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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
閑話
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2

 俺は、誘拐されていた......"らしい"。



 ニベウスの叔父であるユリウスさんに保護されて一晩。目を覚ました俺には誘拐されていた間処か、"教会で過ごしていた間の記憶"までストンと喪っていた。


 フレア教会を発って、道中お母様とお父様が処刑される時刻になって御祈りをしたのは覚えているんだけど......どう言う訳か、そっから先を全く覚えていない。要するに、俺にとってはプリヒュ教会に払い箱にされる筈だったのが、気が付いたら屋敷に戻ってました。みたいな感じだ。


 しかも、叔父さんの話しだとハーグが俺を誘拐したって事になってるけど、到底信じられない話しだ。



 だって、あのハーグだぜ?



 人が良さそうな爽やか好青年でちょっと抜けてる俺の先生だ。俺に激励を送ってくれた恩人のハーグがどうして俺を拐う必要があるんだよ。きっと何かの間違いだな。



 俺に記憶が無いのを知った叔父さんは医者や教会の司祭を呼んで俺の頭や身体を調べさせたけど、原因は分からずじまいだった。それどころか、俺の中にあった筈の黒魔術の毒が無くなっていたのが判明して記憶の事は後回しになってしまった。


 プリヒュ教会の神官からの報告を受けていた司祭は、毒が呪いに変質していたのを知っていたんだけど、呪いなにそれどういう事なの状態になっていた俺は司祭の小難しい説明を右から左に受け流してしまっていた。呪いに変質するとかなにそれ怖い。つーか呪いってどういう事?呪怨なの?


 とりあえず、簡単にまとめると呪いはそう簡単には浄化出来ないのに、数ヶ月間誘拐されて浄化の儀式が出来なかった筈の俺が呪いの痕跡を綺麗さっぱり無くして、健康体に戻っていたのが不思議。って話だった。



 確かに、フレア教会を発つ前は何かと眠くなりやすかった体質が改善されてる気がする。もしかして、誘拐犯が治してくれたとか?まさかね。



 憲兵からすると犯人の手がかりである俺が全く宛にならなくてがっかりしている様子だった。何かスミマセンね、間抜けにも記憶なくしちゃってて。でも本当、何で覚えてないんだろう。


 とりあえず、大事を取って医者からは薬を貰う事になった。身体も無理なく適度な運動をするように言われたから、前みたいに屋敷の周りを走ろうかな。



 叔父さんも仕事があるようで部屋を出ていったし、今は俺は部屋で一人だ。


 ちょっと前まではお母様とお父様と暮らしていた屋敷。


 でも今は、叔父さん夫婦が暮らしてるんだな。



 叔父さんはお父様の弟なだけあって、面影がある。瞳の色が碧色で髪は黒。ちょっと惚けた所があるけど優しそうな人だ。対して奥さんのリリーさんは、しっかり者の姐さん女房みたいな人。赤い髪を高い位置で団子に結んで、強気な眼差しは薄い青。表情が硬いせいか、ちょっと怖い印象を持ってしまった。



 叔父さんはともかく、奥さんはちょっと苦手かも......。



 そんなこんなで今は俺一人で部屋で過ごしている。



 魔術憲兵に家捜しされたから、色んな物が無くなっていたらどうしようかと心配していたけど、俺の部屋は何も変わらずに残っていた。机のランプもちゃんとある。



 さーて、医者と司祭の診断、そして憲兵の事情聴取も終わり本格的にやることが無くなった。暇である。呪いとやらが無くなったとは言え、一気に色んな事をこなしたせで疲れもある。本を読む気にはなれないし、筋トレも気分じゃない。


 大の字になってベッドに寝そべり、呆然と天蓋を眺める。



 暇だなー......。




「......ハーグ先生......どうしてんだろう」




 何か、俺を誘拐しただなんて疑いかけられちゃってるハーグだけど、彼もまた行方を眩ませてるとかで何だか心配だ。


 変な事件に巻き込まれてなければいいけど......。




「......あ......!」


「......?」




 やること無くてハーグの心配をしていたら、何処からか女の子の声が聞こえて来た。


 首を捻って戸口に目をやると、扉の隙間から顔除かせる少女の姿が見える。

 燃えるような赤髪をツインテールに結び、碧色の瞳は垂れ目も相まって穏やかそうだ。そんな少女はキラキラした瞳で俺を見詰めている。


 なんぞ? 叔父さんの子かな?




「えっと......こんにちは」




 とりあえず、挨拶してみる。


 途端、少女は花が咲くが如く明るい笑みを浮かべて部屋に入り、上品にスカートの端を持ち上げお辞儀をした。




「ごきげんよう、美しいレディ! 私の名前はマリアンヌ! 貴方のお名前を教えて下さる?」




 元気に挨拶を返してくれた少女、マリアンヌは十歳くらいの活発そうな女の子だ。明朗快活な印象がありながら、流石は貴族の娘と言うべきか育ちの良さが滲み出ている。



 でもなぁ......俺、レディではないのよ。




「はじめましてマリアンヌ。俺はニベウスといいます。以後お見知りおきを」




 ベッドから降りて、俺もぎこちないながら貴族のお辞儀をする。


 えーっと、右手を胸の真ん中に当て、腰を四十五度に曲げる。これが男性貴族のお辞儀だ。


 本で読んだ通りやったつもりなんだけど、何故だろう。マリアンヌは眉根を寄せて怪訝な表情をしている。


 あれ? どっかおかしな所あったかな?




