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美少年に転生したら男にモテる件について  作者: しらた抹茶
好感度マイナス
16/79

15

 相変わらず寝起きは爽快である。

 よっこいせとベッドから起き上がり、背伸びをする。


 ふぁ〜〜……。寝たわー、寝すぎたくらい寝たわー。


 さてと、早速寝起きの運動をするか。


そういや昨日風呂入ってねーな。ま、1日入らなくても大丈夫だろ。

 ........大丈夫だよね?

 昨日軽くジョギングした時に着た動きやすい格好のままだけと、大丈夫だよね?

 因みに今の格好はウエアに似たグレートップに同じくグレーのトレパン履いてます。妙に現代チック。電気(しかし魔法)があるから気にしない。


 襟を引っ張って臭いを嗅ぐ。


 .....ま、今日屋敷に帰るからいいか。

 早速柔軟を始める。

 学校の体育でも真面目にやらなかった柔軟をしっかりと、入念に。ニベウスは運動不足みたいだからな。怪我したくないし。

 一通りやって今度は腹筋を開始した。

 今日は20回を目指す!

 床に寝そべり上体を起こす。ニベウスのもやし体型は俺によってマッチョになるのだ。


 しかし、15回を過ぎた当たりで息が上がり始める。

 最初は十回で息切れしてたから成長したけど、マッチョにはまだまだ及ばない。俺は気合いを入れて腹筋を続けた。




「ニベウス様、朝食をお持ちしました......」




 お盆を持って部屋に入ってきたハーグとバッチリ目があった。




「はぁはぁ、ありがとう、はぁ、ごさまいます、はぁはぁ」


「い、いえ」




 変態みたいにはぁはぁしてる俺に、ハーグはドン引きしてお盆をテーブルに置くと去って行った。

 そんな、見てはいけない物を見てしまった....みたいな顔しなくても。


 とりま持ってきてもらった飯は頂こう。俺は腹筋を止めて椅子に座った。

 ハーグが持ってきてくれた朝飯は、野菜とウインナーが刻まれたスープと茶色いパンだった。さすがに屋敷の朝飯と比べるとグレードは落ちるが十分うまい。しかし、味噌汁が飲みたくなってきたな。日本食が恋しい。

 食べ終わったら、空になった皿とコップが残る。

 これ、ハーグが戻って来るまで待ってた方がいいのか?何処に返せばいいのかも分からないし。

 この部屋に案内された時にちゃんと周りをチェックしとけば良かった。まさか帰して貰えないとは思って無かったからな。


 ....待ってようかな....。


 そうと決まれば筋トレだ!!


 俺は腕立て伏せをすべく床に這いつくばる。

 すると、ドアが小さい音をたてて空いた。ハーグが戻って来たようである。




「あ、朝飯ごちそうさまでし....た....?」




 しかし、入り口に立っていたのは一人の少女だった。

 年は12、3歳位で赤茶けた髪を後ろで一つに纏めたの女の子。誰だ?ハーグの話しだと、教会に孤児が暮らしてるみたいな口振りだったし、この子もそうなのだろうか。

 真っ白いワンピースを着た少女は俺の顔を食い入るように見詰めると、慌てて部屋を出ていった。

何や?

 床から起き上がり開けっ放しにされたドアから廊下を覗いてみる。少女が階段をかけ下りて行くが少し見えた。




「..........」




 女の子のあの表情。


 メイドが俺を見るときの表情とよく似ていた。

 恐怖の対象を、嫌悪する顔。


 しばらくして、ドタドタと数人が階段をかけ上がる足音が響いて来た。

 俺は咄嗟にドアを閉め、慌ててテーブルと椅子をドアの前に移動する。俺の直感が、危険信号を鳴らした。

 まずい、何かが起きる。

 俺が椅子をテーブルの上に乗せて一歩後ろに下がった瞬間、ドアが開かれようとしてテーブルにぶつかった。




「おい開かねーぞ!」


「マリー、本当にあいつが中にいるの?」


「本当だってば!私みたもん!!」




 ドアの前で子供の声が聞こえるけど、その間もがつがつドアを開けようとしてテーブルにぶつかっている。


こ、こえ〜…。




「開けろ!何でお前がここにいるんだよ!!」




 何でと言われましても....。

 好きで居るわけじゃ無いですしおすし。




「おい!皆手伝え!!」




 やべぇ!流石に数人がかりで突撃されたらバリケード破れる!!


