黄金を侵す毒2
「ほわっはははほほほっほー!」
いてぇ…。おもわず変な声を出してしまう位には痛かった。
皆さんこんちゃっす。黒いけれど半分は優しさでできているので、お腹は黒くないタイプのドラゴンです。
襲ってくる先代の金龍と思われる死縛獣の腕をお仕置きがてら手刀で切り落としてみたのだけど、予想以上に硬くておててあいたた…になってしまったのです。いや、ほんとに痛い。
切り落とせはしたけど想像より硬かったせいで覚悟とか諸々足りなくて泣きそうな程度には手が痛い。
「くっそー…マリちゃん死縛獣がけっこう柔らかかったせいで油断したぁ…やっぱりピンキリなのね…いたたたた…」
正直びっくりだ。
当然【鱗貫き】のような技を使って準備していればこうはならなかっただろうけど、油断して何もしない手刀なんて使ったものだからこうなってしまった。反省ですん。
いやそれにしても硬かった。母の鱗にちょっと迫っていたようにも思う。
5分の3母鱗くらいの硬さはあったと思う。
一応誤解のないように補足しておくと母の鱗単体と、この死縛獣の腕全体の比較ね。
死縛獣の鱗を突き抜けて、皮膚を割いて筋肉を断って骨を砕いて切り落とした時の硬さと、母の鱗だけの硬さを見た場合、それくらいの比率。
母の腕を手刀で切り落とそうなんてした日には私の腕は粉みじんとなって風に煽られて消えてしまうだろう。
まぁつまり何が言いたいかと言いますと…思ったより硬かった。
これは少しだけめんどくさいかもしれない。
『アァアアアアアアア!!貴様よくもぁああああああああああああ!!』
死縛獣が叫び声をあげ、その叫びは何故か声として認識できてしまう。
…え、こわひ…なにそれ。
『潰すぅぅぅううう!!潰してやるぅぅぅぅっぁぁあああああああ!!!』
「かかってこいやー」
死縛獣が大きな手を振り上げて私を潰そうとしてくる。先ほど切り落としたはずの腕でだ。
そうこれが厄介なんだよね。
ダメージを与えたと思っても少ししたら再生している。
思ったよりも硬いから傷をつけるのにほんの少し頑張らないといけないのに、それがすぐに回復してしまうのでとてもめんどくさいのだ。
「うーん…どうしたものかにゃぁ…」
おっといけない、今は攻撃されている最中だった。
「受け止めるだけは簡単だから別にいいんだけどさぁ…うむぅ…」
振り降ろされた大きな手をとりあえず受け止める。
うん、威力はそうでもない。片手で受け止められるくらいだ。
『アァアアアアアアアアアアアア!!!!!!』
死縛獣は身体を無茶苦茶に振り回して攻撃してくるけど…うん…それはどうなんだって思うよ。
身体がとても大きいから、例えばの話で私がこの死縛獣に対してまったく対抗できないとかなら恐ろしい攻撃だっただろう。
範囲が広いせいで逃げ切れないし。
でも実際にはそれを受け止めるくらいどうってことない。
なので死縛獣はただ暴れているだけという事でして…もうちょっと真面目にやってほしいよね!せっかく絶好調ドラゴンなのに!って。
『ぐぅぅぅううがぁあああああああああ!!なぜだぁあああああああ!!!なぜ潰れないぃぃぃぃいいいいいい!!』
「威力が足りないからですかねぇ。ふんふんふんふん、ほいっ」
適当にあしらって一度背負い投げ。
地面にたたきつけてダメージが通るか見てみたけれど…うん、多少は痛そうだけど、それだけだ。
『ウグァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!よくもよくもよくもよくもぉぁああああああああ!!!!!この我を…黄金の輝きを持つこの我をよくもぉおおおおおおおお!!この無礼者がァアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
「おぉ…」
肉体的にはダメージを与えられてないけど、メンタルにはそこそこダメージが入っているらしい。
ならここはそっち方面に方針を変えたほうがいいのかもしれない。
母が言っていた。
すぐに顔を真っ赤にする相手は心を折るべし。と。
どうやらこの死縛獣は【黄金】という部分に自尊心のようなものを持っているらしい。
ならそこを突いてみようではないですか。
「あなたのその金ぴかを取っ払ってしんぜよう」
『貴様ごときにぃぃぃぃぃいいいいい!我が黄金に傷をつけることすら叶わぬわァアアアアアアア!!!!』
随分と自信があるようですが、金は決して無敵の金属ではない。
攻略法はいくらでもある。
金を使った物なんていくらでも世に出回っているし、加工ができるという事は無敵ではないという事。
簡単なのでいくのなら当然ものすごい熱であぶれば溶ける。
でもそれじゃあ面白くない。
ということで面白いことをやってみませう。
王水というものを知っていますでしょうか。
ちなみに私は知らない。
かつて母が言っていた。
『王水と言う金をも溶かすめちゃくちゃ凄い酸が世の中には存在するんだぜっ』と。
そしていつものようにそれの製造方法とかはあの女は知らなかった。
なので私はめちゃくちゃ頑張ったのです。
酸とは言わば刺激の凄い水だ。
まぁともかく身体に悪そうで刺激が強そうなものを気合で水に溶かせば何らかの酸は出来上がるのです。
塩やら窒素やらなんやら…とにかくそれらを魔法を駆使してそこら辺の石やら木やら生き物やら空気中やらから抽出し、力技で水に溶かして圧縮。
これを何かそれらしいものが出来るまで繰り返す。
そうして私は最終的に微妙に濁っているような気がするしょっぱくてしゅわしゅわしている…金属を溶かす液体と、結構な刺激臭がする透明で煙が出る酸を作り出した。
それを一定の割合で混ぜることでなんか凄い酸ができてしまったのでとりあえず母の尻尾にかけて実験した。
その結果として私は三日間ほど地面に埋められることになったが、それはまた別の話。
そんなわけで行ってみましょう。れっつ調合。
普段はやらない…というか出来ないけれど、絶好調ドラゴンである今なら出来る。
必要なものを周囲から抽出、もしくは魔法により創造。
…なんだろう?普通の場所じゃないからかいつもよりさらに魔力と魔素を扱いやすい。
これならあっさりと出来そうだ。
「ぐーるぐるぐるぐるぐーるぐる♪」
『なんだそれはぁああああああああああ!!何をやっているぅううううううう!!!!』
色々準備している最中にも死縛獣がいろいろやってくるけど、適当に受け流す。
そしてそしてはい、完成。
王水…モドキ。言い出しっぺの母がどんなものか知らない以上、これであっているかどうかなんてわからぬのでね!おそらくあってはないだろうと思いますん。
でもとにかくめちゃくちゃ溶ける酸ではあるのでまぁこれが私流の王水と言う事で何一つ。
「それではくらえ!あなたの金ぴかが無敵と言うのなら耐えて見せろぃ!【超必殺】…ドラゴン・キングウォーター・スコールレイン!」
お久しぶりの超必殺。
手の中に生成して超圧縮したなんちゃって王水を空高く放り投げて爆破。
そして雨のように降り注ぐ。
果たして結果はどうなるでっしゃろかね。