「ニベウスだなんて、まるで殿方のようなお名前だわ! 美しいあなたに相応しくないわね!!」




 あ......そうだ、この子の誤解を解かなくちゃいけないのか。




「嫌、俺は―――」


「ご自分の事を俺だなんて言っては駄目よ! レディとして品性が欠けてしまうわ。ちゃんとわたくしと言うのよ」


「えっと」


「そうだ! 貴方にぴったりのお名前を思い付いたわ! アネットなんてどうかしら!? 古い言葉で"美しの君"って言う意味なのよ」


「あの」


「今日から貴方はアネットよ! よろしくねアネット!」


「............」




 この子、全然人の話聞かないんですけどーー!!!!



 これが、マリアンヌと俺の出会い、そして、地獄の始まりだった。


マリアンヌと出会ってから、何故か彼女は俺を気に入り自分の部屋へ連れていって色んなドレスを着させたり髪飾りを付けたりする。


 ある程度満足したら今度は人形を混ぜてのお茶会ゴッコ。


 ゴッコ、と言っても出てくるお菓子やティーセットは本物で、うっかり落として割ってしまわないかはらはらしながら貴婦人の真似事をした。メイドさんが沢山あるから大丈夫って言ってたけど、子供の遊びにあんな繊細なティーセット持ってくるかね。取っ手とかもげそうな程細いんだけど。



 前世では親戚のちびっこを相手にする時、かけっことか乱闘ゴッコとかで殆どが体力勝負だったから、こんな上品な遊びは馴れていない。正直、疲れる。


 しかも。




「今日のドレス、とっても素敵ですわねアネット婦人。腕のいい仕立て屋を雇いになったの?」


「あーいえ......その......はは」




 いや、このドレス......君が奥さんの部屋から勝手に持ち出して俺に着せてるんですけど。いいのかな、後で怒られないかな?




「もう! アネットったら......こう言う時は"とんでもございませんわマリアンヌ婦人。よろしかったら貴方にもご紹介致しますわよ"って言うのよ」




 言い淀んでいた俺にマリアンヌが丁寧な例文を作ってくれた。そうなのか、さっきの誉め言葉は仕立て屋を紹介しろと言う意味だったのね。


 ......女の会話ってめんどくせーーーー!!!



 てな感じで、俺はマリアンヌに遊ばれる日々を送っていた。


 そんなある日、仕事を終えた叔父さんと奥さんを加えて本当のお茶会をする事になった。俺の格好は可愛いピンクのリボンが付いたプリチードレス。死にたい。



 そんな俺の姿を見た奥さんは、申し訳なさそうな顔をして深々と頭を下げた。




「マリア......何度も言うけどこの方はマーシュマロウ家の嫡男......立派な男性なのよ。このような格好をさせるのは止しなさい」


「何を仰ってるのお母様。こんなに美しい人が男性な筈がないわ! きっと伯父様に男の子が産まれなかったからアネットを男として育てたのね......。可哀想なアネット。でも大丈夫よ! 私が貴方を素敵なレディにしてあげるから!」




 奥さんがもう何度目かも分からない誤解を解こうとしてくれるが、そこを箱入り娘が真っ向から迎え撃つ。


 見事に撃沈した奥さんは、肩を落として溜め息を吐いた。




「申し訳ありませんニベウス様......マリアは幼い頃から空想が好きな子で......。稀にこのように行き過ぎてしまう事があるのです。どうかお許し下さい」




 お茶会の席で頭を下げられ、俺も居たたまれなくなる。


 まぁ、俺も昔はアニメの主人公に成りきって遊んだりしたし......空想にふけるのが楽しいのは分かるから。




「いいんです......段々、馴れて来ましたから」




 秋晴れの下、気温も温かくベランダに出てお茶会を楽しむ。メイドさんがおかわりの紅茶を叔父さんのティーカップに注いだ。




「ニベ......アネットは随分と優しい子になったな! マリアと親身になってくれてとても嬉しいよ。これならシリウスとも上手く行きそうだね」




 今まで笑顔をたたえながら俺達のやり取りを眺めていた叔父さんが、聞き覚えの無い人名を上げて不穏な空気を作る。


 シリウスって......だれぞ?




「あなた......本当にシリウスは帰って来るのですか?」




 奥さんは自分の息子が帰ってくるのに何だか嬉しく無さそうだ。寧ろ、不安がってるように見える。


 そんな奥さんの様子に気付いているのかいないのか、叔父さんは嬉しそうな笑顔を絶やさず奥さんの問いに答える。




「ああ! 手紙では明後日に帰ってくるそうだよ。シリウスも今回の事件でニベウスの事を心配していたからね。この機会に二人には仲良くなって欲しいんだ」


「シリウスお兄様が帰ってくるの!? 嬉しい! 早く明後日にならないかしら!」




 ......マリアンヌのお兄さんって事は......叔父さんの息子か......。屋敷に普段居ないのは何でだろう。マリアンヌのお兄さんなら十四かそこらだと思うんだが......。


 シリウスか......どんな子なんだろう。


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