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この街には広場と呼ばれる場所が二つある、
一つはログイン地点、そしてもう一つがこの噴水広場だ。
噴水広場には、露店と呼ばれるプレイヤー同士が売買を行える区画があり、そのためかこの辺りは街で一番賑わっている所となっていた。
もちろん今もたくさんの人で溢れかえっていて、俺はその人ごみの中に紛れ込みながら広場のシンボルとも言える噴水周辺を観察する。
なぜ直接行かないのかといえばもちろん、気まずいからだ。
噴水前は俺たち以外にもよく集合場所として使われるため、今もいくつかの集団ができている。
その集団を一つ一つ確認しながら、クラスメイトらしきプレイヤーがいないかを見て回った。
「っと、あれかな?」
見覚えのある顔をいくつか見かけ、ばれないように少し離れた所から観察する。
クラスメイトとは滅多に話さないのでいまいち顔と名前が一致しなく、プレイヤー名ではなかなか判断できない。
苗字ならともかく、下の名前をもじってキャラクターに名前をつけているようだし。
そういう自分も、キャラクター名は下の名前をそのまま使っているのであまり人のことは言えないのだけれど。
近くのベンチに腰掛け、おそらく目的であろう集団を眺める。
キャラクターの作成は、基本的には自分の体を基準として製作されるので、初期設定のままだとVR空間の中には自分と同じ体が作られる。
もちろん自由にカスタマイズできるので、まったく違う外見にすることもできるのだが、まぁクラスの奴らのように、リアルの友達と集団で遊ぶと言っている人たちがそうそう外見なんて変えるはずもなく。
おかげで名前を覚えていない俺でもクラスメイト達を判別することができた。
ちなみに俺もキャラクターの外見は現実の自分とほとんど同じだ。
下手にいじると、普段使っている体と違う感覚に戸惑って、うまく戦えないという情報を聞いて、それなら初期設定でいいのかとそのままにした。
どうせ一人で遊ぶ予定だったし、外見なんて気にしなくてもいいと思っていたのもある。
ぼーっとその集団を眺めていると、一人の少女が走ってくるのが目に入った。
肩まで伸びた黒髪、整った顔立ち、見る人に優しげな印象を与える雰囲気は、仮想世界でも変わらず健在のようだ。
俺がこんな場所にくることになった原因、雨森が興奮冷めやらぬといった感じで、楽しそうにやってきた。
「ようやくきたね村内君! 遅いよ!」
「あ、あぁ、わりいな」
結局、集合時間ギリギリになってから噴水前に行き、雨森に見つかった俺はそんなことを言われてしまった。
まだ約束の時間にはなってないし遅くはないだろと言いたくなるがもちろん口にはしない。
「さて、これで全員かな?」
もう一人の人気者、桐谷悠人が集まった人たちの顔をみて全員揃ったかを確認する。
総勢20人ちょっと、クラスの6割くらいの人が参加していた。
「全員揃ってるとおもいまーす!」
誰かがそんな声をあげる。
引率の先生はいないが、なんだか修学旅行みたいになってきた。
「それじゃあ早速外に行ってみる?」
「あぁ、そうしようか」
雨森の提案に賛成し、ぞろぞろと大所帯で街の外へと向かう。
必要最低限の装備は揃えたほうが、とか、回復ポーション買っていったほうが、とか色々言いたいことはあったが、誰かに言える雰囲気ではないので黙ってついていく。
俺自身はテスターとして参加していた時の装備とアイテム、そしてスキルを引き継いでいるので、これからいくであろう初心者マップ程度ならどんな敵がでてきても大丈夫だろうし。
「うわ、すっごい。壮観だね」
街の外へでた雨森はおもわずそう呟く。
俺も、初めて見た時は感動したものだ。
街の外にはどこまでも続くかと錯覚するように草原が広がっていて、スライムやクリューと呼ばれる人より少し大きい草食動物、そして亜人種とよばれる人型のモンスター等、まさにファンタジーといった生物がそこかしらに生息している。
「といってもさすがサービス開始初日、どこも人が多いな」
桐谷の言うとおり、初心者の主要な狩場である最初の草原は、手頃な敵が多い為、始めたばかりの人によってかなりの場所がとられていた。
皆してどうしようかと悩んでいて、なかなか話がすすまないので、仕方ないと手を挙げる。
「あれ、村内君どうしたの?」
「いや、狩場なら草原抜けた先にある森の入り口あたりなんか、多分空いてると思って」
「ほんと? さすがゲーマー、情報通だね! それじゃあそこに行こうか」
ゲーマーというのはやめてほしい、ゲーマーだけども。
雨森が納得したことで、草原を抜けて次のステージである森の方へと向かうことになった。
森の入り口は草原と同じモンスターと、もう少し強いモンスターが入り混じってでてくるため、あまり初心者向けではない。
けれどまぁ、強い方のモンスターは俺が倒せばいいので別に問題ないだろう。
それより気になるのは、さっきから微妙に俺のことを睨んできているクラスメイトがいるということだった。




