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ダンジョンの中は薄暗く、壁に掛けられた仄かなかがり火がかすかに通路を照らしている。
もうここに来るのは結構な数になるが、相変わらず不気味だ。
明かりが少ないため通路の先は見えないが、カラカラと乾いた音が響いているのが聞こえてきた。
「あの音、スケルトンか」
どうやら音はこっちに向かってきているようなので、剣を抜いていつでも戦えるようにする。
少し歩いて行くと、薄暗い光に照らされて3体の白骨が剣をひきずりながら姿を現した。
「フィジカルブースト」
身体強化スキルを使って、スケルトンに先制攻撃を食らわせる。
スケルトンは攻撃力は高いが所詮骨なので、体に直接攻撃をあてればスキルを使わなくても倒すことが可能だ。
不意をつかれたスケルトンは、剣の衝撃に耐えられずその体を粉々に砕かれる。
「まずは一匹!」
返す剣で隣にいたスケルトンにも攻撃を食らわせるが、骨身に剣が届く前にガキィン! という金属音が響き攻撃がはじかれてしまった。
スケルトンはその体力こそ低いが、武器を使って攻撃だけでなく防御までしてくる。
体に直接攻撃をあてないと体力を削れないため、真正面から戦うと結構厄介な相手だ。
もう一体のスケルトンが、攻撃をはじかれた隙をついて錆びた剣を突き出してくる。
体をひねってそれを避け、いったん体制を整えようと距離をとった。
「エンチャントショックウェーブ」
まともに戦うと面倒な相手だが、度重なるダンジョン攻略でこいつらの対処法は編み出している。
もう一度スケルトンに近づき剣を振るう。
もちろん向こうも剣でガードしてくるが、かまわず思いっきり叩きつけた。
スキルによって効果を付与された剣は当たると同時に衝撃波を放ち、後ろにいたスケルトンも巻き込んで吹き飛ばす。
壁に叩きつけられたスケルトンは、体をばらばらに砕かれぴくりとも動かなくなった。
ようは少しでも本体にダメージを与えればいいので、防がれても衝撃を与えさえすればスケルトンは簡単に倒せる。
このダンジョンにでてくるモンスターは基本はこのスケルトンと、地上でも出てきたゾンビ系モンスターだ。
ゾンビ系モンスターにはいくつか種類がいるが、ここにでるのは基本的に動きが遅く倒すのは難しくない。
ただ攻撃を食らうと毒の状態異常をもらったりするのでなるべく当たらないように気をつける必要はある。
その後も順調にスケルトンとゾンビを倒しながら、ダンジョンの奥へ奥へと進んで行く。
このダンジョンは3階層に分かれていて、下に行くほどモンスターは多く、強い敵がでてくる。
そして問題は3層目、最終層からがこのダンジョンの本当に恐ろしい所だ。
というのも、この階から出てくるハウントゴーストというモンスターが俺にとっては相性が最悪だった。
攻撃力は高く、しかも物理攻撃は一切効かないという鬼畜仕様。
加えて威力の高い魔法スキルまで使ってくる始末だ。
ずっと姿を現しているわけではなく、攻撃をする瞬間以外はランダムで消えているので気がついたら真後ろにいたりして本当に心臓に悪い。
こいつのせいで何度町に送り返されたことか。
この強敵相手に俺が出した攻略法はいたって単純だった。
「フィジカルブースト!」
最終層に降りた瞬間、身体強化スキルを使って全力で地面を蹴る。
わざわざ倒さなくても、逃げまくってボス部屋まで転がりこめばいいのだ。
「エンチャントパラライズ!」
全速力でダンジョンを駆け抜けながら、ゴーストをすれ違いざまに麻痺効果を付与した剣できりつけつつ、一瞬動きが固まった隙に横をすり抜けていく。
ちらりと後ろを振り返ると、半透明のゴースト達が姿を現したり消したりを繰り返しながら列を作って追いかけてきていた。
一回でも立ち止まればあっという間にゴースト達に蹂躙されるだろう。
なんども通って頭に叩き込んだ道を突き進む。
後ろから聞こえるゴースト達の怨嗟の叫びに背筋を冷やしながら、必死に前へと足を踏みだしていく。
「見えた!!」
ボス部屋が視界に入り、一瞬安心感が広がる。
だがいままでの経験からここからが本当の戦いだということは身にしみて分かっていた。
ボス部屋まで後少しという所で急激に体が重くなる。
身体強化の効果が切れたのだ。
もう一度掛け直していては、後ろから迫ってくるゴーストに追いつかれてしまう。
このタイミングでスキルが切れることは分かっていたので、重くなった体を止めることなく全力で走り続ける。
「と、どけぇ!」
すぐ真後ろまでゴーストの気配を感じつつも、全力でボス部屋の入り口へと飛び込んだ。
地面に叩きつけられる衝撃と、入ったと同時に扉がバタンと閉まった音が暗いボス部屋に鳴り響く。
一度ボス部屋に入ると出ることはできないが、同時にボス部屋の中に入ってくることもできない。
これでゴーストの脅威は去ったと言ってもいい。
もっとも、このダンジョン最大の脅威は、目の前にいるのだけれど。
「今日こそお前を倒してやる」
俺はしっかりと剣を構え、眼前の巨大な敵をまっすぐみすえる。
その言葉に応えるように、ダンジョンボス、ドラゴンゾンビはその朽ちた体を持ち上げ大きな咆哮を鳴り響かせた。




