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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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 朝食を食べて宿を出ると街中が物々しい雰囲気で騎士や兵士が当たりを警戒している。


(この状況と2人からの依頼が関係しているのか? )


 何となく嫌な予感を抱えながらギルドに行くと俺を見かけた受付嬢が駆け寄ってきた。


「シリュー様、皆様お待ちですのでこちらまでお願いいたします」


 連れて行かれたのはやはりギルマスの部屋だった。

 促されるまま座ると3人に質問する。


「前回とメンバーが変わりないが一体今度は何を俺にさせたいんだ」


「ワシも内容は知らされておらんからそっちの二人から話を聞いてくれ。あくまでギルドへの依頼と言うことで内容を確認するために同席しているだけだからな」


 ギルマスからは無関係であるとアピールされたので2人に視線を向けるとケッサブロから説明があった。


「実は第2王子のカンパーヌラ様が襲撃を受け第1王女のユリー様が毒殺されそうになった。もしかしたらシリュー殿も聞いていると思うがドンファレ様は継承権を剥奪された。王族という地位は残されているが次の王になることはなくなった。」


「騎士団を取りまとめつつあるカンパーヌラ様と博識で王族としての考え方を備えているユリー様を王も評価しておりどちらかに王位を継いで欲しいと考えておられた矢先に今回の件があった。誰がどのような意図で行ったのか調査したいと思うが如何せん証拠が少なすぎてどうしようもない。そこでドンファレ様を探し出したシリュー殿なら解決の糸口を見つけてくれるのではないかと思い調査依頼をお願いしに来たのです」


 クノーシスは捨て犬が懇願するような視線を俺に向けてきた。


「はぁー、引き受けるのは良いが流石に城にも入らず状況も見せずに解決しろとは言わないよな」


「それについては王にも許可を貰い国賓として冒険者を招いたということにして出入りを出来るようにすることになっている。ただ調査を行っているということは内密にして欲しい。犯人がだれであれ王族を標的にしているので公になると大問題になってくる」


 クノーシスの言葉に頭が痛くなったが確かにそれぐらいの身分の方が城内を自由に行動できるなと納得した。


「その条件で問題ないが事件の内容を詳しく教えてくれ」


 第2王子は騎士団との訓練を終えて城に帰って来る際にナイフを投げつけられ腕を負傷し暴れた馬から落ちていくつかの打撲を負われた。幸い傷も小さかったので城の治癒魔法が使える宮廷医が治療したため問題はない。第1王女の昼食の毒見を行った際に毒見薬が痙攣して死にかけたが解毒薬を飲ませ事なきを得た。

 どちらも実行犯を見つけたが服毒して自害していた。


 話を聞いて俺は大きくため息をついた。


「フー……、どっかの誰かがどっちかを王にするために画策しているのだろうが怪しまれないように自分たちが奉り上げようとしている方の王族にも危害を負わせたんだろうな。完全なお家騒動という事だな。正直王族が死のうがどうでも良いが国が割れて苦しむのは民だ。仕方ないから犯人を見つけてとっ捕まえてやるよ」


 その日の昼過ぎに城へ招かれ王と対面した。威厳のある優しい声をしていたのでいい王様なのだろうと思った。


「今回は我が国のいざこざに巻き込んでしまって申し訳なかった。これは我が国の王族と同等の権限を持つ証となる腕輪である。どうか国を惑わせる虫を駆除してほしい」


 一国の王が平民である俺に頭を下げるなど考えられないがプライドよりも大切なものがあると分かっているのだろう。


「任せてください。必ずこの国の腐った部分を取り除いて見せますよ」


 早速城内を見て回るが襲撃者の遺体を神眼で確認すると2人とも『デビルバット所属』と共通の内容が分かった。


「クノーシス、デビルバットという組織に心当たりはあるか? どうやらこいつらはそこに所属していたみたいだ」


「早速有力情報じゃないですか。その組織は精都にある闇ギルドの一つで金さえ払えば何でも引き受けるという者たちです。早速拠点を探させましょう」


「早とちりするな。場所も分かっていないのにどうやって探すんだ。まさかデビルバットの拠点を知っているかと聞いて回るんじゃないだろうな。そんなことをしたら依頼した人間も組織の人間も逃げるか隠れるかして結局見つからなくなるだろうが。依頼書なら何かしらステータスに影響しているだろうからもう少し情報を集めるまで待ってろ」


 城の中を案内してもらっている風を装って見かける人間を片っ端から心眼で確認していくと第2王子の母親とその父である将軍に『殺害依頼者』という称号が付いていた。

 俺の神眼で見ただけでは証拠にならないのでデビルバットの拠点を探して繋がりを見つける。


 街を散策しながらスラムの方に行くと色んな闇組織に関わっている人間を見つけた。今回はデビルバットだけでよかったが蛇の道は蛇と言うことで絡んできた破落戸をコテンパンにしてアジトを聞き出した。


 素直に教えてくれた酒場に行くとほとんどの人間がデビルバットに所属していた。カウンターで洗い物をしていた爺さんがデビルバットのボスだったので他は全員怖禍威で気絶させ話を聞く。


