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認めよう、俺はやりすぎた。
あまり目立たないようにひっそりと生きてきたというのに、なんであんな大勢の前で派手な行動をしたんだろうか。
いや、あそこで俺が出なければ雨森含め何人かは死んで町送りにされていたはずだ。
俺の行いは決して間違ってはいないはず。
ただどうせ死んでも町に戻されるだけなので、それはそれでゲームの醍醐味だったかもしれないけれど。
なぜそんなことをうじうじ考えているかというと。
人食い花を倒した後、これは格好良くきまったんじゃないかとちょっとドヤ顔でクラスメイトたちの方を振り向いたところ、いい感じに引かれていたのを見てしまったからだ。
そりゃそうだろう。
普段学校で一言もしゃべらず机でうずくまっている奴が、ゲームの世界だと別人のように生き生きしててめちゃくちゃ強かったら普通引く。
俺だって引く。
人間は意外性、ギャップが大事だというが、これはだめな方のギャップだったようだ。
「やっぱり断るべきだった……」
皆の視線に耐え切れなくなり、元々抜けようと思っていたこともあって今はクラスメイト達とは別行動をしている。
別れの挨拶をした時に、近くにいた女子が目線を合わせてくれた無かったことが地味に堪えた。
これがクラスの中心人物である桐谷が同じことをやったんだったら、きっと全く別の反応だったんだろう。
こういう時は少し、誰からも好かれる桐谷のような性格を羨ましく感じてしまう。
「明日学校行くの嫌だなぁ……」
別にこれがきっかけでいじめられたりはしないだろうけれど、良くも悪くも俺への皆の印象は変わってしまったことだろう。
変わるほど元々の印象がない可能性も捨てきれないけど。
「まぁ、気を取り直して遊ぶか!」
沈んでいく気持ちを振り払うように少し大きな声を出す。
やっと一人になれたんだ、寝るまでの貴重な時間は楽しまなければもったいない。
「とはいえ、新要素を遊ぶ前にやっぱりあいつは倒しておきたいんだよなぁ」
実はここ数日、俺はあるダンジョンに通っていた。
ダンジョンは種類が色々あり、挑むための条件なんかが設定されているものもある。
俺が今挑戦しているダンジョンは挑戦するための人数に制限があり、最大でも二人までしか入れない。
その割には難易度が高く、最前線のプレイヤーでもいまだにクリアしたものはいないと聞いている。
まぁ、最前線ではそんな縛りダンジョンを攻略するよりも先にやることがたくさんあるので、ただ放置されているだけともいえる。
最前線はパーティプレイがほぼ必須で、基本一人で活動している俺にはなかなか敷居が高い。
その点、俺が挑んでいるダンジョンははなから少人数で攻略することを想定して作られているため、一人でもかなりいいところまで行けるのだ。
実際すでにダンジョン自体の攻略はすんでいて、あとはボスを倒すだけというところまできている。
きているのだが……。
「あのトカゲだけは倒せる気がしない……」
かなりボスが強く、正直全く勝てるイメージがわかない。
ただ、リンクコネクトで大事なことは相手の情報を知る事だ。
なんども戦ってなんども殺されたことで、だいたいあのボスの特徴は掴んできていた。
挑む回数が増えるほど相手の体力を多く削っている実感が得られているため、日課のようにそのダンジョンに通っている。
今日もすでにいい時間なので、そのダンジョンに挑んで寝るとしよう。
クラスメイト達といた時間はほとんど何もしていなかったため、ダンジョンに挑むための物資は十分だ。
さっき人食い花に襲われた傷もすでに癒えている。
このまま行っても問題ないと判断し、毎日のように通っているダンジョンへの道を進んでいく。
いくつかのオープンエリアを超え、枯れ木が生い茂り暗くどんよりとした雰囲気がただよう森へとたどり着いた。
何度きても気味が悪く、夏にここで肝試しをしたらそこらのお化け屋敷よりもはるかに怖いだろう。
そんな雰囲気を更に濃くしているのが、ずらりと並ぶ墓石だ。
森の中には所々墓石が置かれているが、一番奥の開けた場所には一面墓石が立っている。
もちろん、湧いてくるのはゾンビ系のモンスター。
歩いていると急に地面から手が生えて足を掴んでくるので、初めて来た時は絶叫を上げてしまった。
いや、本当にあれは怖い。
モンスターだとわかっている今でも怖い。
恐る恐る足を掴まれないように歩きつつ、時たま生えてくる手をげしげしと踏みつけながら、目的の場所までたどり着いた。
墓石に囲まれたダンジョンの入り口は、ぱっとみ巨大な墓に見える。
しかし墓の入り口はあいていて、まるでプレイヤーを誘うようにぽかっりと暗い穴が口を開いていた。
穴の中には、地下の暗闇へと続く階段が伸びている。
先ほどまでの初心者エリアとは違い、これから挑む先は最前線の未踏破ダンジョンだ。
いくら少人数で攻略できるよう設定されているとはいえ、気を抜けばすぐに殺されて町に送り返されてしまう。
意識を攻略モードに切り替え、気を引き締めて見慣れたダンジョンへと足を踏み入れた。




