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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
学院生活編
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2

 よく分からんお坊ったまの言い分は無視するとして、俺は早速フロントで入寮手続きをすませると指定された部屋へ向かった。


 俺の部屋は二階。


 フロントの脇にある階段を上って向かう。荷物は先に送っておいたから、寮に入れば荷物でいっぱいになってる筈だ。



 寮生活といえば相部屋が相場だが、そこは王族貴族の学院。上流貴族は全員一人部屋である。


 大商人や下流貴族は相部屋やしいけど、一応伯爵の嫡男である俺は上流と言う位置付けで一人部屋だ。相部屋が三、四階で、一人部屋フロアが二階となっている。正直、ラッキーってのが俺の気持ち。相部屋って相手の人しだいで過ごしやすさ変わるしな。相性悪いとストレスになるし。オタクでコミュ障の俺にとっては天の助け。



 ......こんなんで友達作れるの俺?


 未だにオタクでコミュ障とか言ってて大丈夫?



 ......ま、何とかなるでしょ。



 アンティーク調のしっとりとした印象を受ける木製のドアを開けた俺は、思わぬ事態にその場で硬直した。



 ドアを開けた部屋の中には、中......には......。




「久しぶりだなニベウス! 会いたかったぞ」




 叔父さんとそっくりな顔で眩しい笑顔を浮かべるシリウスが、両腕を広げて待ち構えていた。


 え? なんで居るの??




「あれ......ここは一人部屋じゃ......」


「勿論、ニベウスは一人部屋だよ。ただ、父から今日ニベウスが学院に着くと知らせがあってね! 驚かせようと思ってここで待っていたんだ」




 マジかwww


 どんなお茶目さんだよあんた。確かにびっくりしたから大成功だけどな。




「どれくらい部屋で待ってたんですか?」


「授業が終わった後だから一時間程度だな。それでもニベウスを待つ一時間は本当に長かった!」


「着いたら俺がシリウスを伺おうと思ってたのに、わざわざ待たせてしまって悪いな......」


「俺が好きでやった事だから気にするな、それよりいつまでもそんな所に立ってないで此方へおいで」




 シリウスに手を引かれて部屋に入ると、俺が三年間世話になる部屋の全貌が明らかになる。私物が入っている数個の木箱が積まれている以外は綺麗に掃除されていて、ソファやテーブルにチェストなどの家具が一通り揃われていた。それも、広い。個人の部屋が完全にスイートルームだ。簡易キッチンと無駄に大きな観葉植物に、誰が描いたのかは分からないけど名画と思わしき絵画がデーンと壁に飾られている。



 生前から芸術とかはよく分からない。この四ヶ月の間にバイオリンの稽古とかもあったけど、センスがないのか中々上達しなかった。




「ニベウス」




 ネフェリーナらしき女性が描かれている絵を眺めながら、ここ数ヶ月の地獄を思い返していたら唐突に名前を呼ばれ、後ろから抱き締められる。



 ちょwwwこれは、噂のアスナロ抱きと言うやつでわwww




「えっと?」


「会いたかったよニベウス......ずっと、君が恋しかった......」


「は、はぁ......?」




 いや、あの......あなた春休みでこの前まで実家帰って来てましたやん。



 俺が屋敷出る三日前にシリウスが先に学院に行ったから、ほんの一週間程度の再会だ。ちょっと大袈裟ではありませんか?


 勉強ばかりしてたからほとんど会話する機会なかったけどね!




「明日の入学式までに時間はあるし、二人でゆっくりしよう。何がしたい? お茶でも飲もうか?」


「あ、俺......ちょっとお腹空いたかな......」




 ここに来るまで、少し早い昼食のサンドイッチを食べただけだから腹ペコだった。本当は牛丼とか食べたい気分だけど、ここにそんな物はない。


 ここは貴族の寮だし、食堂はある筈だよな。




「そうか、夕食には少し時間が早いし......じゃあロビーに行って何か軽食を頼もう」


「え、食堂じゃなくて?」


「食堂は寮生の朝食と夕食の時間にしか開いてないんだ。代わりに、ロビーで軽食を頼めば使用人が部屋まで持って来る仕組みになってる。メニューに乗ってる物しか頼めないから少し不便だが、我慢してくれ」




 スイートルームばりの内装だけでなく、ルームサービスまであるとは恐れいった。


 屋敷に居る時は自分の希望したお菓子や軽食が出てくるからそれに慣れたお坊ちゃんは不満かもしれないけど、庶民育ちの俺にとってはいたせりつくせりだと思う。


 なんたって、貴族御用達の学院食事が不味い訳がない。旨ければ何でもいいんですよ!!




「俺は構いません! ささ、行きましょうシリウスお兄様!」


「お前にお兄様と呼ばれるのは少しこそばゆいなぁ」




 苦笑いをするシリウスの手を引きロビーへ向かう。


 ロビーでメニュー表を貰い、どれがいいか吟味していると受付のお兄さんがシリウスに声をかけた。




「シリウス様にジャン様から伝言がございます」


「ジャンからか......大体は予想はつく。何だ」


「はい、こちらに」




 そう言って紙切れを手渡されたシリウスがそれを広げると、明らかに面倒くさそうな表情に変わって行った。


 なにが書いてあったんだろう。




「シリウス......何か用事でもあったのか?」


「ああ、ニベウスは気にしないでくれ。大した事じゃないさ......ところで、どれにするか決まったか?」


「えっと......じゃあ、ミックスサラダとチーズオムレツで」


「かしこまりました。直ぐにお部屋へお持ちします」




 何だったんだろうね?


 でも気にするなって言われたし、俺には関係ない話しなんでしょう!


 その後は、部屋に戻りシリウスがお茶を用意してくれた。シリウスが部屋から持ってきてくれたハーブティーはサッパリした香りで疲れをとってくれる。忙しなく動いていた一日の終わりに、ホッと一息入れるお茶だった。




「マリアンヌがシリウスによろしくと言っていました。それと、これからの学院生活、至らない俺だから、色々と迷惑をかけるかもしれません。その時は、どうかよろしくお願いします」


「なんだニベウス、他人行儀な言い方は止せといっただろう? それに、俺がニベウスを支えるのは当然だ。迷惑と言わず、思う存分俺を頼ってくれ」




 本当に、シリウスはいい兄貴分だな。


 ティーカップをソーサーに戻しながら優しく微笑むシリウスに、俺はどこか安心感を覚えた。


 いや、シリウスに頼りっぱなしって訳にいかないのは分かってるけどさ。


 でも、学院に頼りがいのある身内が居るのはとても心強かった。



 その後、届いた軽食を食べてある程度腹が満たされた俺は、疲れも相まってその日はそのまま眠ってしまったのであった。


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