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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
閑話
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6

「ただいま愛する家族達よ! そしてシリウスお帰り! 再会の包容をしようじゃないか!」




 その日の夜。皆で叔父さんの帰りをリビングで待っていると、実務から戻った叔父さんはシリウスを見るや否や、満面の笑みで彼を抱きしめた。年頃の息子は、自分とあまり身長の変わらない父親に抱き付かれても拒む事はせずに無表情で受け入れている。この馴れてる感が妙にシュールだ。




「学院ではどうだシリウス? 信頼できる友人は出来たかい?」


「いつも帰ってくる度に聞きますね父様。ご心配なく、無二の友と呼べる存在と出会う事ができました。これも父様がネフェリ学院に行かせてくれたお陰です」


「そうかそうか! それは良かった。お前は感情と言う物を体面に出さないし、少し口下手な所もあるから心配だったんだよ。学院は楽しいか?勉強は捗っているかい?」


「はい。滞りなく、順調に過ごしています」




 叔父さんはよっぽど嬉しかったのか、ニコニコと笑顔が絶えない。そのままマリアンヌと奥さんにただいまのキスをして、俺にも軽い包容をしてきた。叔父さんはなんと言うか、貴族と言うより子煩悩な家庭的な父親っての方が合ってる気がする。


 でも俺は、叔父さんのシリウス対する「口下手」と言う言葉に首をひねった。昼間のやり取りを思い返しても、彼はどちらかと言うと自分の気持ちをストレートに伝えるタイプだと思うのだが。


 まぁ、親が何でもかんでも子供の事を知り尽くしている訳じゃないんだろうし、元々は口下手だったけど叔父さんが知らないうちに改善したって事なのかもしれないな。





「学院といえば、ニベウスも来春には入学だな! 早い物だなぁ、この前までこんなに小さかったのに―――」


「は?」


「ん?」




 手を腰の辺りで揺らし懐かしそうに目を細める叔父さんに、俺は思わず不躾にも言葉を遮って声を上げてしまった。


 え? 今、とんでも爆弾発言があったような気がするんですけど......?




「俺......学校行くんですか?」




 俺の発言に、今度は叔父さんが目を見張って驚きを表現する。


 奥さんに至っては、小さく咳払いをしていた。




「ニベウスは......学院に行きたくは無いのかい?」


「え!? いや、そんな事は! めっちゃ行きたいです!」




 だって、俺本当ならDKですよ!?


 こと学校生活に関してはやりたいこと悔いとか残してここに居る訳ですしおすし。



 行って良いなら二つ返事で行かせて貰いますとも!



 その後、話しを聞いてみると貴族の子供は十五歳までは家庭教師で教育を受け、十六歳になる春先に学院へと通うのが国の決められた教育なんだとか。しかも三年間とか完璧に高校制度です本当にありがとうございました。


 貴族の通う学校は国に一つだけで、それが「ネフェリ学院」と言う超エリート学院。


 シーマ帝国中の王族や貴族の息子息女から、大商人の子供までが集う由緒正しき学院......らしい。



 なんか、俺が語ると安っぽくなっちゃうな。スンマソン。



 ともあれ、俺がこの学院に入るのは産まれた時から決まっている事なんだとか。つまり、何が言いたいかと言うと。



 受験勉強しなくてすむーーー!! ひゃっはーーーー!!



 高校受験顔パスで合格とか人生イージーモードじゃね? つーか貴族ってだけで勝ち組じゃん!! しかもニベウス超美少年だしね!


 モテモテのハーレム学園生活送ってやんよ!!




