第 二十四章: 現実というものの重み
白い空間は、警告なく溶解した。移行もなければ、移動の感覚もなかった。一瞬、無。次の瞬間……
図書館。
空気が、最初に戻ってきた。冷たい。古い。塵と時と共に生きている。ここの沈黙は、違っていた。不在ではない。**存在**。
瞬きをした。いや、しなかったかもしれない。
**「エルスベス!」**
キャルウィンの声が、それを切り裂いた。鋭い。即時的。
振り向いた。
彼女は、数歩離れたところに立っていた。姿勢は緊張し、手は半分上げられていた。まるで、私に手を伸ばしかけて、自分を止めたかのように。
彼女の落ち着きは、砕けていた。
**「消えていた」**
彼女は言った。
**「そこに立ったまま。数分間。応答しなかった」**
**数分。**
時間の感覚は、全くなかった。
**「ここにいる」**
私は言った。
私の声は、遠くに聞こえた。間違っている、ほとんど。私は、見下ろした。
魔道書は、私の手の中にあった。開かれて。輝きはない。反応もない。ただ、古びた革と、静かな重み。
そして、ページは……**空白**だった。空っぽではない。**白紙**。かすかな青い余白。きれいなコマの境界線。この世界のどのものにも属さない、正確な構造。
**漫画の原稿用紙。**
一瞬、図書館は、消えた。机。灯り。乾きすぎるインク。積み上がりすぎたページ。コマと締め切りと、決して真に空っぽではなかった白い空間で計測される人生。そして、それは、再び消えた。
キャルウィンが、より近づいた。彼女の視線は、ページに固定されていた。
**「それは、何ですか?」**
私は、唾を飲み込んだ。
**「原稿用紙です」**
私は言った。
**「物語を描くための」**
**「物語?」**
**「連続する絵です」**
私は、静かに言った。
**「イメージと文字。それが、私がやっていたことです」**
彼女の目は、わずかに細められた。不信ではなく、分析。
**「この構造……」**
彼女は言った。
**「意図的です。制御されている。ほとんど、拘束の枠組みのようです」**
**「ただの紙でした」**
私は言った。
間。そして……
**「空っぽではない」**
キャルウィンが言った。
**「ええ」**
私は、同意した。
**「待っている」**
彼女は言った。
私は、答えなかった。なぜなら、もうわかっていたから。知識ではない。**招待**。
魔道書を閉じた。革は、温かかった。
キャルウィンは、ためらった。そして……
**「エルスベス」**
私は、彼女を見た。
---
私たちは、歩き始めた。
図書館の棚は、もはや果てしないとは、感じられなかった。それらは、**目撃者**のように感じられた。私たちが去るのを見ているように。
しばらく、黙って歩いた。そして……
**「エルスベス」**
私は、キャルウィンを見た。彼女は、私を見なかった。
**「あなたの村」**
彼女は言った。
**「現実だったのですか?」**
その問いは、予想とは異なる響きだった。好奇心ではない。**正確さ**。
炎を思った。鍛冶場を。父の声を。
**「現実でした」**
私は、ゆっくりと言った。
**「でも、試練が見せたようには」**
彼女の眉が、わずかに引き締まった。
**「わかりません」**
**「作り出したんじゃない」**
私は言った。
**「歪めたんです。壊れるまで、押し込んだ」**
間。
**「でも、感情は、同じままだった」**
キャルウィンは、それを検討した。
**「あなたの家族」**
彼女は言った。
**「存在したのですね」**
**「はい」**
沈黙。そして、より静かに……
**「あなたは、決して彼らの話をしません」**
私は、ゆっくりと息を吐いた。
**「なぜなら、新しく言うことは、何もないから」**
それは、完全には真実ではなかった。しかし、十分だった。キャルウィンは、一度うなずいた。
**「わかりました」**
間。そして、彼女は、より柔らかく言った。
**「それが、試練をより困難にしたに違いありません」**
私は、首を振った。
**「いいえ」**
一拍。
**「それは、それを**現実**にしたのです」**
彼女は、それに応答しなかった。しかし、それを否定もしなかった。
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それを見る前に、空気が変わった。図書館は、私たちの背後で、色あせていった。光が戻った。自然ではない。安定していない。**生きている**。妖精界。
私たちは、前に進み出た……そして、止まった。
彼は、既にそこにいた。
**妖精王。**
立っていた。まるで、決して動かなかったかのように。まるで、ずっと待っていたかのように。彼の宇宙的な姿は、移ろう光の中で、かすかにきらめいた。彼の視線は、すぐに私たちに落ち着いた。計られた。確か。
**「戻ったな」**
キャルウィンは、背筋を伸ばした。
**「はい、陛下。図書館は、開かれました。目的は、達成されました。完全な報告書を準備します」**
わずかな首の傾げ。
**「そうしろ」**
そして、彼の注意は、移った。私へ。
**「エルスベス」**
私の名前だけ。他には、何も。空気は、より重く感じられた。彼は、もう知っていた。この会話は、もはや使命についてではないと。
それは、私が**何になったか**についてだった。
エルスベスとケルウィンは、妖精郷への帰路についている。
その道中、何が起こるのか...
※なお、第25話も既に公開済みです。