 俺は全体重をかけてドアを押さえた。




「せーのっ!!」




 掛け声の直後、重い衝撃が腕を伝ってドアをこじ開けられる。

 体重の軽いニベウスの身体ははね飛ばされ、俺はよろめきながらドアから数歩距離を取る形になった。

 テーブルと椅子をはね除けて入ってきたのは五人の少年少女だった。8歳位の男の子と女の子が二人、十歳位の女の子とさっき部屋に入ってきた少女、その少女とあまり年が変わらない少年が一人、皆を代表するように立っていた。

 少年は俺を見るや否や顔を怒りで真っ赤にしながら突進してきた。




「てめえ!!」




 胸ぐらを掴まれて引き寄せられた。

 殴られる?これ殴られるんとちゃう?




「何で貴族様がここにいるんだよ!!てめえのせいで、てめえのせいでユギー達は死んだのに!!!」


「いや、俺に....言われても....っ」




 く、苦しい....もうちょい力緩めてくれ。




「惚けるつもり!?もう皆知ってるわ!!ルキウス様が黒魔術師と結託してあんたを蘇生させる代わりに、その黒魔術師に貴族の特権を与えようとしたのは国中が知ってるんだから!!」




 説明乙。


 俺は赤茶け少女に労いをかける。


 ........いやいやそんなふざけてる場合じゃねぇんだってばよ。は?お父様が何だって!?




「なんだそれ!?お父様はどうなったんだ?教えてくれ」


「昨日の夜に謀反の疑いで憲兵に捕まったんだよ!!息子の癖に親がどうなったのかも知らないなんて、相変わらずのクソ野郎だな!!」




 少年に突き飛ばされて尻餅をついた俺は、意味が分からず呆然とした。


 知らないに決まってるだろ。昨日の夕方からずっとここに居るんだから。




「こんな奴の為に....あいつらは....!!」




 待て待て待て、お前らとニベウスの間に何があったかは知らないが俺は無実だ!




「オチツケ少年!クールダウンだ!深呼吸をしよう!!」


「あ"ぁ!!」


「は、話し合おう...話せば分かる」




 完全に追い詰められた悪役の台詞ですね。このあと俺は問答無用!と彼等に袋叩きにされてしまうんだろうか。ハーグ先生、骨は拾って下さい。




「はっ!情けねぇ奴。親が捕まったと分かった途端に小さくなりやがって。おい、こいつ物置小屋に閉じ込めようぜ」




 ....はい?




「え?でももうすぐ魔術憲兵の人達が来るって司祭様言ってたよ?」


「どーせそいつらが来たら大事に御守りされながら王都に行くんだろ?しかも俺達の朝飯まで食ってやがった。痛い目見せねぇと気がすまねぇんだよ」




 少年の台詞に周りも、それもそうかぁ、みたいな空気になる。

 待って、ふざけないで、俺何も悪くなくね?




「なぁグラ兄!こいつ裸にしようぜ!!丸出しで物置小屋に放り込むんだ!!」


「お、いいなそれ!よし、お前ら手伝え、こいつを捕まえろ!」




 クソチビがとち狂った事を言い出したと思ったら少年は面白そうにその話しに乗った。

 女の子達も、しょうがないな〜と言いながら俺に詰め寄る。ふざけんなよ。お前ら絶対遊び半分でやろうとしてんだろ。冗談じゃねぇ。人前で全裸なんざ銭湯以外でなれるかってーの!!!




「あーー!ハーグ先生だ!」




 入り口を指差してそう叫ぶと、ガキ共は一斉に入り口に振り返る。俺はその隙に近寄っていた女の子達を突き飛ばして部屋を飛び出した。


 ばかめ!!こんな古典的な罠に引っかかるとはやはりガキだな!!




