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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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『世界樹の新芽の納品   報酬:金貨300枚

 南の国境付近の森に生息する世界樹の新芽を1つ納品する。』


 精都を出て南に馬車で3日程進むとテェッチクテン神霊国との国境というか緩衝地帯の広い森がある。その中心部に世界樹があるという事だが外縁部から普通に移動しても1月はかかるらしい。理由としては似たような木が生えていて太陽の光も差し込まない場所があり方向感覚がマヒしてしまうかららしい。

 空を飛んで行くにもワイバーンが世界樹を住処にしているらしく上空を飛び回っているから森を進むしかない。森の中には植物系の魔物も多く生息しており命の危険もあり滅多に近づかない。


 それを分かっていて依頼を出すというのはどんな奴かと思えば民に慕われている公爵の妻が原因不明の病で治療薬である霊薬の材料らしい。既に数組の冒険者パーティーが挑戦したが失敗したという。

 失敗による違約金もいらないと言っているようでそれなら俺達がやろうじゃないかと言うことになった。


 馬車に揺られ外縁部の村に来たがエルフではない人族が来たことであからさまに嫌な顔をされたが気にせず森に入って行く。

 方向を確認する際に浮塊を付与した盾に乗り樹上に顔を出し降りて一直線に進んでいく。出くわした魔物は問答無用で切り刻み森の肥料に変えていく。5日程進むと巨大な木を目にする。

 見えているのにあまりのデカさで距離感がおかしくなった。


 頭上に世界樹の枝葉が見えているのに幹の根元に着いたのはかなり急いだのに3時間後だった。根本付近に来ると大きな木は陽の光を遮られている影響か養分が枯渇しているからか殆ど生えていなかった。代わりに珍しい薬草が大量に繁茂していた。


 根元から頭上を見上げるとまっすぐに幹が伸びており少なくとも7~800mは登らないと枝が無く登ることが出来ない。飛んで行くにもワイバーンが我が物顔で飛び回っているので難しい。

 盾に浮塊を掛けて風を操作したとしても小回りが利かずワイバーンに囲まれて墜落してしまう。不壊があるから死ぬことはないが目的の新芽を手に入れることが出来ない。


 悩んでいるとチャミが声を掛けてきた。


「シリューちゃん、もしかして上に登る方法を考えているの? ウチが飛んで運んであげようか」


 始めは何を言っているのかと思ったがチャミは確かに取り込んだ魔物の体を部分的に生やして使うことが出来たと思い出す。


 ここまでに倒したワイバーンを食べていたチャミが背中から翼を出した。ただ飛んだことが無いチャミが上手く扱えるわけもなく少し飛行練習が必要だった。

 その間俺は氷の槍を作ってワイバーンを撃ち落としていた。近づいてくる個体は倒せるが距離が開くと簡単に避けらてしまう。


 飛行練習の終わったチャミに抱え上げられワイバーンに近づきながら氷槍で数を減らしていく。流石のワイバーンも俺達がやばい存在だと分かったようで襲ってこなくなった。

 ここまで10日かかったがようやく世界樹の枝まで辿り着いた。

 途中で虫型の魔物も出てきたが問題なく倒しながら一番高い場所に新芽があった。

 世界樹の頂上から周りを見るとすり鉢状になっており街などは見えなかった。


(これは森の外縁部に来ないと世界樹が見えないのも納得できるわ)


 正確には中心部から離れるほど木が生い茂っており目隠しの役割をしているからだと分かったのは依頼主に話をした時だった。


 報酬を貰い食事を摂っているとギルドから職員がやって来た。


「シリュー様、昨日お戻りで申し訳ないのですがこちらの依頼を受けていただくことは可能でしょうか」


 一枚の依頼書を職員が差し出してきた。


『ポイズンギガントドラゴンの心臓の納品   報酬:金貨:50枚

 研究のため心臓には傷をつけないように提出する』


「実は何組かのパーティーが挑戦しているんですがことごとく失敗しているんです。毒消しや毒無効の魔道具などを準備していくんですが毒が濃すぎるらしく毒消しが足りなくなったり魔法づが壊れたりすると報告を受けています。現在のこの街に居る高位の冒険者は軒並み失敗しているのでシリュー様たちが無理なら他の街から冒険者を招集しないといけないんですがギルドマスターがかなり嫌がってまして……」


