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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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 決闘ということで腰に差したミスリル刀を引き抜くとチャラ男が慌てて止めてくる。


「何を貴様は野蛮な事を言っているのだ。海人族の決闘といえば自らの泳力を競うものに決まっているだろう」


「しらねーよ。人族である俺に海人の作法なんてわかるわけないだろうが」


「それでは野蛮な人族に崇高なる海人の決闘の方法を教えてやろう」


 その後大層な物言いで海人の決闘方法を説いていたが簡単に言えば直接、間接の妨害有りのマラソンの勝負だった。いくら俺が水膜の腕輪を持っていて海中にいたとしても人族相手に海人族流の決闘を申し込んでくるあたり頭のネジがぶっ飛んでいると思った。


 そっちがその気なら伸びた花をへし折ってやるのも俺の仕事だと思い受けることにした。最悪負けそうだったが怖禍威で気絶させてからゴールすればいいので負けることはない。


「人間の分際で私の決闘を受けたことを褒めてやろう。しかし彼女は私が責任をもって可愛がってやるから安心するが良い」


「シリューちゃん、もし負けたらウチはこいつを殺してでもシリューちゃんの所に戻るからね」


「チャミ、おまえは俺が負けるとでも思っているのか? ちゃんと勝ってやるからその辺で旨いもんでも食って待ってろ」


 レースが始まり号令と共に流牙拳を応用して水流を操作し一気に加速する。セイルは驚き俺を追いかけてきた。流石海人と言ったところだろう、徐々に差が縮んできたので足に魔力を込めてさらに加速する。


「彼女が大事なのはわかったがそんなに序盤から飛ばしていてはスタミナが持たないぞ。さっさとギブアップして楽になるが良いさ」


 セイルは話しかけてきたが俺は鍛えてスタミナもあるし魔力も無限にあるので全く問題はない。そもそもまだ全力を出していないのは俺も同じなので無視する。

 さらに加速するとセイルは慌てて水魔法を俺に乱射してきたが人や建物が無い場所に弾き先に進み第1チェックポイントに到着した。


 速度を落とさず次のチェックポイントに向かっていくとセイルとの差はさらに開いてきた。建物が密集して周りから死角になる場所に来るといきなり煙幕のようなものに覆われ視界が遮られた。俺には神眼があるので問題なく周りの様子が感じられたので進んでいくと鎧を着込んだ男たちが俺に襲い掛かってきた。

 神眼で確認するとセイルの私兵だと分かり怖禍威で気絶させておいた。


 速度を落とさず煙幕を抜けるとそのまま進み後ろを振り返るとセイルがニヤニヤしながら煙幕を避けてこちらに向かってきた。


(なるほどね。さっきの奴らはあいつの指示だったわけだ。部下が勝手にしたことなら許そうと思ったがもう勘弁しない。徹底的にやってやる)


 セイルの指示だと分かったので手加減せず完全勝利をしてやることにした。手始めに水魔法を使い圧縮し手足に撒き付かせ重石にする。

 子供が歩くよりも遅くしか動けなくなったセイルは慌てている。


「あいつが私に魔法を使っているんだ。あいつは反則だ」


 自分は魔法を好き勝手乱射しておいて俺が魔法を使うのは反則などと意味の分からないことを言っていたが無視して第2、第3チェックポイントを通過し余裕をもってゴールした。


 途中で重石の重さを左右で変えてやるとまっすぐ走れずあとこちにぶつかっていた。何度も転びながらようやくゴールした。


「貴様、魔法を使って私の邪魔をしたな。反則だぞ」


「反則ってのはどういうことだ。最初に魔法も使って良いと言ったのはお前の方だし使ったのもお前が先だ。俺に向かって魔法を放って弾いたのを周りの人間も見ているだろう。魔法を使って良いというお前の言葉を聞いていた人間も一緒に集めようか? 」


