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一家全員、処刑確定!? 悪役令嬢の妹のはずでした   作者: うり北 うりこ@ざまされコミカライズ開始


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守りたいもの⑥


「お力を貸していただけないでしょうか」


 重鎮の一人は困ったように眉を寄せ、もう一人は視線を逸らす。


「……一領主としてなら構わんよ」

「え?」


 思わず凝視してしまう。


「国の中枢を支える者としては無理だが、領主としてなら手を貸そう。そうだな……。領内の商会に話を通して備蓄を進めること、それから国外の穀物だったか。栽培をしてみるとしよう」

「──っ!」


 嬉しくてアリウムの方を見れば、アリウムと目が合う。

 頷き合い、頭を下げる。


「アルビオン侯爵、感謝する」

「ありがとうございます」


 アリウムと声が重なり、アルビオン侯爵は小さく笑う。


「私がやらなくとも、カルナがやっただろう。どのみちアルビオン家(我が家)が関わるならば、状況を把握できていた方が良いと判断しただけのこと。なぁ、カルナ」

「そうだね。僕が勝手にやるか、父さんが力を貸してくれるかの違いだよ」

「というわけだ。一時的な損失は覚悟するが、新たな作物を育てることで行く行くの利益が出るよう、動かなくてはなるまい。だが、表立って支持はできぬからな」


 十分すぎる。

 鼻の奥がツンとして、眉間に力を入れる。


「……無理はしない方がいいんじゃないかのぅ?」

「気持ちは分かるが、リスクが大きいぞ」

「いつかはやらねばならぬこと。やらんで後悔するより、やって後悔するさ。昔は私も無茶をしたものだ」


 懐かしむようにアルビオン侯爵が言えば、二人は苦笑いを浮かべる。


「仕方がない。領主としてのみ協力しよう」

「二人が協力するのなら……と言いたいところだが、私は保留とさせてもらおうか。土地に合う作物次第かのぅ。利益が出そうなら取り掛かることにするわい」


 その言葉に、アリウムは空かさず執務机に山積みにされている資料の一部を持ってくる。

 各領地に適していると予想される作物について話し出す姿に、どれほどこの短時間で調べ上げてくれたのかを痛感する。


 アリウム、ありがとう……。


 一人じゃないって、心強い。

 私ももっと頑張らないと。



  ***



「これで少しは進んだな」

「はい。ウィリブ公爵も、備蓄はしなくても作物は着手してくれるみたいですね」

「あぁ。公爵の領地は湿度が高いから、品質管理が難しいのもあるのだろうな」

「なるほど……って、そこまで調べてるんですか?」


 少し仮眠をとったけれど、アリウムの顔色は青白い。

 目の下の隈も濃く、疲れが滲んでいる。


「まだ協力を得られそうな領地の一部だけだよ。まだまだだ」

「……無茶しすぎです」

「今が頑張りどきだからね。……褒めてはくれないのか?」


 藤色の瞳が私を見つめ、少し温度の上がった視線に、胸がギュッと詰まった。


「ほ、褒めませんよ。ちゃんと休んでくれたら、褒めます」


 熱くなる顔を隠すように視線を足元へ落とせば、ふっと笑う声が聞こえてくる。


「なら、休まないとな」

「……そうしてください」


 少し素っ気ない声になってしまえば、笑い声が二つ響く。


「…………カルナ様まで」

「ごめんね。あまりにも可愛くって。……って、殿下、顔怖いよ」

「もともとだ」

「またまたぁ。殿下の想い人に横恋慕なんてしないよ」


 からかい混じりの声で言いながら、カルナ様は扉に手をかける。


「ちょっとキールと交代してくるよ。止めないと倒れるまで調べ続けるだろうし」

「いつも悪いね」

「本当だよ。殿下もキールもブレーキ壊れすぎ。それと、そろそろサイナスの出番かなって。交渉は体格の良い人が後ろに控えてるかどうか、大事だよねぇ」


 鼻歌まじりに話すと、ひらりと手を振りながらカルナ様は執務室を出ていった。



 この日から、私とアリウム、カルナ様、キール様、サイナス様は協力してくれそうな貴族から声をかけていった。

 最初は上手くいっていたけれど、少しずつ返答は渋くなっている。


 ルミアスは商会を中心に話を進め、いくつかの商会とは協力関係を結べたらしい。

 というのも、ルミアスは私には詳しく教えてくれないので、アリウム伝で教えてもらっているのだ。


「何でアリウムの方が同じ家に住んでいる私より知ってるんですか?」

「男同士の方が話しやすいんだろ。それに、ルミアスはミルベラを守るためにも言いたくないみたいだしね」

「それが納得いかないんですよ」


 アリウムの執務室で次に説得する貴族の資料をまとめながら、不満を口にする。

 けれど、珍しく返事がない。


「アリウム?」


 顔を上げれば、微笑まれる。のだが、目が笑っていない。


「ミルベラを傷つけたこと、許してないから」

「……え?」

「腕の擦り傷、治ってよかったよね」


 目の光は失われ、顔の筋肉だけで作られる表情に、無意識に息を止める。


「何で知って……」

「確証はなかったけどね。まぁ、分かるよ」


 三日月型に細められている瞳から、闇が覗いている。

 返す言葉が見つからず、アリウムをただただ見つめ返すことしかできずにいれば、ふっとその緊張は解かれる。


「ミルベラを責めても、仕方ないのにな。ごめん」

「いえ……」


 ほんの少しの沈黙のあと、アリウムは困ったように眉を下げた。


「次からは、ミルベラから教えてほしい」

「……努力します」


 たぶんルミアスと何かあっても、アリウムには言えない。

 ルミアスを守りたい人に入れられないからこそ、窮地に立たせるようなことはできないのだ。


 矛盾しているけれど、それが私がルミアスにできる最大限。

 そのことを知ってか知らずか、アリウムに追求されることはなかった。


「もうすぐだな。エリーカ嬢が帝国に行くの」

「そう……ですね」


 お姉様……エリーカ様は、オーガスタ皇子と婚姻のため、来週に帝国へと向かう。


 最後にもう一度、お姉様と呼びたかったな……。


 その願いは叶わなくても、エリーカ様が悪役令嬢になることは、もうない。


「寂しくなるな」

「はい。でも、これで安心できます」


 どうか、幸せでいてくれますように……。



 

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