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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
教会生活編
33/79

13

 本当のママとパパを探す。



 重い口を開けたアンジュは、ずっと溜め込んでいた気持ちを吐き出すように、何があったのかを話してくれた。



 五歳児の要領の得ない説明を根気よく聞いて行くと、朧気ながら此度の一連が浮き彫りになった。



 トニーがトイレに行った後、ユリィと言う幼女は、次はおままごとをしようと提案した。


 しかし、アンジュはおままごとを知らなかった。



 聞き覚えの無い遊びにアンジュがおままごととは何かと聞けば、ユリィはおままごとを知らないアンジュに「ママとパパの真似をするんだよ」と教えたが、アンジュはママとパパがどんなものか分からなかった。



 ただ、ママとパパがどんな存在かは知っていた。アンジュは実の両親の顔は覚えていないが、居た事だけは覚えていたのだ。


 しかし、真似が出来る程記憶していないアンジュは、「出来ない」とはっきり伝えたらしい。当然、ユリィは何故かと聞いて来た。



 アンジュは正直に、「ママとパパが居ないから、どうやったらいいのか分からない」と事情を話すと、ユリィは驚いた顔をして「教会の人がママとパパじゃないの?」と、アンジュが想像すらしていなかった事を言い出した。


 アンジュとトニーが教会で暮らしていると聞いたユリィは、無条件でそこで暮らしている教会の人、フェルムットとリディをアンジュの両親と思い込んでいたらしい。



 自分の家庭以外の事情を知らない幼い子供なら、そう勘違いしても可笑しくは無いのかもしれなかった。しかし、アンジュにとって彼女の言葉は衝撃的だったのだ。



「ママとパパじゃない人と住んでるなんて、アンジュは変だね」



 ユリィにとって、然り気無い言葉がアンジュを傷付けた。


 ちょっと変わってるね、そんな軽い気持ちで放った言葉はアンジュのギリギリで保っていた心のバランス大きく崩した。

 少し疑問に思っただけで特に気にして居なかったのか、ユリィはトニーが戻って来てもその話題は出さず、おままごともやろうとはしなかったらしい。



 ママとパパじゃない人と住んでるのは、変。



 アンジュの頭に、その言葉が何時までも残った。



 自分もママとパパと一緒に暮らしたい。



 そんな普通の子供としての願望が、アンジュの中で息を吹き返した。




「それで、探しに行こうと出てったのか?」




 フェルムットの問いに、アンジュは小さく頷いた。


 リディの顔が、悲しそうに歪む。




「黙って行ったのはいけなかったな......皆心配してたみたいだぞ」


「......ごめんなさい......」




 蚊の無く声で呟いたアンジュは顔をうつ向かせたままで表情が見えないが、声色の低さで暗い顔つきが安易に想像出来る。

 フェルムットに下ろされたアンジュは、スカートの裾を握り頑なにうつ向いて顔を見せようとはしなかった。




「残念だがアンジュ、オメーのママとパパはもう居ないんだ。だから探しに行っても会うことは出来ない。分かるな?」


「............居るもん」




 彼女の中で、泡沫の記憶でも両親の存在は強く残っていた。


 フェルムットがアンジュの前でしゃがみ、目線を合わせようとそっと肩に手を置いた。




「アンジュのママとパパは......居るもん」


「そうか............じゃあ、ここを出て本当のママとパパの所に行くんだな?」




 小さく、アンジュは頷いた。




「なら、オメーが勝手に一人で行け」




 フェルムットの酷く冷たい言動に、俺は思わず息が詰まった。

 アンジュも驚いて顔を上げ、栗色の瞳を溢れんばかりに見開きている。




「驚くこたぁねーだろ。オメーもさっき一人で出てったんだからな」




 アンジュの肩から手を離し、フェルムットはゆっくりと立ち上がってアンジュ、そしてスギナ達を見回した。




「オメーらが最初にここに来たとき、俺は言った筈だ。オメーは"最高についてる"ってな」




 ......俺は言われてませんけど......?

 あ、はい。黙ります。




「オメーらは親無しだ。その時点で他の奴らとはレールが外れてんだよ。同じ土俵に立っちゃいけねぇ。じゃあどうするか、オメーだけで闘える土俵を作る事だ



 ここはな、それを造るオメーらだけの学舎だ。親無しはオメーらだけじゃねぇ。この国にも、人買いに売られたり親が死んで行き場を無くしたガキが野垂れ死んでたりもする。


 だから、ここに来れただけでも最高についてんのさ。


 生きる為の飯と寝床。生きていく為の知識を得るチャンスが、ここにある」




 フェルムットの声が、礼拝堂に響き渡った。


 アンジュは、目に涙を溜めて泣きそうなのをグッと堪えている。




「生きたけりゃ、そのチャンスにしがみつけ。貪欲に前だけ見ろ。俺はそう教えた筈だ」




 あの、フェルムットさん。要所要所で五歳児には難しい単語がありまくりなんですけど。


 それはアンジュには理解出来なくなくないっすかね?




「アンジュ、ここを出ていくっつー事はな、人として生きていくチャンスを捨てるって意味なんだよ。それでも出ていくってなら、死ぬ覚悟は出来てるんだろうな?」


「............っ」




 アンジュが理解出来ているかはともかく、フェルムットに突き放されたように話されたのが辛かったのか、小さな肩を震わせた。


 生きるか死ぬかの選択肢。


 言い過ぎじゃね?