「貴様のような人間にあれほどの魔法が使えるわけがない。誰か協力者がいてそいつが私に魔法を掛けたに違いない」


 苦し紛れのイチャモンに指を鳴らしセイルの体を動けないよう水で固定する。


「これぐらいの魔法なら俺にでも出来るぞ。お前の手足やヒレの動きを遅くすることぐらい造作もないさ。なんなら顔も包んでそのまま動けなくしてやろうか? 」


「分かった。私の負けを認めてやろう。これを外せ」


 重石を外してやると「馬鹿め、この距離で私の動きに反応できるわけが・・・ギャピッ」不意打ちをしてきたので思わず顔面を殴って気絶させた。


「馬鹿はお前だよ。お前より早く動ける俺に目の前にして不意打ちが成功するわけがないだろう」



 軽く怖禍威を拳に乗せて殴ったので完全に気絶してしまった。セイルの指に嵌っていた黒い海獣の守りを貰って宿に帰った。


 宿に戻って指輪に魔力を込めていく。アンコの卵の時は途中で入らないタイミングもあったが今回は全く抵抗なくどんどん魔力を吸い込んでいく。

 黒かった指輪が少しずつ青みがかって来た。面白くなって更に魔力を流し込んでいくと透き通るような水色になりところどころキラキラした部分がある。


「チャミ、この指輪綺麗になったからお前にやろうか? 」


「なんなのが持っていた指輪をウチが貰って喜ぶとでも思ったの。そんなのよりもシリューちゃんが買ってくれる安い指輪の方が嬉しいわ」


 俺に指輪を買って来いと遠回しに強請ってきたので知らん顔をして異次元庫に指輪を入れてそのまま眠った。


 本格的に海都を出ようと思って宿を出ると小さい海龍に乗った騎士が周りを取り囲んだ。


「お前は冒険者のシリューで間違いないな。お前には公爵家嫡男 セイル・F・アトランティカ様への暴行と窃盗の容疑が掛かっている。大人しく捕まるなら攻撃はしない」


「ほう。あのセイルは俺が暴行してこの指輪を奪ったと言うんだな。あいつから決闘を仕掛けてきてその対価としてもらったはずだがな。捕まえられても面倒だから返そうか? 」


 軽めに怖禍威をだしながら異次元庫から海獣の守りを取り出し見せる。

 すると周りにいた騎士たちが海龍から降りて跪いた。


「どうしたんだ。さっきまでのあんたたちの態度はどこへ行った? 」


「大変失礼いたしました。私は海都守備隊 3番隊 隊長 バレニオプ・T・ムスクルスと申します。シリュー様のお持ちの海獣の守りの色を見せられては我々が対応できることはありません。本日はお騒がせしたとこを深くお詫びいたします」


 バレニオプは俺に頭を下げると部下たちを指揮して帰ろうとしていた。


「ちょっと待ってくれ。この指輪の色で態度が変わるってのは意味が分からないんだが」


「確かに人族であるシリュー様は分からないかもしれませんね。僭越ながら簡単にご説明させていただきます」


 バカッ丁寧に説明されたが要約するとこの色の海獣の守りを持つ者は極稀で長年魔力を込め続けた物でも紺色がせいぜいで小型の海獣を使役できるらしい。ほとんどの貴族は黒いままで海獣に襲われない程度の効果らしい。

 ただ俺が持っている指輪は海のような色で輝いており伝承に出てくるような全ての海獣を統べる力があると言われている。

 魔力の多い魔族が幼少期から魔力を注ぎ続けようやく明るい青というので俺が持っている指輪の色が規格外だと認識させられた。


「何をしているんだ。その男は私に暴力を振るい海獣の守りを奪ったんだ、ぞ……」


 隠れていたセイルが守備隊が俺を拘束しないことにしびれを切らして出て来たが俺が持つ指輪を見て固まった。


「アトランティカ様、御覧の通り海のごとき海獣の守りを持つお方に我々が手を出すわけにはいきません。海人国の全ての法を差し置いても遵守すべき掟です。どうしてもとおっしゃるのであれば国王へお伝えください」


「隊長さん、この色の指輪を持っていれば何をしても許されるのか? 」


「そうです。どんなことがあろうとも『海のごとき海獣の守りを持つものに逆らってはならない』と言われており海人国に生まれた全てのものが最初に親から言い聞かされることです。ですのでもしシリュー様が海人国を滅ぼすと言われれば我々はそれが海の意思だと受け止めるだけです」


「でも指輪に魔力を注ぐだけでこの色になるんだけどそんなことで良いのか? 魔力を持つ悪人が悪さをするかもしれないんだぞ」


「それでも輝く海色の守りを持つ者の意思は絶対です」


 3番隊は隊長に続き宿の前から去りセイルは3番隊に連れら項垂れたまま帰って行った。


 大人数に囲まれ揉めていつの間にか傅かれ波が引いたように大人数が居なくなった。

 俺個人としては何もしていないが精神的にとても疲れた。このまま海人国を出ようかとも思ったが次の大陸へのルートなども確認していないのでとりあえず情報を集めることにした。

 公的な商人以外は通れないカカンカ大陸への航路はあるが自由にイケるのはアンリケ大陸しかないという。それならシャンバリラのドイナーカ村に帰るのも良いかと思い宿に戻った。



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