 そこまで言うと床に額を付けるように深々と土下座をしてきた。


 あのギルマスが慕われているのか畏れられているのか分からないがどうにかなると思い引き受けることにした。

 職員は何度も頭を下げながら帰って行った。


「今日のシリューちゃんは優しいですね。あーゆー女が好みなんですか? ウチには見向きもしないのに他所の女の言うことは聞くのね」


 聞こえるようにチャミがブツブツ言っているが聞こえないふりをして準備を始める。


(俺には不壊と状態異常無効があるから問題ないとしてチャミも毒だろうが何でも吸収しちまうんだから大丈夫だろう)


 食料品と毒の種類によっては腐食性があり刃物が痛んで解体できない場合を考え予備のナイフなどを買いこんで翌日の朝には出かけた。

 精都から馬車で2日程北上した崖にポッカリ開いた洞窟が今回の目的地になる。


 既に洞窟の入り口から独特な匂いがして草木は枯れててしまっている。

 俺とチャミは問題ないが普通の人間なら既に毒の対策をしないと近づくことも出来ないと思った。

 洞窟に入ると毒々しい色のスライムや山荘魚やヤモリのような魔物もいた。


『ポイズンゲッコー:爬虫族

 HP 103、MP 73、攻撃 27、防御 31、敏捷 54、魔力 24、知力 33、運 17 

 スキル:S薫毒P R毒腺P N噛みつきA N再生P   誘引者 』


 洞窟の中でどうやってエサを捕っているのかと思ったらヤモリっぽいやつが匂いで周囲の魔物をおびき寄せ毒で殺して食べているようだった。食べ残しをスライムが片付けるが消化するたびに毒を撒き散らしていた。

 性格的には慎重な魔物なようで動いている者に対しては襲ってこないようだった。


 1日歩くと洞窟から抜けてしまった。

 目の前に広がったのは地面のあちこちに紫色や金色の沼から極彩色の湯気のようなものをコポコポと吐き出し毒っぽい霞が漂っている景色だった。


「確かにこれなら魔道具も壊れるだろうな」


 神眼で確認すると腐食毒に神経毒、細胞毒、血液毒とオンパレードだった。ただこんな環境でも生きている魔物が居るというのはつくづく不思議な世界だと思う。


 足元に気を付けながら進んでいくと大きな沼が見えてきた。沼の周りには50cmほどのポイズンリザードが大量にいた。倒すのも面倒だったので怖禍威で気絶させていくと沼から毒に囲まれたワニのような大きな魔物が出てきた。


『ポイズンギガントドラゴン:毒竜種

 HP 1038、MP 881、攻撃 637、防御 411、敏捷 358、魔力 120、知力 215、運 3 

 スキル:S毒砲A S毒防御P R引っ掻きA R噛みつきA RローリングA   毒主 大食漢 』


 特に問題なさそうだったので心臓を傷つけないよう首を切り落としてチャミに解体してもらい心臓と魔石を持ち帰ることにした。

 さっさと洞窟を出ると空気が美味しいと感じてしまう。体や服に着いた毒などをクリーンで取り除き精都まで飛んで帰った。

 盾を降りて都に入るとそのままギルドへ報告に行くが特殊な容器に入れる必要があるらしくしばらく待たされた。異次元庫から心臓を出して容器に入れる短時間でも毒を撒き散らしていたようで呼ばれていた神官が解毒を室内全体に掛けていた。


 毒まみれの心臓を素手で掴んで取り出していたことでギルドでは俺のことをヤバい人間だと噂するようになってきた。自分のことを真面だとは思っていないのでいまさら狂人扱いされたからと言って気にしない。

