えることのない恐怖を僅かに残った本能が感じ取ったのか。
『あ、め…?なぜ…?』
ポタリと死縛獣の身体に雨が一粒落ちてその身体を当たり前に滑り落ちる。
ほんの一滴…濡れたのかどうかすら認識できないような極小の一つ粒。
しかしその一粒が…死縛獣の黄金をズルリと奪い去った。
『な、に…?』
死縛獣でさえもそれを理解することができなかった。
いや、心が理解を拒んでいると言った方がいいのかもしれない。
そしてもう一粒、雨が身体に落ちて滑り落ちる。
ずるり。
水滴に引っ張られるように黄金色の鱗が剥がれ落ち、輝きも何もないヘドロとなって地面を汚すだけの存在になり果てる。
二滴三滴と水滴が落ちるたびに黄金が、先代の金を支えるプライドと自尊心そのものが誰もが嫌悪の視線を向ける汚物に変わっていく。
『アァアアアアアアアアアアア!!やめろぉっぉぉぉぉぁぁああああああああああ!!!』
死縛獣が飛び立とうと背中の翼を広げる。
大きく立派な黄金の翼。本来ならばその羽ばたき一つで周囲を吹き飛ばすほどの力を生んだであろうそれは水滴が触れた瞬間に煙を上げながら穴が開いていく。
槍にでも貫かれたかのような惨状だが、ただ雨が触れただけ。
数秒にも満たない一瞬のうちに翼はもはや翼とも呼べないほどにボロボロにされ、無用のにして無能の部位へと成り下がる。
『や”べろ”!!!!これをとめろぉ”ぉ”ぉ”お”お”お”お”お”!!!』
雨を防ぐためか何らかの結界のようなものを展開しているメアに向かって死縛獣が鋭い爪を携えた巨大な腕を伸ばす。
その腕はメアのもとに辿り着くことすらできずに崩れ落ちた。
黄金が剥がれ、剥き出しになった皮膚が溶け落ち、筋肉に穴が開き、骨は残った肉を支えきれなくなり折れる。大量に零れ落ちる血液ですらも酸の一滴でシミすら残さずに消えていく。
腕と翼を失ったことで身体のバランスを失った死縛獣が地に転がり、それが終わりの合図となった。
酸でできた水溜りの中に落ち、全身から煙を噴き出しながら黄金を失っていく。
なおも止むことのない雨に全てを奪われながら死縛獣は怨みの声を上げるしかできない。
『ァァアアアアアアアアアア!我が黄金がァアアアアア!我が美しさが、我が価値が!やめろぉっぉぉぉぉぁぁああああああああああ!!!!!コロスコロスコロス殺すゥゥゥゥゥァアアアアアア!!』
輝きに彩られた美しい外見さえもメッキ以下だと突きつけられるように剥がされ、眼前に広がる異臭を放つ醜いヘドロが自身の誇りである黄金と認められないまま、ただただ叫び続ける。
グズグズにになり崩れていく身体を引きずりながらも怨念だけで動き続け、神妙な顔をしているメアに向かっていく姿はある意味で恐ろしく映る。
「んむー…これは…あれですなぁ…ここまでとは思わなかった」
『我を舐めるな小娘ぇえええええええええええええ!!楽に死ねると思うなぁヨォォオオオオオオオオ!!』
もはや形を成していない四肢で立ち上がり…体勢を保てずにまたすぐに地面に沈む。
その拍子に死縛獣は見てしまった。
マリーに寄り添うニョロの姿を。
瞬間、死縛獣の意識はメアから完全に外れてニョロに向かう。
『【ソレ】に触れるなぁぁあああああああ!!我の黄金にぃぃぃぃいいいいいい!!汚らわしい汚物がぁあああああああああああ!!!』
ニョロを汚物、マリーを自らを彩る【ソレ】という装飾品と叫びながら死縛獣は腐臭と溶けた肉を撒き散らしながら牙をむく。
恐ろしいほどの執念だけがその身体を動かしているのだ。
「────!!」
妹を、大切な半身を守るために小さな身体でマリーを庇うためにニョロが前に出る。
酸の雨からはメアの結界で守られているが、それは牙による攻撃からは守ってくれない。
それでもニョロは妹を庇う。
離れ離れになった後悔を抱えてきたのはマリーだけではなく、ニョロも同じなのだから。
今度こそ一緒にいるためにその身を投げ出す。
「ねぇ…ね…」
そしてそれはマリーも同じだった。
呆然とした虚ろな表情で、しかしそれでもしっかりとマリーはニョロを庇うようにして手を伸ばす。
一人だった二人。引き裂かれた姉妹は今度こそお互いを守るためにと醜い獣に立ち向かう。
そして────。
「着火!!!!」
『ギィィィィァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
凄まじい威力の炎が死縛獣を包み込んで燃え上がった。
その炎は天を衝くほどの高さまで燃え上がり、酸の雨すらも消し飛ばしてなお燃え続ける。
ニョロは呆然と炎の柱を見上げ…そしてその炎を生み出したであろう主人に顔を向けた。
メアはその視線を受けて気まずそうに眼を反らし、頭を掻く。
「うん…なんか…思ったよりもどろべちゃでグロかったから…燃やしちゃった…てへぺろごっつんこ?」
こうして黄金を湛えた獣はそのすべての尊厳を溶かされ、灰すらも残さずに蒸発したのだった。
メアママはなんちゃって王水の原液を尻尾にぶつけられ、軽くやけどをしたそうです。




