14
*とあるゴロツキ視点*
オイラは楽なのが好きだ。
強い野郎にへらへら媚びへつらって、腰巾着になってりぁ飯も金も勝手にオイラに回ってくる。
今まで強そうな奴ならどんな野郎にもついて行った。
強奪、無銭飲食、詐欺、色んな事をしてきたが、録でもねぇ真似してりゃ当然お上に捕まる。
だがオイラはそんなヘマはこかねぇ。
捕まりそうになりゃあ野郎を裏切って逃げ延びりゃあいい。
そうしたらまた他の野郎に鞍替えすりゃ良いだけの話しだ。
オイラはそうやって今まで生きてきた。
今の頭は会ってきた野郎の中で一番強い。
町に入りゃ怖いもの知らずてやりたい放題。飯も金も女も困らなかった。
憲兵も手出し出来ねぇ強さを誇っていた頭だったが、よっぽどオイラ達が目障りだったのか憲兵隊引き連れて追い出されたのは痛手だった。まぁ、捕まらなかったのは儲けもんだったぜ。
町を出てたどり着いたのは畑とジジィババァしか居ねぇ廃れた田舎の村だった。
新しい町までの腹ごなしだ。
適当に金品むりしとって食いもんを奪った後、景気付けに宴会をしていた時だった。
教会の神官が押し入って頭をぶっ飛ばしやがった。
それから頭は可笑しくなっちまった。
こんな何もねぇ田舎村なんざとんずらこいちまえばいいのに、自棄にここに止まるのにこだわりやがる。
村人に手出ししねぇ約束なんざしたせいで、オイラ達は腹の為に山菜取りや猪狩りをして食い繋いでいるが、今まで町で好き勝手暴れて飲み食いしてたオイラ達が、全うな人間みてぇに山菜取りなんざしてるんだぜ?
笑っちまうぜ。
相変わらず頭は村を出ていかねぇし、最近なんか溜め息ばっかりついてどうも辛気くせぇ......。
オイラは楽なのが好きなんだ。
こんなめんどくせぇ毎日なら、頭を見限って他の野郎を探す方がよっぽどマシだ。
国外れに行けば箔のいい野郎は探せばいる。
オイラはスラム出身だからそこら辺の地理にも詳しい。ならこんなところさっさと離れて、羽振りのいい奴でも探しに行くか。
「んじゃ、飯取ってきやす」
「おー......」
オイラともう一人、頭を鶏冠にした野郎と森を歩く。
鶏冠も最近の頭の言動には理解出来ねぇみてーで、どうすりゃ元の頭に戻ってくれるか悩んでいるみてーだった。
人間相手に変わる変わらないなんざ、面倒くせぇ事よく考えるぜ。
自分の都合に合わなくなったら離れりゃ良いだけなのによ。
「あーくそ!ここいらの山菜は全部取り尽くしちまった!これ以上根城から離れるの面倒くせぇな」
「やってらんねぇな......オイラ達がこんなかわいい真似してるなんざ、町の連中に知られたら笑われるぜ」
「全くだ......村を襲えない分、飯は森の山菜と動物を狩れっつわれた時は頭が熱でも出たのかと思ったぜ」
腹が減りゃそこらの店で無銭飲食してたのが懐かしいな。
頭が強すぎて誰も手出し出来なかったから、オイラ達は王さまにへつらう子分になってりゃ上手い汁啜ってられてたってのによ。
くそっ!こうなったのも全部あの生け好かねぇ神官のせいだ。
「あーあ、どっかに金転がってねぇかなぁ......」
鶏冠頭が馬鹿みてぇな事抜かしやがった。
そんな都合良く金が転がってるかよ。
「......ん?」
山菜を探しに今まで来たことの無い場所に移動していると、鶏冠頭が目を凝らして一点を凝視した。
「ありゃあ......神官んとこの坊主と女男じゃねぇか?」
鶏冠頭の見ている方角に顔を向けると、野郎の言った通り、木刀振り回す金髪のガキと女みてぇな綺麗な顔をした男が二人並んで森の中を歩いてやがった。
こんな所で何してんだ、あいつら。
「おいおい、あいつらが彷徨いてるって事は教会の近くなんじゃねぇか?厄介事はごめんだぜ......他当たるか」
別の場所に移ろうとした野郎の腕をオイラは掴んでひき止めた。
......いいこと思い付いたぜ。
「おい......良かったな、金が転がってやがるぞ?」
「あん?」
「いいから、耳貸せ」
運がいいぜ。
ここを離れる前に一儲け出来そうだ。