「あんたがデビルバットの親玉で間違いないよな。マンデン父子について知ってることを全て聞きたいんだけど教えてくれるか? 」


「何を言っておるんじゃ。ワシはこの店でようやく雇ってもらい細々と暮らしている年寄りじゃ。デビルバットやらマンデン父子やら何を言っておるんじゃ」


 流石に手下が全て気絶しているが証拠がないのでとぼけて誤魔化すつもりなのだと思った。

 店の中を確認していると奥の部屋への隠し通路が見えたが開け方は分からなかったので力技で壊してボスの首根っこを掴んで中に入って行く。


 何やらボスが慌てているようだったが気にせず通路を奥に進んでいくと何かの書類が置いてあった。

 どうやら殺害や誘拐と言った非合法な依頼書のようで台帳のような物には依頼者と預かった報酬が事細かに書かれていた。

 その全てを異次元庫に証拠として押収し金庫もそのまま回収しようとしたらボスが暴れ始めた。


「あんたら何モンだよ。俺様がここまで大きくした組織になにしてくれてんだ。デビルバットを敵に回して生きていられると思うなよ。お前の親兄弟、昔の女まで見つけて必ず後悔させてやるから覚悟しておけよ」


「俺には親兄弟は居ねえし惚れた女は既に殺されている。ただ俺と関りに会ったやつらに危害が及ぶというなら遠慮しなくて良いってことだな」


 気を失うギリギリの怖禍威を浴びせかけるとさっきまでの威勢は消え去り元々年寄りだったが更にヨボヨボになってしまった。


「さて、最後の質問だ。マンデン将軍とその娘について知っていることがあれば素直に白状しろ」


 顔を覗き込んで質問すると全てを白状してくれた。

 何でも第2王子を王太子にするため母親であるスリーズ・マンデンと祖父のグルートコッスイ・マンデンが代理人を通じて依頼してきたという。

 手紙の封蝋などで本人たちに間違いないという事だった。

 手紙などの証拠を回収してボスも気絶させて騎士の詰め所に行く。デビルバットの拠点を知らせ全員を捕縛するように頼んだ。

 俺とクノーシスたちが一緒に居るところを見たことがある騎士が居たので頼みやすかった。


 城に戻って証拠を全て提出して後は勝手にしてもらうことにした。


「ほれ、これが依頼を受けた王子と王女の襲撃事件の黒幕の証拠だ。将軍と王妃親子をどうするかは王様やあんたたちが考えろ。それと第2王子のカンパーヌラは全く関与していない。あとお前たちがどれだけ把握しているのか知らんが次代の王の候補者の力量を確認してみたが俺の一押しは王女だな。あの子は国に対しての意識も高い。ただ欠点として猛烈に口下手だ。良き理解者を近くに置くことが出来れば国は安定するだろう。カンパーヌラも悪くはないが脳みそが筋肉で出来ていると思えるほど力技を多用する。真面目だから敵は作らんだろうが考えが浅いから悪知恵が働く奴に騙される可能性が高い。」


「シリュー殿は個人の力量も分かってしまうのか。意見として王へも伝えておく」


 ケッサブロが俺の言葉を聞いて感じ入っていたが追加で伝えておく。


「あのバ、ドンファレは絶対ダメだ。無能なうえに浪費家で自分の非を認めずわがまま。継承権どころか城に置いておけば間違いなく災いの元になるからさっさと追い出すことを勧めるぜ」


 最後の言葉を聞いた2人は何も言えずに困っていた。


(腐っても王族と言うことで批判できないんだろうな)


「まあ、俺が勝手に考えているだけで強制するつもりはないからどうでも良いが民衆が困るような噂を聞いたら遠慮なくつぶしに来るからな」


 語気を強め脅しをかけて城から出て行った。


 精都を出て次の大陸に行くための港街を探した。

 ウロウロしてクーラミス女帝国に入国しそうになったが大陸の北東の端にあるブールトゥという大きな港町に到着した。


 宿に着いて夕食を楽しんでいると酒に酔った者たちが色んな噂話をして聞かせてくれる。

 王位継承に関しての話が聞けた。

 ユリー王女が王太姫となり次代の王となることが決定した。

 直接的な関与はしていなかったが血縁者が王族を害しようとしたとしてカンパーヌラ王子は自ら継承権を放棄し一騎士として騎士団で精進することになったらしい。


 ついでに当事者であるスリーズ王妃やグルートコッスイ・マルデン将軍は嘘をついて誤魔化そうとしていたが嘘を見破る魔道具を持ち出され真実が明らかになり2人そろって斬首刑となり晒し首となった。

 どうでも良いことであるがバカ王子は過去のトンデモ行動が明るみに出て廃嫡となり母親であるディンドルブ王妃は闇ギルドと繋がっており違法に金銭を手に入れていた罪で幽閉されることになった。

 奇しくもこの国の悪い部分がキレイさっぱりなくなったことは良かったと思う。



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