⑤
結局朝までの間に3度ほど魔物の襲撃を受けて少し寝不足ではあるが王都から離れるため歩きだした。
街道を歩いていると周りを歩いている人や追い抜いていく馬車に乗った客が僕のことをチラチラとみていく。
原因は先ほど分かった。僕が来ている服はゴミに出されているほどなのでかなりボロボロのチグハグな色合いだった。
あとは髪の色が黒いということだと思う。すれ違う人や追い越していく客の中で黒髪の人は居なかったように思う。城でも兵士やメイドさんでも黒髪は居なかったと考えていた。
羞恥に耐えながら村にようやく着いた。
「お前はそんな恰好でどこから来たんだ?」
村も門番から聞かれたので「ゴブリンに襲われたところ命からがら逃げてきました。冒険者の登録をして強くなりたいです」
寝ている所をゴブリンに攻撃されたことは本当だったのでちょっとだけ脚色して伝えるとかわいそうな物を見るような目で衝撃の真実を伝えられた。
「冒険者になるのは良いが残念なことにこの村にはギルドが無い。歩きだと1日ぐらいの所に街があるからそこに行くという。雑貨屋があるから金があるならそこで服を買うことも出来るから寄って行った方が良いんじゃないか」
ありがたいアドバイスを貰ったので早速雑貨屋に行き村人たちが来ているような服を買って着替えた。
髪の色は変えられないが革製のヘッドギアと胸当てを装備したのでおかしな目立ち方はしなくなった。
村を出て身に付けている物へ不壊を付加意で付与したので壊れる心配は無くなった。
買い物を済ませ宿で一泊しようかとも思ったが少しでも早くこの国から離れたいと思っていたので急いで隣の町まで行く事にした。
浮塊で体を浮かせ風魔法を推進力にして文字通り飛んで行った。徒歩で1日かかる距離だったが2時間もかからず目的の街に着いた。
夕方ということもあり街の入り口には行列が出来ていた。最後尾に並ぶと少しずつ進んでいき陽が沈む前には僕の順番になった。
「よし、次の者。見かけない顔だが何処から来た」
「ボクはウェサリーの村から冒険者になりたくて来ました」
先ほど立ち寄った村の名前を聞いていたので使わせてもらった。あの村を通ってきたのであの村からこの街に来たことに嘘はない。
「確かにまだ成人して間もない感じがするし真面な装備もないところを見ると本当の様だな。登録していないということは通行税を払うことになるが持っているか? 」
「はい。多少は手伝いをしながら小遣いを貯めていたので払えると思います」
言われるがまま銀貨1枚を支払い街の中に入る許可を貰った。
「よく来た。ここはアーリエの街だ。頑張ってすごい冒険者になるんだな」
(門番の人は素直に受け入れてくれたのに騙すようで心苦しかったが今の僕にはこの方法しかないので許して欲しい)
教えてもらったギルドに早速向かうため街の大通りを進んでいくが出店から美味しそうな匂いが立ち上っており僕の胃袋を刺激してくる。
(ダメだ。こんなところでゆっくりする暇はないんだから早くギルドに行って身分証になる物を作らないと……)
今まで真面な食事をしていなかったことが仇となりついつい串焼きを買ってしまい食べながらギルドに向かっていると少し先に盾に剣が交差したマークの看板がある冒険者ギルドが見えてきた。
食べ終わった肉串は異次元庫に入れておいた。
ギルドに入るとたくさんの人がカウンターの前に並んでおりカウンターの上に下げてある看板に依頼関係受付と書いてあるので依頼を終えた冒険者が並んでいると分かった。
周りを見回すと各種申請受付という看板を見つけたので向かうと金髪ソバージュで制服のボタンが弾け飛びそうな胸部装甲を持った女性が笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは、アーリエ冒険者ギルドにどのようなご用件でしょうか? 」
あまりにもまぶしい笑顔で緊張してしまった。
「あ あの、冒険者登録をしたいんですが今大丈夫ですか? 」
「新規登録ということでよろしかったでしょうか? それでしたらこちらの申込用紙に必要事項の記入をお願いします。もし書けないと言う事であれば代筆も出来ますので遠慮なくおっしゃってくださいね」
渡された申請用紙には名前と年齢と性別を書くだけでよかった。
(えーっと、名前は深井だとバレるかもしれないからシリューで良いか。年齢は17で性別は男っと。これだけで身分証になるのか? )
記入事項で身分証になるのか不安になりながら受付のお姉さんに申請用紙を渡す。
「シリュー様、17才、男性ですね。それではこちらの水晶に手を当てて魔力を流していただけますか? 名前と魔力を登録いたします」
言われた通りに水晶に魔力を流すと水晶の下からカードが出てきた。
「こちらがギルドカードになります。冒険者ギルドは世界各地にありますが別の名前での登録は行えません。先ほどの登録で魔力が記録されましたのでカードを紛失した際は再発行ということになりますので金貨1枚が必要になります。他に何かご質問などはなかったでしょうか? 」
受付のお姉さんが僕の顔を覗き込んでくるが僕の視線はお姉さんの顔から下に下がってしまい真面な考えが出来なくなってしまっている。
「いえ、特にないですが分からないことがあったらまた聞かせてもらいます」
何とか返事を返しギルドから出ることが出来た。
夜は街の門が閉まるそうなので今夜は宿に泊まることになるがおすすめの宿を聞いてくればよかったと思ったがあのお姉さんの前に言って真面に受け答えできる自信がなかったので美味しそうな串焼きの店で買い物してから宿を聞き出し無事に泊まることが出来た。
宿の食事も美味しく部屋で休んでいると冒険者ギルドでし残したことを思い出した。城の地下ダンジョンで手に入れた魔石を売るつもりだったがすっかり忘れていた。
(でもちらっとしか見なかったけど依頼受け付けのお姉さんもきれいな人ばかりで緊張しそうだからこの国での換金は諦めた方が良いかもしれないな)
入手経路などを聞かれるとぼろが出そうなので明日の朝早く街を出発することにした。
宿の食堂で耳にした話では南にある国が過ごしやすそうだと分かったので街を出て南に向かうことにした。
三日ほど歩き続けスーガラキ王国最大のダンジョン都市であるサウスカンザが見えてきた。
途中の村で聞いたところによるとスーガラキ王国にはあと2つダンジョンがあるらしいがあまり大きくないようで思ったように資源が取れないらしい。そのため他の国へ攻め込む準備をしているらしく僕たちを召喚したのもそのためだろうと思う。幸い僕が行こうとしている南の国はダンジョンが無く農業で栄えている国のようで攻撃対象にはなっていないとも聞けた。




