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「ウォーターボール!」
「スラッシュ!」
「マジックアロー!」
普段よりテンションが高めなクラスメイト達の声が、森の入り口に響き渡る。
リンクコネクトでは、スキル発動時にスキル名を口にする必要があるため、戦闘時は皆こうしてスキル名を叫んでいた。
まだ初心者のため、周りのみんなはモンスターに大したダメージを与えられない。
それでもこの辺りにいるのはほとんど初期エリアのモンスターと同じなので、数人で取り囲んでスキルを打ちまくれば基本的には安全に倒せる。
「っと、またでたか」
とはいえあくまで基本的にはで、たまに草原には出ない強めのモンスターも姿をあらわす。
みんなではさすがにまだ相手にできないので、そういうのだけは俺が倒していた。
「スラッシュ」
スキル名を唱え、朽ちかけた木に足が生えた異形のモンスターを、真っ二つに叩き斬る。
一撃で相手の体力は尽き、光の粒子となって消えた。
テスターとして最前線で遊んでいた俺にとっては、この辺の敵は雑魚でしかない。
初期からある基本スキルだけでも、大抵の敵は一撃で倒せてしまう。
「ねぇねぇ、同じスキルなのになんで村内の攻撃だけそんなにダメージがでるの?」
俺の攻撃を見ていたのか、近くにいた女子がそんなことをたずねてきた。
俺は曖昧な記憶を辿り、このクラスメイトの名前をなんとか思い出す。
「ええと、篠崎さん、だっけ。リンクコネクトのシステムは知ってる?」
「ううん、知らない。誘われて始めただけだし」
そう言って篠崎は首を横に降る。
確か、篠崎はバリバリの運動部でいつも忙しそうな奴だった気がするし、きっとゲーム自体そんなにやらないんだろう。
せっかく聞いてくれたわけだし、ちゃんと説明してあげなければ。
「リンクコネクトは、同じスキルでも使う人によって火力が違うんだ。普通のゲームだと、レベルがあるからそれがわかりやすい指標かな。レベルが上がればステータスがあがって、同じ行動をしても低いレベルの人より大きな効果がある。ただ、リンクコネクトはレベルがないから、ちょっとその辺が違うんだ。この世界ではあくまで取ったスキルの影響でキャラクターの強さが決まる。スキルにもアクティブとパッシブっていう二種類があって、このパッシブっていうのはいくつかのスキルの効果を大きくする効果があるんだ。だから……」
そこまで言って、篠崎がちょっと引き気味にこちらを見ているのに気がつく。
「……えっと、わかりづらかったかな?」
おそるおそるきいてみると、篠崎はちょっと目線をそらして。
「いやそんなことないんだけど、急にすごいしゃべりだしたからちょっとびっくりして。ほら、村内ってあんまり普段しゃべんないじゃん? だから饒舌に話してるのが珍しくてさ」
あはははと乾いた笑い声をあげる篠崎をみて、小さくため息をつく。
「……簡単にいうと、取ってるスキルの量が違うからダメージも違うんだよ」
俺がそう伝えると、そっか! わざわざ教えてくれてありがとう! と言ってまたモンスターの方に戻っていった。
……これだから人と話すのは苦手なんだ。
なるべく人と話さないようにしようと固く心に決めた俺は、みんなからちょっと離れたところで強めのモンスターが湧かないかを眺めていた。
今頃正式サービス開始によって新しく解放されたステージを冒険しているはずだったのに、どうしてクラスメイトのお守りをしているのだろうか。
こんな事になった原因である雨森を、少し恨みをこめて睨みつけてみる。
すると、たまたまこちらをみた雨森と目が合って、ニコリと笑って手を振ってきた。
柄にもなくドキドキするのであぁいう仕草を自然にするのは是非やめてもらいたい。
これ以上見ていると変な勘違いを起こしそうなので、別の方向へ視線をそらす。
と、そこでも別のクラスメイトと目があった。
がっしりとした体格と、ちょっと強面の顔、それを強調するように刺々しい短髪。
森にいこうと提案した時に、こっちを睨んでいた谷山だ。
そして雨森達と一緒にゲームをやろうと言い出した張本人だった。
谷山は俺と視線が合うと、モンスターの相手をするのをやめてこちらへ向かってきた。
この世界にいる間は俺の方が遥かに格上なのだが、それでもちょっと身構えてしまう。
「おい、村内ちょっと話があるんだけど」
ゲーム内でも変わらない、威圧するような声につい身がすくむ。
「……えーと、話って何かな」
極力にこやかに返したつもりだけれど相変わらず谷山の目つきは鋭い。
「お前さ、雨森と仲良いわけ?」
やっぱりそれか、と内心ため息をつく。
そりゃクラスのアイドルがどんな気まぐれかしらないけどこんな俺をたびたび構ってるんだ。
谷山としても気分がいいもんじゃないだろう。
「まさか、話したのだって今日が初めてだよ」
俺の答えに、そうか、と答えて少し距離を置く。
「ま、それならいいけど。一応言っとくけど、身の程はわきまえろよ?」
「……わかってるよ」
そう言って離れていく谷山の背中を眺めながら、心の中でくだらないと吐き捨てる。
そんな事、言われるまでもないっていうのに。
がら空きの背中に上級スキルを叩き込んでやろうかと思ったが、明日が怖いので心の中だけで済ませておいた。




