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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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 あのお姫様ならと安心しながら出国するため桟橋に来ると近くにいる漁師たちに声を掛けられた。


「ニイチャン、どこに行く船を探してるんだい」


「いや俺たちは自分の船を持っているから問題ない。これから海人国に行こうと思ってな」


「はぁー、海人国に行くってこの辺の海に詳しい奴が一緒に乗るのか? 」


「いや、俺達だけで行くつもりだったが何かまずいのか」


「行っちゃつまらんとは言わんがあまりお勧めしないぞ。なんせ久々に海がうねってるからな。ここから海人国に行くには海流の激しい場所を抜ける必要があるんだが下手に乗っかると舵が効かんようになるんだ。そうなると巨獣達の巣に流されて喰われちまうのさ」


 海人国に行かない方が良い理由を聞けたがある疑問が出てくる。


「それならあんたたちはどうやって海人国と行き来しているんだ」


「さっきも言ったがこの辺の海に詳しい奴らは海流が巨獣の巣の下に流れ込んでいる場所を知ってるからそこを通って行くのさ。ただ海が荒れているとその境目が見えにくいから流れに捕まって巣に流されちまう」


「行けるようなら行くし難しいようなら引き返してくるさ」


 そう言いながら異空間庫から船を出すと全員驚いていた。

 船を走らせること2日して海面が荒れているのに不自然に海面がベタ凪の所があった。


(巨獣とは言うけどそこまででかいのは居ないだろうし多少でかくても怖禍威を使えば追い帰せるだろう)


 いきなり船で入り込んで丸呑みされても困るのでとりあえずの大きさを確認することにした。

 近くだと巨獣が出て来た波に巻き込まれると思い離れた場所にゴブリンの死体を適当に放り込んでみる。ゴブリンじゃ食いつかないかと思っていたが海が揺れてきたと思ったら海面が持ち上がり巨大な水柱が出来たと思ったら地上では見ることが出来ない大きな生き物が姿を現した。


 まさに山のように巨大な海獣が現れてきた。大きいと言っても何とかなるだろうと思っていたが流石に無理そうだった。

 不壊によって俺達が死ぬことはないが目の前の巨獣を倒すことはできないと直感した。腐界で腐敗させることはできてもどれほど時間がかかるか分からない。怖禍威で威圧してもビビるか分からないし気絶することもないと思う。


 当たりを少し見まわした巨獣はそのまま海へ潜っていくが船がひっくり返りそうになったので浮塊で船を波をやり過ごした。

 よく考えれば早い海流の上を浮塊を使って進んでいけばいい。今までも波の影響を受けないようにすればよかったのに桟橋で脅されたのですっかり忘れていた。

 海流部分を通り過ぎ凪を右手に見ながら海人国を目指す。


 海人国というのは地球で言うところの北極の辺りにあるので寒いのかと思えばさほど気温の低下は見られず小さい島が多数点在する国だという。見えてきた島に船着き場のような場所が見え一人の職員ら指揮人が手を振っていたので船を操作し留める。


「すみません。こちらで入国審査を行っていただく必要がありますのでご協力をお願いします」


 船を下りて桟橋に立つと先ほど手を振っていた男が声を掛けてきた。


「分かった。あそこの建物で手続きできるんだな」


「お手数ですがお願いします」


 こちらが普通に声を掛けても丁寧な口調を崩すことなく接してきて好感が持てた。


(それにしても海人国というぐらいだから魚人のような鱗を持つ人間かと思ったら普通の人間だったな)


 案内されるまま建物に入るとここでも予想を裏切り鱗などはない人間のみが対応してくる。

 冒険者カードを見せると何事もなかったように許可が下りたので再び船に乗って教えられるまま近場にある大きめの島へ向かう。


 1つの島が一つの集落や村や街といった感じで大きな島ほど色々な施設があるようだった。しかし大陸の街などに会ったような代官や貴族の屋敷のようなものは見当たらず不思議に思っていたがギルドに行って解決した。

