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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
閑話
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5

 お茶会の後、部屋に戻った俺は軽い運動をしようと身軽な格好に着替えていた。



 医者からも適度な運動をするように言われてたもんな。次いでに筋トレもして体を鍛えよう。


 ......それにしても、何でこの世界にジャージがあるんだ?



 紺色の運動着はどっからどう見ても現代日本のジャージだ。しかもデザインがちょっとお洒落。まぁ、花とか食べ物とか普通に俺が居た世界と同じ物があるから、ジャージもあっておかしくないのかな......。でも、ちょっと気になる......。



 ジャージに着替えなからそんな事を考えていると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。ま、まさか......マリアンヌ!?




「ニベウス、俺だ......少しいいか?」




 と、思ったらシリウスでちょっとホッとする俺。



 嫌、マリアンヌが嫌いな訳ではないのですよ。ただ、今日はもう着せ替え人形には成りたくないってだけで。




「はい、どうぞ」




 一体何の用事だろう。


 部屋に入ってきたシリウスは、俺を見ると嬉しそうに顔を綻ばせた。




「君と二人っきりで話がしたくてね。いいかな?」


「は、はぁ?」




 さいですか......。


 まぁ、叔父さんからシリウスと仲良くしなさいと言われていたから、別に良いけど......。てか、わざわざ仲を取り持とうとする叔父さんの様子からシリウスとニベウスはあまり仲が良くないとばかり思っていたけど、シリウスのこの反応を見るとそうでもなかったのかな。


 嫌いな奴に、こんな優しい笑顔向けないと思うし。




「ど、どうぞ」




 とりあえず部屋にあるテーブル席に促す。


 テーブルには一脚しか椅子が無いから、勉強机の椅子を引っ張り出してそこに座った。シリウスと向かい合い、しゃべりばが完成する。



 な、何を話せばいいんだろ。




「えっと......シリウスさんは」


「さん付けだなんて他人行儀は止めてくれ。従兄弟なんだから、呼び捨てで構わないよ」


「じゃあ、シリウスは......どうして俺と話を?」


「父から君と懇意になるよう言われていてね。俺も直ぐに学院に戻らなければならないから、こうして二人で話をする場が欲しかったんだ」




 そうか。叔父さんはシリウスにも......。何でそんなに俺とシリウスを仲良くさせたいんだろう。従兄弟だからって訳じゃ無いよな。




「どうして仲良くしなきゃいけないのか分からないって顔してるな」


「うぇっ!? いや! その、そんな事は......」




 顔にばっちり書いてあったのか、シリウスに見透かされてしまった。


 やっべ!




「俺は......君と仲良くしたい」




 早速好感度を下げてしまったかと内心焦っていると、テーブルに乗せていた手をそっと握られ、甘い声で囁かれた。


 女の子なら一発で落ちるんだろうけど、俺は男だからどう反応したらいいのか分からなくなる。つーかこのやりなれてる感......。貴様プレイボーイだな?




「お、俺も出来るなら、仲良くしたいです」




 さりげなく手を外し、両手を膝の上に乗せる。


 シリウスがちょっとガッカリした表情をした。そんなに手繋ぎたかったんか。


 でも良かった。好感度は下がってないようだ。




「いきなりこんな事を言われても君は戸惑うかもしれないが、俺は君を大切に思っている。出来れば、どんな望みも叶えてあげたいくらいに。君はどうかな」


「どうと......言われても」




 今日初めて会った人にそんな事言われても......同じ気持ちを返すのは難しい。シリウスを好きになるには、もっとシリウスの事を知らなければ話にならない。




「そんな風に思ってくれているのは嬉しいけど、俺はシリウスの事あまり良く知らないし......どう思っているか聞かれても、良く分かりません」


「そうか......それもそうだね......」




 シリウスは、少し寂しそうな笑みを浮かべて顔をうつ向かせた。


 何だろう。知り合って1日もたってないのに、彼にこんな顔させたのに罪悪感がする......。変な感じだ。




「すまない、少し焦ってしまったようだ。時間をとらせてしまって悪かったね......その装いだと、これから運動するのかな?」


「ええ、まぁ......気分転換も兼ねて、健康の為にもジョギングをしようかと」


「そうか、運動を主体的にこなそうとするとはニベウスは偉いな。俺は勉強は得意だが体を動かすのは苦手でね。見習わなくてはならないな」




 え? そうなの?


 てっきり文武両道の秀才タイプかと思ってたけど、以外と運動音痴?


 いやいやいやまさか。ただの謙遜だろ。




「いえいえ! 俺も運動はからっきで......運動も医者にするように言われたからであって、好きでやってる訳じゃないんですよ」




 ニベウスって体力糞だもんな。多分スポーツもまともに出来ないだろうし。


 ムッキムキになりたくて筋トレはしようとしてるけど。




「医者......」




 俺の言葉に何かが引っ掛かったのか、シリウスが深刻そうな顔つきになる。




「何処か悪いのか?」


「え、いや、悪い所はどこも無いです......ただ、誘拐された時の記憶が無くなってしまって......心配した叔父さんが呼んでくれたんです」


「記憶が無い......何処から?」


「え......?」




 な、何だろう......急に雰囲気が変わったような......?




「何処から無いんだ?」


「えっと......お父様とお母様が処刑される時刻になって、お祈りした時......から」


「............」




 シリウスの目付きが険しくなる。


 まるで、誰かを射殺さんばかりの眼光だ。


 さっきまでの優しい兄然とした態度から一変、別人な風貌と化したシリウスを俺は少しだけ怖いと思った。


 何が彼をそうさせてるのかが分からない。


 どうしたのか気になるけど、何だか聞きづらい雰囲気だ。




「そうか......なら―――暫くはこのまま......」




 一人でぶつぶつ呟いているけど、何て言ってるのか良く聞こえない。


 な、何やねん......何やねんな......。俺を置いて自分の世界に入り込まないでクレヨン......。




「あの......」


「あ? ああ、すまない、気にしないでくれ。それで、体の方は大丈夫なのか?」


「はい。何か、身体にあった呪いとかもすっかりなくなって、寧ろ健康体です」


「そうか......それは良かった」




 何だったんだ......今のは......。


 一瞬だったけど、本当に別人が座っているかのようだった。今は元のシリウスに戻っているけど、あのシリウスが俺の頭に違和感として残る。




「父の言い付けもあるし、今後どうやって君に俺の事を知って貰おうか考えてみるとしよう。貴重な時間ありがとう。ジョギング、無理の無いようにな」


「あ、はい。此方こそ、ありがとうございます」




 ......でも、あまり深く考えるのはよそう。俺を心配してくれただけなのかもしれないし、あれこれ考えても疑心暗鬼になるだけだ。


 シリウスはイイ人そうだし、俺も身内とは仲良くしたい。



 つーか、俺が難しい事考えるのが苦手なだけ何だけどね。


 さて、マッチョを目指して筋トレしますか!


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