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まずはお友達から始めましょう  作者: 蜜柑


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06 お人好しほど損をする

「ウィル〜!お前最近学校行ってないんだってな。

 暇ならちょっと仕事とか手伝ってくれたりしない?」


 書類の山を抱えた1番上の兄ウォルが泣きそうな声で懇願してきた。


「ウォル兄、俺は学校に行っていないのではなく、入れないだけです。

 学校に行けずとも勉学は必要ですから。」


 にっこりと良い笑顔でウィルは拒否した。


「はぁ?入れない…………?

 それはよくわからんが、兄様は知ってるからね。

 お前、試験前いつも一夜漬けだろう?

 どうせ今回も勉強じゃなくて、いつもの気色悪い趣味の方だろ?」

「ティア様の事を気色悪いなどと宣うとは、尊敬すべき兄上でも許しませんが?」


 ノータイムで剣に手をかければウォルは慌てて否定する。


「いや、気色悪いのはティアじゃなくてお前の方!」

「は?この崇高な趣味のどこが?」

「そういうとこが悪趣味なんだって…

 大体、お前ももう直ぐ卒業だろ、そんな趣味にばかりかまけてないで良い人とかいないワケ?」


 そう言われて、ふむと押し黙る。


「逆の仲が悪すぎて、仲良くなるまで学園への登校を拒絶されている方なら居ますが。」

「え、それどういう状況?」


 かくかくしかじか

 1から説明するのは面倒だったが、兄上を無碍にするのも可哀想なのでかいつまんで説明してやった。


「なるほどな、レオナールの嬢ちゃんか。

 それさぁ、好感度上昇の魔法でも使ってちゃちゃっとくっついちゃえば手っ取り早くないか?」

「違法ですよウォル兄。」


 話を聞いたウォルは、1番楽な解決策を提示してきた。ごりごりの違法行為だったが。

 

「いやぁ、でもなぁ俺たち王族だし、そこらへんはどうとでもなるだろ。

 それに、似たもの同士そこまで相性も悪くないんじゃないか?」

「どこがどう似てるってんですか。

 会う人会う人、やれ同族嫌悪だのやれどんぐりの背比べだの言ってくるんですけど、全然違いますからね!」

「いや、だってやってる事同じじゃん……。」

「全然違いますよ。」

「えぇ、分からん……。」


 キッパリと否定するウィルに、ウォルは何の違いがあるのかよく分からず首を傾げる。

 そんな様子にウィルは、これ以上この話を広げたところで無駄だと話題を逸らす。


「そもそも、レオナール家とは因縁浅からぬ関係でしょ?それはアインツェル家としては良いんです?」


 以前ララに言われた事を思い出し、それを言い訳にしてみる。

 

「そんなもん、故人に傾倒して匿名で何百通も嘆願書送る奇行を犯すより何倍もマシだろ。」

「失礼な、崇高な趣味です。」


 お前の悪趣味に比べたら断然些細な問題だと言われたのでウィルは即否定する。


「ただの迷惑行為だよ!

 止めたって止まらないから諦めてるけど絶対に本名だけは使うなよ!これ以上仕事を増やすなよ、絶対だ。兄様との約束だ、な?」

「もちろん、わかってますよ。」


 ちょっとずつ救国の騎士に纏わる物語の描写が改変されていっている事実に、そのうち、歴史まで改変されそうで怖いんだと頭を抱えるウィルに、流石に一線は越えないとにっこりと微笑んで強く頷いた。

 まぁ、ウィルの名前を使えば歴史にも手が出せるかもしれないのか、という閃きは得たが。

 一線を越えるつもりはない、今のところは。

 

「本当、ヴィルなんかぺらっぺらの男にいつまでも入れ込んで。さっさと忘れて仕舞えば良いのに、何処が良いんですかあんな男。」

「一応、俺たちの祖先なんだがな…。」

「やめなよ、兄さん。それ以上言ったらまたティア様の良いところ語りが始まるよ。」


 そこまで言わなくても……となだめるウォルへ

 あの怪文書はもう聞きたくないと、通りすがった2番目の兄ヴェルが口を挟んだ。


「兄さんも言ってたけど、結局問題なのは互いの好きな人がお互い嫌いってだけなんでしょ?

 そこさえ解決すれば、ウィルが現実の人間に目を向けてくれるんだ、悪い話じゃない。」

「俺もそう思うんだがなぁ。」

「いっそ好感度上昇の魔法でも使って好きになったらどうです?ヴィルの事。」

「気色悪い事言うな!!!!」


 間髪入れずにウィルは否定した。

 故人に対する好感度を上げるくらいなら、ウィル以外に迷惑もかからないし、厄介な趣味を拗らせて婚期を逃すであろうウィルに婚約者が出来る可能性だってある。割と許可が出そうな提案だったのだが、残念だ。

 

「まぁ、でもほら。嫌よ嫌よも好きのうちっていうでしょう?気が付いたらひっくり返って好きになるって事も……」

「無い!絶対無い!!!それだけは無い!

 もう行きますね!!!今日もララと約束あるんですから!!!」


 冗談じゃない、ヴィルのことを好きになるくらいなら腹を斬ったっていい!なんてとんでもない覚悟を本気の目で言いながら、逃げるようにウィルはその場を去っていった。


「へぇ、なんだかんだ毎日会ってるってワケ。」

「本当、相性は悪く無さそうなんですけどねぇ。」

「さて俺たちは、仕事だな。」

「兄さん、今日も頑張ってください。」

「お前は手伝っ……」

「あ、僕は今日彼女とデートなので。」


 にっこりと微笑んで、ヴェルもその場を後にした。こうして今日もウォルの残業は確定したのだった。

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