 海上にできたギルドで俺のランクを見た職員がどこかに連絡をしていると床の一角が開き海面から厳つい顔の魚人が出て来た。


「ギルドマスター、こちらのシリュー様がAランクということなのですが確認をお願いします」


 受付嬢が丁寧に説明していたがギルドマスターと呼ばれた魚人は俺を見て視線を外さない。


「何か問題があるのか? 俺を見ているようだが俺には鑑定阻害の魔道具を付けているから詳しい能力は見えないと思うぞ。犯罪歴が無ければ問題ないんじゃないのか? 」


「ああ、悪かった。鑑定しようとしたんじゃなくて驚いているだけだ。オレも長いことギルドマスターをしているが底が見えない人間を見たのは初めてだ。あんたのような強者が来てくれるのは願ってもない事だから出来るだけ長く滞在してくれると嬉しい」


 見た目に寄らずフレンドリーなギルマスに握手を求められ握り返し異動に関しての諸々が終了した。


(それにしても魚人は海底で人間が陸上で仕事をしてるのか、どうりで陸上で魚人を見ないと思ったよ)


 冒険者ギルドや商業ギルドのような建物は湾内の海上に有って陸上でも海中でも対応できるようにしてあった。海の中をのぞくと海底にて店のようなものが立ち並んでいた。

 というか海底の店舗などの方が数は多いようだった。


 人間用の宿に泊まり魚料理を堪能して翌日は海都を目指すため船を走らせた。

 海中にも意識を向けると魔物と戦っている魚人を感じられる。おそらく魚人の冒険者で依頼という感じで魔物を狩ったり魚などを捕ったりしているのだろう。

 魚人たちを避けながら進み夕方になれば手近な島で宿泊し5日ほどかけて海都ポセイディアに着いた。


 かなり大きな島だと思っていたが俺が来たのは島の裏側のようで高く切り立った崖のようで接岸できるような場所はなかった。

 島の陸地に沿って移動していくと左右から岬のような陸地がせり出し岬の先端の間に検問所のような場所があった。船の中を確認されるが特におかしなものはなく逆になさ過ぎて疑われたが異空間庫から食料や水などを取り出して見せると納得された。


「全部を出して確認することは出来ないだろうから通すが危険な物などは持ち込んでいないな」


「ああ、危険なものはないはずだ。まあ、危険だった物なら大量に入っているからギルドに持ち込んで買い取って貰おうと思っているがな」


 少し皮肉を込めて会場で出会って倒した魔物を異次元庫に入れていたので出そうと思ったが止められた。


「あんたのような高ランクの冒険者では収納系のスキルや魔道具を持っているのは知っている。それにあんたは犯罪を犯すような人間が持つ雰囲気が無い。ポセイディアを楽しんでくれ」


 検問所を通り抜けると島だと思った場所は三日月状の陸地と中に大きな湾がありよく見ると海底に街並みが出来ている。


「城の上は結界で通れなくしてあるから左右どちらかの陸地に沿って船を進めてくれ」


 検問所の兵が声を掛けてきたので手を上げて応えた。


(確かに城の真上から攻め込まれたら守りようがないもんな)


