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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
軟禁生活編
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「私、空手習いたい」




 小説を読んでいた妹がすっとんきょうな事を言い出した。


 場所はリビング。


 録画していたアニメを視ていた俺は、そんな妹の発言をうっかり聞き流しそうになりながらもその突拍子のない発言に反応した。




「は? 何言ってんの?」




 テレビを一時停止する事を忘れず妹を見れば、ソファでふんぞり返りながらページを捲る妹の姿が目に写る。


 妹が突然何か習い事をしたいと言い出すのはこれが初めてではない。


 この妹、高嶋優月は自分の好きなキャラクターに影響され易いお子様なのだ。



 小説やマンガ、アニメなど、好きになったキャラクターがやっているスポーツは必ず習いたがる。今回も、そんな理由だろう。



 一時は水泳にハマり、また一時はバスケをしたいと言い出し、そして今回は空手である。



 全てアニメの影響なので、いつも長続きせずに辞めてしまって母さんに小言を言われている妹なのだが、ある程度出来るようになってしまう為無駄になっていないのが厄介だった。


 そんな妹が空手。


 本当に始めるなら、今後の兄妹喧嘩が下剋上される危険性が出る。出来れば止めて欲しい。




「止めとけよ。空手なんて怪我でもしたら母さんがうるせーぞ?」




 母さんとしては優月には女の子らしい趣味に目覚めて欲しいらしく、何かと可愛い洋服や小物を買ってきては妹に与えているのだが、もっぱら妹の興味は俺と同じアニメや漫画なので効果はない。


 そこへ空手をやりたいだなんて言い出したら今度こそ母さんの我慢も限界になる気がした。




「だって、お兄ちゃん弱いじゃん」


「は?」


「この前三代君と喧嘩して負けてたでしょ? 弱い兄じゃいざって時守って貰えないもん」




 もしかして、三代が家に遊びに来た時の事だろうか。


 他愛の無い会話からプロレス技を掛け合う遊びに転じたのだけど、何故か俺は三代に転がされているばかりだった様な気がする。



 そうか、優月に見られてたんだな。それで俺が喧嘩に負けていると誤解したと。




「別に負けてねーし喧嘩もしてねーよ」


「強がっちゃって」




 小説で口元を隠した優月が、アーモンドアイを三日月にして俺をからかう。隠れた口元はおかしそうににやついているのが安易に創造できた。


 ちょっとムカついたが、ここで話しを広げても面倒くさくなるだけだし、喧嘩になったら悪者にされるのは俺だ。優月を無視してテレビに集中する。




「ねぇねぇお兄ちゃん」


「あー?」


「私が強くなったら、お兄ちゃんの事守ってあげるからね」




 は?何言ってんだコイツ。


 寝言は寝て言え。


 仮に優月が俺より強くなったとしても、四つも離れた妹に守られるだなんて兄の尊厳が傷付く。


 兄のプライドにかけて、妹の背に隠れるなんざ出来る訳がない。




「そんな台詞はフリーザ倒せるくらい強くなってから言え」


「私、サイヤ人じゃないから無理」




 そもそも、フリーザ並みの敵がどこにいるんだと言う妹のツッコミを綺麗にスルーした俺は、アニメに集中したのであった。















「............」




 軟禁生活五日目。


 ふっかふかのベッドから身体を起こした俺は寝ぼけ眼で部屋の一点を見詰める。


 懐かしい夢を見た。


 高校受験の合格発表前だからほんの数ヶ月前の出来事の夢なのに、生前の頃が遠い昔の事のように思える。


 あんな夢を見てしまったら、あの頃は当たり前の様に過ごしていた日常や妹の憎まれ口さえも恋しくなってくる。


 また、ホームシックだろうか。


 フレア教会を離れる前日、教会を飛び出して街の物陰でじめじめと落ち込んでた時、つい生前の未練を思い出して勝手に辛くなってたっけな。


 あの時、不安で折れそうになっていた俺を励まして勇気付けてくれた人がいた。だから、ニベウスとして、等身大の自分で生きていこうと決意出来たのに。




「おはよう皐月。良く眠れた?」




 それもこれも、コイツのせいで全部台無しである。


 俺を支えてくれた恩人の顔で、皐月だなんて呼ぶから......。


 生前の家族の夢なんて見てしまったんだ。




「お陰様で最悪な目覚めですコノヤロー」




 朝食を手に持って部屋に入って来た男は、テーブルにベーコンエッグとパン籠を置いて俺の元に歩み寄ると、流れるような動きでベッドに腰をかけ、俺の方に身を乗り出して来た。


 触れようと伸びてくる手を仰け反って避けると、男は特に気に止める様子もなく小さく笑った。


 まるで、そんな俺の動きをおもしろく思っているような笑みだった。




「どうしたの? 嫌な夢でも見た?」




 オメーのせいだっつーの。


 あっけからんと問う男を渾身の怒りを込めて睨み付ければ、男は俺の威嚇なんぞ仔猫と同じだと言わんばかりに肩をすくめてベッドから降りた。



 はー! 何か知らんけど腹立つわーー!!


 仕草の一つ一つが勘に障るわーーー!!!




「そんなに怒らないでよ......今日は皐月に喜んで欲しくてプレゼントを持って来たんだ」


「プレゼント......?」




 この男......朝にはこうしてモーニングセットを運ぶだけでなく、三食の用意や風呂の支度、洗濯や掃除までやってくれて......何と言うか、いたせりつくせりで俺に凄く甘い。


 生意気な口もきいているのに、怒りもしなければ咎めもしない。


 更にはプレゼントだと......?


 こいつ、何を企んでやがる。


 俺を甘やかして、堕落させる気か?


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