「泣いて駄々こねても、オメーのママとパパは助けには来ない。それはオメーが一番分かってる筈だ」


「............」




 あのー、もうちょっと優しく諭してあげてもいいのでは?まだ五歳かそこらの女の子にその言い方はキツすぎじゃね?




「で、どうする?出ていくか?」




 フェルムットの言葉には、出ていけるもんなら出ていってみろ。と、言い含められているようで、俺は聞いていて嫌な気持ちになった。


 何だよ。小さい女の子が両親に会いたがってた位でそんな責めなくてもいーじゃねーか。




「だって......だって......」




 あ、泣きそうだ。


 だよな......難しい事言われてもアンジュにはまだ分からないだろうし、万が一理解出来ていたとしても、これは気持ちの問題だ。


 こんなに小さな子供が、直ぐに割りきれるとも思えない。




「泣くなアンジュ!!」




 今まで黙っていたスギナが、池崎顔負けの大声でアンジュを叱咤した。


 あまりの声のデカさに空気はビリビリ震え、泣きそうになっていたアンジュはびっくりして涙も止まっている。


 ある意味ナイス。




「泣く必要は無いぞ!!何故なら、俺がアンジュのママとパパを連れてきてやるからだ!!」


「え?!」


「あ?!」




 は?


 いきなり何言い出してんだこいつ。


 思考回路天元突破しすぎじゃね?




「本当!スギナお兄ちゃん!?ママとパパ連れてきてくれるの!?」


「ああ!俺に任せろ!!」


「やったぁ!!!」




 久々のアンジュの笑顔だった。


 飛びはねながらスギナに抱き付くアンジュは本当に嬉しそうで、それを受け止めたスギナも得意気な顔をしている。


 うーん。元気になったのはいいけど、スギナの奴、本当にアンジュの両親を連れてくるつもりなのか?




「おいスギナ、何勝手な事言ってやがる。んな事出来る訳ねーだろ」


「そうです......それに、スギナはアンジュの両親を知らないでしょう?どうやって見つけるつもりなのですか?」




 当然、フェルムットとリディが否を唱えるが、スギナはいつも通りの謎の自信を発揮して堂々と答えた。




「諦めない心が、奇跡を生む!!」




 駄目だこりゃ。


 フェルムットは呆れて溜め息を吐き、リディは眉をハの字に下げて困った表情をしている。


 横でボーンが「カッケー」と、尊敬の眼差しをスギナに向けているが、何がカッケーのか俺には分からない。ボーン、多分そいつ勢いだけで言ってるだけだぞ。頭の中スッカラカンだぞ。




「たく、またそれか......アンジュ、もう勝手に出ていこうとすんじゃねーぞ。分かったな」


「......うん、ごめんなさい......」




 スギナが両親を連れてくると信じたからか、アンジュは素直に謝った。顔つきも多少明るさを取り戻し、結婚式後からの暗い表情は成りを潜めている。


 フェルムットもリディも、スギナの発言は勢いからの出任せと判断したのかそれ以上は何も言わなかった。


 方便とはいえ、スギナはアンジュを元気にした。

 アンジュがスギナを信じているうちは、彼女は教会を出ようとは考えないだろうし、その間にアンジュのメンタルケアをしていけば拗れる事は無いだろう。



 上手くいけばの話しだけど。



 その夜。


 風呂も歯磨きも済ませ、就寝前にスギナがサンドバッグ人形を木刀で滅多打ちしているのを尻目に、二段ベッドの下で本を読んでいた時の事だった。




「よし、では......明日の計画を立てるとするか」




 木刀を壁に立て掛けたスギナは、俺に近づくきベッドを覗き込むとニカッと淀み無い笑顔を向けて来た。


 何ぞ?




「計画って......何の話しだよ」


「無論!アンジュの母親と父親を探す計画だ!」




 こいつ、マジで考えてたのか?




「それ、俺も一緒に考えてなきゃダメなやつ?」


「む?何を当たり前な事を言っているんだ?ニベウスは俺達の仲間だろう。仲間が悲しんでいるならそれを助けるのは当然の事だ」




 まぁ、俺もアンジュに両親を会わせてやりたいとは思うけど......。




「当たり前に言ってるけどさ、スギナってアンジュの両親見つける宛でもあんの?そもそも生きてるかもわかんねーじゃん」




 現代日本と違って連絡先とかも無いだろうし、どこの誰かも知らない人間を探し当てるなんざ砂漠に落とした針を探すくらい無理な話しだ。




「宛ならある!」


「......何?」




 意外......。


 どうせひたすら国中を探しまくる!とでも言い出すかとおもっていたのに......。




「アンジュがプリヒュ教会に来たのは二年前だ。その日、アンジュは国の役人に連れてこられたのだが............」




 二年前......アンジュが三歳の頃か......。




「その役人を探し出せば、きっとアンジュの両親の手がかりを掴める筈だ!何せ、そいつがアンジュを連れてきたんだからな!」


「......うーん」




 スギナにしては考えたのかもしんねーけど......。


 微妙......。


 まずその役人ってのも探すの大変そうだし。




「大丈夫だ!顔は覚えている。だからまず、明日は隣町の役所に行って二年前の役人を探しに行くぞ!!」


「ふーん......行ってらっしゃい」


「行ってらっしゃい!じゃない!ニベウスも一緒に行くに決まっているだろう!!」




 あー、やっぱりそうなります?


 簡単に言ってるけど、そう上手く行きますかね......?


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