 大陸の南西側を見て回るための依頼を探していると幻のアイテムと言われる物の納品依頼があった。


『レインボーファルコンの羽の納品  報酬:金貨100枚

 レインボーファルコンの羽を1枚納品する。複数枚ある場合は全て同じ値段で買い取る』


 精都から南西方向に進み国境を越えてマーガス信仰国の中央付近にある広大なの森に住み着いていると言われているが目撃情報がかなり少なく巣を見つけることすら難しいと言われている。レインボーファルコン自体は羽を広げると1mぐらいの中型の中でも小さめの鳥だが警戒心が強く七色の羽を使って景色に溶け込み姿を隠しているという。

 飛んでいる姿を見かけただけでも幸運だと言われるほどの鳥だった。


 もう一つ見つけにくい要因としては森自体に不思議な磁場が働いているようで方向感覚が狂い最悪森から出れなくなるという。

 1月分以上の食事を準備し異次元庫に入れると森の突撃していく。


「シリューちゃん、やけくそになって森に入って行くけどレインボーファルコンって警戒心が強いから逃げるんじゃないの」


「そんなことは分かっている。俺が探すのはレインボーファルコンの本体ではなく巣に残った羽を探すんだ。抜けた羽が虹色でなかった場合は本体を探す必要はあるが巣の場所が分かれば生息域も予測が立ちやすくなるからとりあえず巣を探すんだ」


 多少は魔物も出てくるが殆ど呼吸をするような所作で簡単に倒せる程度の魔物だった。

 幾つかの巣を見つけたが羽を鑑定してみると別の鳥のものだった。

 夜営をしながら森の中を駆けずり回っていると少し小ぶりの巣があった。

 確認すると光沢のある茶色の羽の下に七色に輝く羽が1枚あった。鑑定の結果レインボーファルコンの花で間違いなかった。


 もしかしたら姿を消してこちらの様子を伺っているかもと思って周囲を探知で探ってみたが見つけられなかった。

 欲張るのは良くないなと思い立ち寄った街で珍しい食べ物や品物をなどを買いながら精都に帰ってきた。

 ギルドに提出して確認してもらうと間違いなかったので報酬を受け取った。


 前回の依頼をしてみて探す内容のものは避けた方が良いと思った。ダンジョンの中にある千年樹と言われる巨木の枝を切り落として持ってくるだけの依頼だったのでこれにしようと思った。


『千年樹の枝を10本提出 報酬:金貨5枚

 ダンジョンの最奥に生息する千年樹の枝の太さと長さが既定以上のものを10本提出する』


 場所を聞いたら精都の南東にあるオルーエリ公国にあるすり鉢状の森がダンジョン化してそこにあると言われた。

 報酬は安かったがそれでもかなりの金額なので出てくる魔物が厄介なのだろうと思いつつダンジョンを目指す。

 ダンジョンの近くにはいくつかの食事処やポーションなどを扱っている雑貨店があった。

 必要な物は特にないかと思いさっさとダンジョンに入って行く。


 すり鉢状と言うことで目的に巨木が見えていたので飛んで行こうとしたが見えない壁に阻まれた。ダンジョンと言うことでズルが出来ないようになっているのだと思った。決められたルールを守るしかないと思い道順に従って進んでいくが道は緩やかに左カーブしており分かれ道などはなかった。

 出てくる魔物はキノコに足が生えたような物で殴るだけで居なくなってしまったが消える瞬間大量の胞子を撒き散らしていく。


 その胞子は地面や木に触れると一気に発芽してキノコになり歩いて襲ってくる。進んでも進んでもキノコが襲い掛かってくる。通路も変わり映えせずイライラして怖禍威を発動させるが意識が無いのか全く気にせず突っ込んでくる。

