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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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9/23

 2ヶ月ほどして時々来る商人に魔物の皮を売ってはお金をためていた。


「村長さん、僕も家を建てたいと思っているんですが何か手続きとかってありますか? 」


「家を建てる・ 面倒だから今まで通り宿に泊まってればいいじゃないか。肉を渡してるのもあるがほとんど宿代も受け取って貰えてないだろう。一緒に住んでるようなもんじゃないか。面倒だからそのままくっついちまえば良いんだよ」


「ななな、なんてことを言ってるんですか。女将さんが僕なんか……」


 いきなりの村長の発言にパニックになり反論したが最後はボソボソと言葉になっていなかった。


「どうしても家を建てるってんなら領主様の派遣してくる視察官に申請しなくちゃならん。これはワシではどうすることも出来ん。多分来月までには来るじゃろうからその時聞けばいい」



 10日ほどして狩りから戻ってくると初めて見るきちんとした身なりの男の人が村長と話していた。

 村長が僕を見つけると手招きをして男の人に何かを話していた。

 男の人の近くまで来ると話しかけられた。


「あなたが新しくこの村に住み始めたシリューさんですか? グラトン氏より住居建設をしたいという事でしたが残念ながら許可できません。この村に住居を作るにはこの村の出身者である必要があるのです。もしくは5年以上村に滞在しているという証明があれば可能です。つまりこの村に来て半年にも満たないあなたに家を建てる権利はないということです」


「そこを何とかなりませんか? 」


 役人の人に食い下がるが正論を突き付けられる。


「誰でも彼でもに許可を出してしまうともし盗賊のような者たちが足掛かりとして根付いてしまうと小さな村では我々が気づけず取り返しがつかないことになる可能性があるのです。規則として決まっていますので特例は認められません」


 言われることは理解できるので落ち込んでいると役人の人はブツブツ独り言を言い始めた。


「決まりとしては外部の人間の申請は通らないですが村の住人が申請するのは問題ありません。聞くところによるとシリューさんは大変優秀で最近の魔物による作物の被害は無くなったと聞いています。そんな方なら定住してくれるのはありがたいことです。住人が名義を貸して家を作ってから売却すればその人の持ち物として認められるんですよね。親交のある住民に酒でも飲ませれば断る人はいないんじゃないでしょうかね。私がまた3月ほどしたら来るのでその時までに書類が揃っていれば許可も出せるんですがね」


 よく聞くと規則の抜け穴というか裏技を教えてくれているようだった。役人の人は帰り際に1枚の紙を落としていった。見ると『住宅建築申請書』と書いてあり申請者の名前と両親の名前を書く欄があり新しく家を建てるための申請書だった。

 役人の人がこちらを向かず手を振っているのが見えて黙って頭を下げた。


 僕としても急いで宿から出たいわけではないがこの村の人間として女将さんに向き合いたいと考えている。

 そのための準備を少しづつでも進めていければ胸を張って女将さん・・・チャミさんに気持ちを伝えられるんじゃないかと思っている。


 早速商人が来たときに酒を買い込んでマータギーさんの家に行って酒をご馳走して書類にサインをしてもらう。


「おめえが惚れこんでる女はとても苦労している。グラトンの三男坊と結婚して実家の宿屋を両親と4人で切り盛りしてたが流行り病で両親と旦那を亡くしちまった。それでも宿を残すために一生懸命頑張ってる。俺から見てもおめえたちはお似合いだと思う。今まで苦労した分幸せにしてやるんだぜ」


 酔っぱらったマータギーさんから僕の知らない過去を話された。どうも僕の恋心は知られてしまっているようだが必ずあの人を幸せにしようと改めて思った。


 この村に住むようになり5か月が過ぎ少しは女将さんと話す時のドキドキが収まってきた。

 そんなある日珍しく村に冒険者風の男たちがやって来た。

 夕暮れと言うことで宿に泊まることになったようだが僕が狩りから帰ってくると食堂で女将さんに絡んでいた。


「おいおい、俺たちは客だぜ。酒も出さない宿なんて聞いたことないぞ。」


「そうだそうだ。そんな宿に泊まってやってんだから俺たちを楽しませてもバチは当たらないんじゃないか? 」


「見られて恥ずかしいなら俺の泊まる部屋で一緒に寝てくれても良いんだぞ」


「ウチの宿はそういうことはしてませんので申し訳ありません」



 ムリな要求をしてくる客にも丁寧に対応している女将さんを見て僕は思わず声を掛けた。


「客だからと言って何をしても許されると思うなよ。女将さんが嫌がっているのが見えないのか」


「んだと、ガキが粋がってんじゃねえぞ」


「俺らに喧嘩売ってんのか? タダじゃおかねえぞ」



 咄嗟に3人を心眼で確認すると盗賊であることが分かったのでとりあえず無力化するため闇魔法で眠らせた。

 殺すまでもないと思ったので3人を引きずり村の外に捨ててきた。


「女将さん、大丈夫でしたか? 」


 宿に戻り女将さんに声を掛ける。


「ありがとう、シリューちゃん。魔法が使えると言っていたけど力もあるのね。頼りになるわ」


 まだ少し震えていた女将さんの姿を見て怒りが再燃してきた。一旦部屋に戻るふりをして光魔法で見えないようにしてから宿を出る。

 捨ててきた盗賊たちの所に行って街から離れた場所でたたき起こす。


「おい、起きろ」


 3人の顔を蹴り上げながら目を覚まさせると状況が分かってきたのか喚きだした。


「てめえ、こんなことをしてタダで済むと思ってるのか」


「盗賊を相手にした時点で覚悟はできているよ」


「オレ達が盗賊だと知ったうえで手を出したとは良い度胸じゃねえか」


「その盗賊がなんでまた冒険者の真似事までして田舎の村に来たのさ」


「隣の国のダンジョンが死んじまったとかで冒険者崩れが盗賊になっちまってうちの盗賊団も稼ぎを増やすために手ごろな拠点を探してんのさ。あの宿なんか丁度いいな。あの女将は殺さずに俺たちが楽しませてもらうにはちょうどいいじゃねえか」


 盗賊たちの下品な笑い声で我慢の限界を迎え三人の首を刎ねた。

 愛する女将さんを守るためということで後悔はなかったが思い切り嘔吐してしまった。死体をそのままには出来ないと思い異次元庫に入れて部屋に戻ってきた。


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