番外編2 桜歌とガウカの冒険譚2
ガウカの歩く世界
ガウカと太陽はクライスタルの世界樹の切り株の青い球体に入って、太陽が曲を弾いて日本に戻ってきた。
「……それで学校とは何じゃ?」
「勉強したり友だちと遊んだりするところだよ」
「舐めるな! わしは日本語完璧に覚えているぞ。どこぞのピンク頭とは違うのじゃよ、けけけ」
「とりあえずその声をやめてもらえるか?」
「桜歌、お兄ちゃんのために頑張る」
「桜歌の真似も鼻につくな」
「じゃあどうすればいいんじゃ」
「バレないようにしろよ、後が面倒だから、はあ、桜歌がバイオリンうまくなれるといいんだけど」
太陽はガウカの顔を見ると、大きくため息をついた。
「なんじゃ、わしのことを心配してくれるのか?」
ガウカは桜歌のお気に入りの花柄のワンピースを着ている。
「そうだなぁ、心配だなぁ」
「わし……」
「ん? なんだ?」
「いや、別になんでもないのじゃ!」
そして、太陽は鍵を使って、石井家に帰った。ガウカも恐る恐る家に入る。
「ただいま! がう、いや、ほら、桜歌も」
「ただいまなのじゃ」
そういったはいいものの、太陽の両親は出かけていた。
「俺、もう少ししたらバイトだから。そうだ、ガウカのことだからって、2階の部屋に桜歌が何か残しておいてくれたよ、読んで見れば?」
「そうじゃのう!」
ガウカはトタトタと走っていった。
部屋は床がピカピカで全体的に白い部屋だった。
「ふむ。わしの住んでいる場所の便所くらいの大きさじゃな」
机の上に、写真と名前の書かれたノートがあった。どうやら、クラスの子の名前と写真のようだ。
机の下には食料や水や懐中電灯のはいったリュックがある。
ガウカは腹の虫がなるので、乾パンを探って食べ始めた。
「ガウカ、それは非常時のやつ!」
「なんじゃ、太陽!」
「はあ、なんか作るから、それは食うな」
「じゃな!」
ガウカは今度は問答無用に引き出しを開け始めた。
「英語の本に、日記に、貯金箱」
ガウカは英語の本をそっと元に戻した。その後、日記を読み始めたが、陽キャの見本のようなプリクラの貼られた日記に目が眩しくなり、過呼吸気味になった。
豚の貯金箱の中身を取り出しておく。お金を硬貨で2000円ほど手に入れた。
数分くらい、ベッドでゴロゴロしていると「ガウカ! 飯だよ!」との声があった。
「今行くのじゃ」
ガウカは廊下に出た瞬間、よだれがあふれるような匂いがした。
出てきたのはオムライスだ。卵にはハートマークのケチャップ。
「ローリは食えないって言ってたけど、卵食えるよな?」
「当たり前なのじゃ」
ガウカはオムライスをがっついた。
感想を言えるほどノロノロ食べるつもりはなかった。
「もうないのじゃ……」
「俺のを半分やるよ」
太陽はがっくり肩を下げるガウカを見かねて自分の分のオムライスを半分ガウカにくれてやった。
「ふん、いい心がけじゃな」
「こういう時は、ありがとう、だよ」
「なんじゃ、いい気になるんじゃないぞ」
「いいよ、俺はバイト行ってくる、台所に皿をおいておいてくれ」
太陽はまっさきに荷物を持って、出ていった。
ガウカは風呂に入り、歯を桜歌の歯ブラシで磨くと、桜歌のベッドで横になった。すぐに睡魔に襲われて寝入った。
朝起きると太陽の書き置きとともに、朝食が用意されていた。
朝食を食べると、小学校にランドセルを背負って向かった。
校門をくぐり、どこに行けばいいのか悩んでいると、そこで同じ組の学友と出会う。
「桜歌ちゃん、おはよう」
赤いランドセルのショートカットの女の子がガウカに話しかけた。
「あ、……お、お、おは、おは、す……」
「どうしたの? 元気がないようだけど」
「な、な?」
「それより昨日のそれスマ見た?」
「は?」
「え? 今日の桜歌ちゃん、変だね」
「き」
「き?」
「気安く話しかけないでほしいのじゃ、惰民が」
ガウカは意地っ張りなキャラで周りを圧倒した。
「何その態度、もう知らない!」
「あ、待つのじゃ」
ガウカはその子を追いかける。
やっとのことで教室を覚えた。
(次は席じゃな、まあどこでもいいじゃろ)
ガウカは中央の前の席に座る。
「桜歌、そこあたしの席よ? ボケてんの?」
「わ、わしの席は?」
「わし? 年寄りみたい。桜歌の席はあたしの後ろよ」
「なんじゃと? わしのどこが年寄りなのじゃ?」
「先生来るから座ったら?」
「わしに命令するとは、全く、油断も隙もないのじゃ」
キンコンカンコーン。
「石井ー」
後ろの方から声が飛んでくる。
「何無視してんだよ。見ろよ」
その男の子はガウカに腕に絡ませた小さなサイズのヘビを急接近させてきた。
「なんじゃ? お、そのヘビ焼いて食うのか?」
「いつもの、きゃー! はどうしたんだ?」
「いつもの?」
反芻しているガウカに、その男の子はつまらない顔で窓からヘビを捨てた。ここは1階の外が見える場所だ。
「もったいないのじゃ……」
ガララ。
小太りで顔の濃い男性が教室に入ってきた。
ガウカはピンときた。
「お主はわしらを従えてるがゆえに、教師という者だな」
ガウカは男性に指さして椅子に片足をかけた。
「石井さん、座ってー、授業始めるよー」
「ふん」
ガウカは腕を組み、着席した。
国語では余裕に問題なくこなした。漢字のプリントは百点。
体育では跳び箱を6段、難なく飛び越えた。
図工では小さな時計台を木で作るのに、彫刻刀で龍を彫った。
パソコンを使った総合の時間は絵を描く授業だ。パソコンの使い方よくわからなかったが、隣りにいた男の子を真似て適当に書いた。
「桜歌ちゃん、今日すごいね! 来年はどこか体育のクラブ入りなよ」
「朝飯前じゃな」
待ちに待った給食の時刻をチャイムが知らせた。
ガウカは流されるまま列に並んだ。
(きなこ揚げパン? 美味しいのじゃ!)
「桜歌ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」
「ん! しょーがくへー、さいほーなのじゃ」
ガウカは頬張りながら頷いた。
その時だった。
ガウカは立ち上がった。
ポケットに入れておいたケータイがバイブモードで揺れている。
すべてを平らげたからというのもあり、廊下まで忍者のように忍び足で進んだ。
トイレに入り、ケータイを耳に当てた。
「なんじゃ? もうわしの事を寂しくなったのじゃな?」
『ガウカ、大変なんだ。桜歌が迷子になったんだ』
ケータイから太陽の焦る声が聞こえてきた。
「なぬ? わしの城はたしかに広いが、使用人がいるだろう?」
『世界樹からこの世界の何処かに消えていったらしい。そっちの小学校は4時間授業だろ? 遊んだりしないで急いで帰るように!』
「わしに命令するな」
『頼む。お願いします』
「承知したのじゃ。I.Qの合わないつまらないガキばかりじゃしな」
ガウカは電話を切ると、教室に戻り、帰りの会を済ませて、石井家についた。そして、太陽と高校に行き、更に2人はリコヨーテに移動した。魔法曲は”シチリアーノ”だった。
出てきたリコヨーテの公園の隅でローリとネニュファールが待ち構えていた。