 ダンジョンの中なので火を使おうとしたが胞子が充満しており粉塵爆発するかもと思い踏みとどまった。


 水や風の魔法で吹き飛ばしても空中に漂っている全ての胞子を取り除くことは出来ず土魔法で壁を作ってキノコたちが来ないようにして食事と摂ろうとしたが食べ物に胞子が付いた瞬間キノコが生えてきた。

 俺達は不壊があるから苗床になっていないが下手したら自分が苗床になる可能性があったということになる。

 苗床になる心配はないが鼻から入ってくる胞子でくしゃみが止まらず口から入ると喉がイガイガする。

 風魔法で顔を包み胞子を吸い込まないようにして先に進む。


 森全体が螺旋状に進むことになればかなりの距離を移動することになる。いくら不壊が有っても餓死する可能性があるのでできるだけ急いで移動することにした。キノコは完全に無視して走っていくが終わりが見えない。休憩も取らず3日程走ったがまだ着かない。


 異次元庫から出した食事もキノコが付いた状態で食うことになったが美味しいはずのチャミの料理が激マズで吐きそうになる。何とか水で流し込みながら栄養補給を行い10日目にようやく中心部に着いた。


 ボスなどは居なかったので巨木の枝を適当に切り落とし異次元庫に放り込んだ。

 帰りも10日かかると思うとゾッとしたので盾を出して浮塊で浮かせ風魔法で飛んで行くことにした。それでも3日も掛かって途中でマズイキノコを食べることになった。


 ダンジョンを出て食事処に行くと『キノコ尽くし御前はじめました』と貼り紙がしてあったがしばらくキノコは食べたく体と思いステーキやフライなどを頼んで食べた。

 食事をしながらチャミの言葉に絶句した。


「シリューちゃん、なんでコアに触らず帰ってきたの? ダンジョンマスターになれば権限で好きな場所に移動できるから帰りは簡単だったはずだよね」


 あまりの極限状態で真面な考えが出来ず無駄な事をしてしまったと深く反省した。


 帰りの馬車の中でチャミからの追加情報で泣きそうになった。

 ダンジョン入り口にあった雑貨店に胞子を避けるための魔道具が売ってあったらしい。おまけにキノコは火を通すことでうまみが出て頬っぺたが落ちるほどおいしいらしいと言っていた。


 情報収集の大切さを実感し納品した後は依頼を受ける気にならず万葉の大樹亭でダラダラとした生活をしていた。

 どうやら俺が持ってきた木材はキノコの原木になるようで料理屋でもキノコ料理が食べれるようになったらしい。

 いくら旨いと言われても激マズが舌に残っているので食べず嫌いになってしまったようだった。

 都を散策していると噂好きなお姉さん? おばさん? 達の井戸端会議が聞こえてきた。


「そういえば王太子だったドンファレ様が高位の冒険者を怒らせたとかで王様からのお説教があったらしいわよ」


「そうそう、それで母君である女帝国から来ているディンドルブ様が助け舟を出したけど藪蛇で一緒に怒られたらしいわね」


「そうなると王太子が変わるのかしら。確かにドンファレ様は何となく頼りない感じがするものね」


「その点、第2王子のカンパーヌラ様は騎士団を率いて魔物退治もしてくれるしお爺様に当たるマンデン将軍の後ろ盾もあるから良いんじゃないかしらね」


 次の王について町人が噂話をしているのはいかがなものかと思うが街が平和だから出来ることなのだろうと思った。

 聞こえてくる話を要約すると王位継承争いから長男である馬鹿王子は出遅れてしまった。次男は有力候補で長女は優秀らしいが何を考えているか分からないから判断できないという感じだった。

 ただ長女は精霊の巫女と王との間の子供らしいが産後の日立ちが悪く筆頭巫女である祖母が母代わりとして育て歴代の巫女よりも優秀らしい。


 民が苦しまない王であればだれでも良いかと思いながら街を散策し宿に帰ってくると亭主が手紙を預かっていると渡してきた。

 部屋に戻って中を確認するとケッサブロとクノーシスから頼みたいことがあるから明日ギルドに来て欲しいという事だった。



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