 教えられたように湾内を陸に沿って進んでいくとちらほらと建物が見えてきた。


 桟橋のような場所があったので船をつけると許可証を求められた。商人や貴族といった特定の者でないとこれ以上の船の進入はできないらしい。

 船を下りて異次元庫に船を入れると案の定驚いていた。

 何か言いたげではあったが気にせず陸地を進み丁度切り立った崖の裏側あたりまで来ると立派な宿があった。

 他国の貴族や王族、大商人と言われる者たちが泊るような宿の様だった。

 金は持っているので折角なら一番いい宿に泊まることにした。


 ※本当に一番いい宿は海底にあることをシリューたちは知らない


 翌朝は新鮮な海鮮が売られる朝市があると聞いたので早起きして陸上部分の市場に出かけた。

 地球やこれまで回った大陸でも見たことが無いようないろんな魚や貝が並べられていた。

 調理方法を含めていろんな話を聞きながら買っていく。そんな中で海底の市場には行ってみたかと聞かれた。


「ニイチャンたちは海底の市場にはいってみたかい? あっちの市場はここには置いていない高級食材があるから試しに行ってみると良いぞ」


「ちょっと待ってくれ、海底の市場ということは海に潜らないといけないと思うが俺達は海の中で呼吸が出来ないんだが何か方法があるのか? 」


「なんだ、ニイチャンたちはこの島に来たばっかりだったのか。その辺の道具屋に行けばどこでも扱っていると思うが『水魚の心得』って名前の腕輪があるんだがそれを身に付けていると水中でも呼吸が出来るようになるんだ。ただ注意しとかないといけないのは服やら髪は濡れちまうからな。そんな時はちょっとお高いが『水膜の腕輪』だ。さっきの水衣の心得の機能に加えて体が濡れないようにしてくれる優れものだ。水膜の腕輪の方はどこでもは売ってないから注意してくれよな」


 有益な情報を貰えたので早速水膜の腕輪を買いに行く。


(そう言えば前の島であったギルマスは海から上がってきたすぐでも服や体が濡れていなかったな。彼らの場合は水中での呼吸というより陸に上がったときに床が濡れないようにするためだったのかもしれない。)


 店で水膜の腕輪を買おうとしたが装飾品としても良いようで色んなデザインがあった。チャミはピンクに緑や青のマーブル模様の腕輪を選んだ。どれにしようかと思っていたがベースが紫なの以外はチャミとおそろいのような腕輪を持って来て渡してきた。


「シリューちゃんにはこれが似合うと思うわ」


 俺としては別にどれでも良いと思っていたので素直に渡された腕輪を購入して身に付ける。

 ただチャミは元がスライムなので水中での呼吸を気にする必要はないと思ったが周りへの偽装を考えると確かに必要かもしれないと納得した。


 買い物をしながら店主に少し疑問に思ったことを聞いてみた。


「俺達が水中に行くための魔道具があるように魚人たちが陸上で生活するための魔道具ってあるのか? 」


「あるにはありますが使っていないと思うますよ。そもそも水中での生活が普通で陸上に行くのはやむにやまれぬ事情が無ければ行かないって考えの人たちだからね。長時間陸上に行くための魔道具を買おうとは思わないよ。ちょっとの時間であれば魔道具とか無くても問題ないからね。まあ城の特使辺りになると他の国に行くときに必要になるから水魔法が付与されたローブなんかを羽織って乾燥を防いだりしてるみたいだね」


 色々と工夫されているんだなと感心しながら早速腕輪を身に付け海の中に入って行く。


(そういえばこの腕輪が壊れたら大変だろうから不壊を付与しておこうかな)


「チャミ、ちょっとこっちに……」


 自分の腕輪に不壊を付与してチャミを呼ぼうとして声を掛けると水中なのに普通に会話が出来た。驚いたがチャミが来たのでチャミの腕輪にも不壊を掛けておいた。


 海底の街並みを見ながら進んでいくと水着のような服が売られていた。布面積が極端に少ないものや生地が薄く体に張り付き体のシルエットが丸わかりの物だった。周りを見ると体のあちこちに鱗があるので体を覆う面積が広いのは良くないんだなと理解できたしピッチリした服だと鱗に引っかかることが無いのかと思った。


「シリューちゃんも男の子だったのね。人魚族の綺麗な人を見て鼻の下を伸ばしてるんだから」


 なぜかチャミが不機嫌に声を掛けてきたが知らん顔をして街を見て回る。

 魚人ということで魚を食べないのかと思ったが問題なく魚介類も店頭に並んでいた。


 街中には居なかったが建物が疎らになったあたりには小魚が普通に泳いでいる。地上で野良猫や小鳥が飛び回っているのと同じ感じなのだろうと眺めていた。

 ゆっくりしていると海面から差し込む日光で海底の影は揺らいでいた。不自然な影の動きがありアンコは出ようとしていたがうまく出入りできないようだった。出てしまえは呼吸も必要ない様子だがいつもの素早い動きは出来なかった。


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