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「俺が以前住んでいた村がある王族の心無い指示で焼き払われた。村人は何も悪いことはしていない。軍隊の通り道だというだけで気まぐれに殺された。わがままな王族や貴族が居なければ今でもその村は平和な時間を過ごしていただろう。平民だから村人だからと蔑む王族が居れば今後も同じことが起きうるだろう。そんな奴らが居るようなら俺が絶対に許さない。国を滅ぼしてでも弱い立場の人間を守って見せる」
ギルマスは静かに話を聞き、王子やクノーシスたちは驚いていたが苦し紛れに王子が反論した。
「確かに不幸な出来事かもしれないがお前にそんな権限はないだろう」
「確かに権限はないが俺は俺の思ったことを自由にさせてもらう。気に入らなければ俺を殺せばいい。だが黙って殺されると思わない事だ。命を捨てる覚悟があるならかかって来い」
軽く怖禍威を掛けると王子は顔色を悪くし奥歯をカタカタさせている。
「俺は命を懸けて自由に生きている。俺の行動を間違っているという人間は居るだろうが殺されても文句は言わない。それほどの覚悟を持って信念を貫いていく。あんたは事由がないというが自分の命も守れない者が自由を欲しがるな。王族や貴族は民から支えられて生きている。あんたが生きているのはそこにいるクノーシスたちの尽力があったからでお前は何もしていないのを忘れるな」
王子が俺に反論しようとしたが言葉が見つからず口を一文字に結んで俯いてしまった。
「王子は無事見つけたから依頼達成で良いんだよな。報酬は俺のギルド口座に入れておいてくれ」
考えの幼稚な王子に俺の言葉が届いたのか定かではないがこの国が腐っているかは見届けさせてもらおうと思いつつギルドマスターの部屋を後にした。
冒険者ギルドの1階に行くと冒険者はまばらになっていた。明日受けるための依頼を確認するため掲示板を確認した。
『エルダートレントを討伐 報酬:金貨20枚
東の森に生息する個体に襲われたため討伐を依頼する。討伐した証明として枝や幹を提出する』
精都を出て馬車に揺られること5日かけてようやく目的の森に着いた。
この大陸では樹木を大切にするが魔物化してトレントになり人を襲うようになったものは討伐対象となるため他の樹木に悪影響を及ぼす前に依頼が出される。
森では火を使えないので剣聖になっているスキルを活用して剣に風の魔力を纏わせ切れ味を増して襲ってくるトレントを切り倒していく。
下水道の要領で魔力を広げトレントを見つけては鑑定で確認するが普通のトレントばかりだった。森の奥へ入って行くとひときわ大きな反応があった。これは探していたエルダートレントだと思い走っていく。
そこには人の顔が幹の部分にある周りの木とは桁違いの巨木があった。ギルドの依頼書では森の伐採許可を貰った商人が作業を行う際に襲われたため討伐をして欲しいということだったが攻撃を仕掛けてくる気配がない。
それどころか巨木の幹に刻まれた顔はとても柔和で好々爺という感じだった。
(もしかしてこいつはエルダートレントとは違う人を襲わない別の種族なのか? )
疑問に思ったので神眼で確認してみた。
『エルダートレント:樹木型
HP 3257、MP 2259、攻撃 1358、防御 5429、敏捷 1037、魔力 6234、知力 8547、運 697
スキル:S薙ぎ払いA S再生P S刃葉A S蔦絡みA S成長促進P R散種A
トレント族長老 穏健 博識 』
神眼の結果でも人を襲う要素が無かった。不思議に思っていると優しい声が聞こえてきた。
「強き者たちがこの森になにようですじゃ」
「実はギルドの依頼でエルダートレントの討伐に来たんだがこの森にあんた以外にエルダートレントは居るか? 」
どうしても目の前のエルダートレントが討伐対象だと思えず聞いてしまった。
「いや、この辺りの森にはワシ以外にエルダートレントは居らんですじゃ。討伐と言うことはワシを切り倒しに来たということですかな」
あまりにもまっすぐ聞かれたことで言葉に詰まってしまった。
「いや、あんたは俺たちが探している個体とは違うようだ。ただ万が一と言うこともあるから聞かせてもらうがあんたは伐採に来た人間を襲ったことがあるか? 」
「いや、森を荒らしてくる人間もたまにいて若い子供たちが暴れることはあるがワシの所に来たのは君たちが200年ぶりぐらいじゃな」
「シリューちゃん、もしかしてだけど依頼主が嘘ついてるんじゃないの? 討伐依頼の筈なのにエルダートレントの枝を持って来いって書いてあったよね。普通は魔石を見せれば済むことなのにへんじゃない? 」
「確かにおかしなことだな。それに大きさにもよるけどエルダートレントの素材って高額で取引されるって受付嬢も言ってたな」
「でもそれじゃあ依頼はどうするの。エルダートレントの枝や幹を持って帰らないと違約金を払う事になるよ」
「いや、違約金を払ってでも不正をする奴を悦ばせるなんてまっぴらごめんだ」
「ワシの枝でよければ持って行ってくれて構わんじゃよ。久しぶりに話ができて楽しかったんじゃ」
エルダートレントはそう言うとかなり太い枝を垂らしてきて伐るよう促してきた。