「逃げたぞ!」


「捕まえろ! 」




 捕まるものかぁ!階段降りたら此方のもんじゃい。出口は分かってるんだ。こんな所さっさとお去らばして屋敷に戻ってやる!


 俺は階段をかけ下りると礼拝堂を突っ切り扉まで走り抜けようとした。

 しかし、礼拝堂には既に数人の軍人が集まっていた。シット!これでは出られない。それどころか挟み撃ちじゃね?


 しかし、俺は見逃さなかった。


 軍人達の中に、白い司祭を着ているハーグが居るのを。




「ハ、ハーグ先生ーーー!!」




 俺は子供のようにハーグ先生の元へ駆け寄るとささっと背中に隠れた。

 そこへ丁度ガキ共が二階から降りてくる。




「てめえ卑怯だぞ!!」


「ハーグさん!どうしてそいつを庇うの!!?」




 口々に文句を言う子供たちに対し、ハーグは動揺する事なく厳しい口調で語りかけた。




「いいから君たちは部屋に戻りなさい。事情は後で話しますから」


「だけどそいつは!」


「グラン。汝、敵を憎むな。しかし、その罪を赦すべからず。いつもそう教えているでしょう」


「でも、そんな説法を守ったって、あいつらは救われなかったじゃないか!」


「ならこの方を貴方の気がすむまで痛め付けますか?それがあの子達の救いと説くなら、私は止めません」




 はぁ!?待ってハーグ先生!!助けてくれないんすか!?


 しかし、グランと呼ばれた少年はグッと押し黙ると、舌打ちをして踵を返した。




「何が救いだ。....バカにしやがって」




 そう吐き捨てて二階へ上がって行った。


 た、助かった....のか?




「もう大丈夫ですよ、あの子達に何かされませんでしたか?」


「いえ、特には....」




 全裸に剥かれそうになったけど未遂だったし。




「しかし、何故あのような事に?」


「部屋に居たら、赤茶髪の女の子が入って来たんです」




 そして仲間を呼ばれた。

 そう話すと、ハーグはしまったと呟きながら頭を抱えた。




「申し訳ありません。朝方、ニベウス様に朝食を運ぶ時に、マリーに怪しまれたのですが....まさか調べに行くとは....」




 やっぱりハーグってどこか抜けてるよな....。


 でも、俺が全裸にされようが袋叩きにされずに済んだのは良しとして。そんな事より、さっき子供たちが言っていたお父様の事が気掛かりだった。




「ハーグ先生、お父様が謀反の罪で捕まったと聞きました。どういう事か教えて下さい」




 ハーグは少し困った表情を浮かべた。

 彼は癖の付いた茶髪をくしゃりと握る。




「申し訳ありませんが、私の口からは説明できません。もうすぐで魔術憲兵の方々がきますので、それまでお部屋でお待ち下さい」


「....あの部屋は....ちょっと」




 また突撃されたら今度こそ逃げ切れる自信が無い。

 あいつらはハーグの言葉には納得していなかったし、確実にまた俺を襲いに来るだろう。ハーグもそう考えたのか、暫く悩んだ素振りを見せた。




「仕方ありませんね。では、私の部屋でお待ち下さいますか?」


「え?ハーグ先生の部屋、ですか?」


「はい、手狭ですが、安全かと思われます」


「でも、そうしたらハーグ先生はどこで過ごすんですか?」




 俺の問いに、ハーグは爽やかな笑顔を浮かべて何でも無いように言った。




「勿論、私はそのまま部屋を使わせて頂きますよ」


「....へ?」




 この人、今なんつった?

 つまり?




「えーっと?」


「安全と言ったでしょう?私がそばに居れば、あの子達は何もしません」




 あ、そう言う意味?


 野郎と同じ部屋か。でも俺の我が儘を聞いてもらう訳だし、贅沢言えないな。

 全裸にされるより、ハーグ先生といるほうがましだし。




「よ、よろしくお願いします」




 そうして、ハーグの部屋で魔術憲兵とやらが来るまで待機する事になったのだった。


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