「ああ、そう言えばニベウスは暫く勉強をサボっていたせいで周りから遅れてしまっていたらしいね」


「え?」


「熱病の後は教会に行ったり誘拐されたりと勉強してる暇なんてなかっただろう?」


「......えっと」




 何か......嫌な予感......。




 次の瞬間。叔父さんは、天使のような優しい笑顔を浮かべて悪魔のような台詞を口にした。




「明日から家庭教師をつけるから、遅れた分をこの四か月で死ぬ気で取り戻しなさい。それまで部屋に缶詰めだ。頑張れニベウス!」


「......うそやん」




 どうやら、人生イージーモードとやらは簡単には問屋が卸さないらしい。


 次の日から、俺は四人の家庭教師に囲まれて地獄のような勉強漬けの日々を送ったのである。



 リッボーン。
































*第三者視点*




 人気の無い裏路地を、一人の酔っぱらいが千鳥足で家路についていた。


 空には分厚い雲がおおい、星明かりを遮られた街中は転々と設置された街灯だけが頼りだ。しかし、裏路地を使っている男にはその恩恵は得られず、覚束ない足取りでふらつく身体を壁に打ち付けながら歩いていた。常ならば寒さに身震いする気温だが、酔いの回った男には肌を撫でる秋風が心地好い。このまま、家に帰らず夜を明けるのも一興かもしれないと、無作法ながらもそんな事を思った。


 どうせ、帰ったところで誰も居ないのだから。




「うぃ〜……ひっく......ちくしょお、バカにしやがって......!」




 男は酒癖の悪さが原因で妻に逃げられたばかりだった。


 やけ酒にやけ酒を重ね、店主にもつけが利かなくなり店を追い出された男は仕方なく帰路に付いていたのだが、どんなに酒を飲んでも妻の居ない家に帰る寂しさを拭う事は出来なかった。



 いっそこのまま、寝てしまおうか。そうすれば、凍え死んでこんな悲しい思いをする事も無いのに。



 自棄を起こした男は、そのまま路地に尻をついてしまう。


 石畳の感触は冷たくて固く、眠るには心許ない。横になってみたところで、妙に頭が冴えてしまう。眠れそうにはなかった。


 仕方なく、身体を起こしてふらつきながら立ち上がる。どんなに詰まらない人生でも、明日は来るのだ。


 子供のように駄々をこねても、それを聞き入れる人も居ない。それなら、自分で何とかするしかないではないか。


 悪態をつきながら、男はもう一度歩き出した。




―――クスクス




 そんな時、誰かの笑い声が聞こえた。



 幼い子供のような声だった。



 こんな夜更けに子供が出歩いているわけもなく、闇夜からも辺りに人影がないのも伺えるはずだった。しかし、酔っていた男にはそこまでの判断が出来ず、それよりもその笑い声が自分に対する嘲笑だと無条件に感じ取ってしまった男は、酔いの勢いに任せてその場で激昂した。




「なんだぁ!? 何処のガキだ!? 出てきやがれ!!」




 暗闇に向かって一人がなる男を尻目に、その声は止まる事なく辺りに響く。


 男の怒りは頂点に達しようとしていた。




「俺を笑うんじゃねぇえ!! おい! 親はどこだ!? 親子纏めてぶん殴ってやる!!!」




 ところ構わず、男は闇に向かって突き進んでいた。



 何処のガキだか知らないが、首根っこ引っ付かんで尻叩きにしてやる!



 そう意気込んだ男だが、そこで男は異変に気づく。




 笑い声が、いつの間にか複数になっていたのだ。




―――あはは!ははは!!

―――クスクス

―――ふふふふふ




 次第に、その声が頭の中に直接響いているように錯覚するほど、辺りに反響した。


 聴覚が混乱し、平衡感覚を失う。




「な、なんだこりぁ!?」




 慌てて身を引こうと後差ずりをする男の目前に、不自然な形が盛り上がった。



 泥の噴水のように突如として石畳から吹き出すそれは、次第に何かの形を作ろうと寄せ集まる。


 恐怖で腰を抜かした男は、尻を石畳に強か打って身動きが取れなくなってしまった。もはや酔いも覚め、赤く染まっていた顔も青白くなっている。



 目前で、それがゆっくりと鎌首をもたげた。




「うわぁあああああああああああ!!!!!!!!」




 その日の夜。一人の魔技術師が行方を眩ませた。


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