「あんたには申し訳ないが襲ってきたトレントをかなり回収しているからそいつを売れば違約金なんて端金ってぐらいになるから安心してくれ。」
精都への帰り道、依頼主にどんな天誅を食らわせてやろうかと考えを巡らせていたがチャミからの提案で良いことを思いついた。
精都に着き早速ギルドに向かい報告を行った。
「依頼の報告をしたいんだが良いか。森をあちこち探したんだがエルダートレントが襲ってくることななく討伐することが出来なかった。代わりと言っては何だがトレントの木材を大量に回収してきたのでそれで勘弁してもらえないか依頼主に掛け合って欲しい」
「えーっと、そうですね。シリュー様方の意向を依頼主に確認してみますね。返事は宿の王にお知らせする形でよろしかったでしょうか。もし依頼主から断られた場合はギルドでトレントの素材を買い取ることも出来ますのでご安心ください」
ダークエルフの受付嬢が体の前でガッツポーズをするのである部分が強調されておりなぜかチャミに腰のあたりを抓られた。
翌日の朝食時にギルドからの使いが来て依頼主がトレントの木材で手を打つを言ってきたらしい。
見事にエサへ引っかかったとほくそ笑み依頼主の屋敷に向かった。
屋敷を見ると悪趣味と言わざる得ないようなゴテゴテした装飾が施されていた。胸やけしそうな感情を押さえながら屋敷の扉を開けるとこれまたキンキラの服を着た太った男が待ち構えていた。
「お前たちが私の依頼を受けたのに達成できなかった二流冒険者か。それで金の代わりにトレントの素材で手を打ちたいと言ってきたようだが」
とりあえず確認する必要があると思い話を遮ってエルダートレントのことを聞く。
「その前にエルダートレントの討伐依頼を出されていましたが場所は精都の東にある大森林で間違いないですね」
「そうだぞ。私が雇った木こりたちが襲われたから依頼を出したんだ」
「なるほど。襲ってきたエルダートレントの特徴はどうでしたか? 良ければ襲われた木こりの方にも話を聞きたいんですが」
「なんでそんなことをしなくてはいけないんだ。お前たちは依頼を達成できず違約金を払うのを嫌がっているのか」
何となく慌てた様子が見えたので神眼で確認するとやはり嘘をついていた。
「いや、渡すのは構わないが探し回っている時にトレントは大量に倒したからどうでも良いんだけどあまりに見つからなかったからエルダートレントに会った場所が聞けたらと思っただけだよ。違約金の代わりに出す木材はどれぐらい出せば良いんだ。俺は相場が分からないからどれぐらい居るのか教えてくれ」
「どうせお前たちのような素人が集めた木材など二束三文にしかならんのだから持っている全部の木材でも賠償金に足るとは限らんのだ。それを私のやさしさで全部寄こせば勘弁してやると言っているんだ。つべこべ言わずにとっとと木材を持って来い」
商人は顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。
(屋敷の中には殆ど人が居ないな。これなら予定通り木材を出しても大丈夫だろう)
「それじゃあ俺が持っている木材全てを受け取ってください」
異空間庫から取り出した大量の木材は屋敷からはみ出し建物を破壊して敷地に溢れるほどの長だった。
それでも木材を出していると商人は怒り出した。
「止めんか。私の屋敷を壊してしまってどうしてくれる。衛兵に突き出してやるから覚悟しておけ」
唾を飛ばしながら怒鳴ってきたのこちらも冷静に返事をする。
「ほう、それなら俺もあんたが虚偽の内容で依頼を発注していたことをギルドに報告してやろうか。俺が出会ったエルダートレントは俺たちの前に会った人間は200年前という事だった。人を襲っていない魔物の討伐依頼は禁止されているはずだ。知能が高いということで恨みを買う可能性が高いからという理由だったはずだ。採取依頼でエルダートレントの木材を回収しようとすると討伐依頼に比べて10倍近くの依頼料が発生するもんな。量は少ないかもしれないが倒した証明となるとそれなりの大きさになるだろうから討伐証明だけでも十分木材の価値が出て来るもんな。」
俺の言葉を聞いた商人は顔を青くして震え始めた。隠していたはずの嘘がバレてマズイと思ったのかもしれない。
眼球は激しく動き必死に言い訳を考えている様子だった。
「分かった。依頼は取り下げるから違約金を払う必要もない。大人しく帰れ」
損得勘定をした結果なのか依頼の取り消しを言い出した。俺は出したばかりのトレントの木材を異次元庫に吸い込んでいく。
「ちょちょ、ちょっと待て。なんで木材を持って帰っているんだ。それが無いと私の家の修繕ができないではないか」
「何を言ってるんだよ、おっさん。あんたが依頼を取り下げるから違約金は払わなくていいと言ったじゃないか。ここに出したトレントの木材は何のためのものだったのか忘れたのか」
俺の言葉を聞いた商人はようやく理解できた異様で声も出せず口をパクパクさせている。
「分かってくれたのなら安心したよ。何か依頼することがあるなら聞いてやらないこともないぞ」
無事問題も解決したので宿に戻って休むことにした。
後日聞いた話では材木商は屋敷に会った美術品などの支払いが出来ず屋敷の修繕も出来なくなったとかで奥さんの実家に頼み込んで済ませてもらうことになったと聞いた。




