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「いらっしゃいませ。冒険者ギルド ザミーシーガ本部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか」
褐色の肌にメリハリのある体型をしたダークエルフの受付嬢が声を掛けてきた。
「実は魔物の素材を買い取って欲しいんだが数が多い。どれぐらいなら買い取ってくれるかと思ってな」
「失礼ですがギルド証はお持ちでしょうか? 」
確かに大量の魔物の死体を持ち込んだと言って「ハイそうですか」と引き受けるわけがないと納得しつつギルドカードを取り出して見せた。
カードを受け取ったダークエルフの受付嬢が整った顔を引き攣らせて慌てて立ち上がる。
「シ、シ、シ、シリュー様でしたか。ギルドマスターがお会いしたいということなのでこちらにお願いいたします」
カウンターから出てくると深々とお辞儀をしてギルマスの部屋へ案内しようとしてきた。昨日の牢での出来事は冤罪であり不可抗力なので咎められることはないと思うがわざわざギルマスが呼び出すとは何事だろうと思っていると重厚な扉の前に着いた。
「シリュー様がお見えになったのでお連れしました」
扉をノックして声を掛けると中から「入れ」と返事が返ってきた。
開けられた扉の先には見知った顔以外にさわやかイケメンと厳ついおっさんが座っていた。
誰だろうと思っていると受付嬢はさっさと部屋から出て行った。
「やあ、シリューさん昨日ぶりですね。宿に籠ってギルドにはしばらく顔を出さないと思っていましたが真面目なんですね」
クノーシスが声を掛けてきたが隣に座っている緑髪のイケメンエルフが声を掛けてきた。
「あんたがシリューかい? こいつから聞いたが迷惑をかけたようだな。おまけにかなり強いとも聞いている。時間があるようなら俺たちの手伝いをしてくれないか? 」
「おいおい、サブロ、ワシを目の前にしてギルドを飛ばして依頼をしようなんざいい度胸じゃねえか」
緑髪のイケメンエルフとてっぺん禿げのドワーフっぽい筋骨隆々なおっさんが言い合っている。
「シリューさん、いきなりで申し訳ないね、こっちの緑の髪の男は私の同僚でケッサブロ・サーサキスという。そしてこっちの筋肉親父がギルドマスターで名前はマキンシュロ・トーヤっていうよ。立ち話もあれ何で座ってくれないかい」
「シス、誰が筋肉親父じゃ。お前たちもワシとそんなに年は変わらんだろうが。エルフは若く見られるかもしれんが既に孫も居て爺じゃないか」
漫才じみた言い争いを聞かされて呆れているとようやく落ち着いて話が出来るようになった。
「改めてワシがザミーシーガ本部のギルドマスターをしているマキンシュロ・トーヤだ。今回呼んだのはそっちの2人からお前さんに改めて依頼をしたいという事だったのでギルドに来たらワシの所に連れてくるよう受付には言っておったんだ。まさか今日来るとは思っていなかったから報酬面を含めた内容を決めていなかったが何か要望はあるか? 今なら色々詰め込められるぞ。何せ城の近衛騎士様からの依頼なんだからな」
「ちょ、ちょっと、城からの正式な依頼じゃなくて私個人としての依頼なんだからそんなに嗾けないでくれよ」
クノーシスがギルマスを諫める様に声を掛ける。しかしケッサブロも更に煽ってくる。
「近衛騎士団長のクノーシス様ならたっぷりため込んでいるだろうから気にせず欲しいものを行ったらいいぞ。遠慮なんてしてたら損するからな」
「こら、サブロ、お前も調子に乗っているが報酬はお前と折半だから半分はお前が出すんだからな。調子の良いことを言っていると自分の首を絞めるぞ」
このまましゃべらせていると先に進まなそうなので話の主導権を貰うことにした。
「つまり、近衛騎士団としては動けないから自由の利く冒険者である俺に依頼をしたいということで良いんだな。昨日の話を聞く限る依頼内容としては行方不明の王子を探して欲しいということだろうがそんなに人探しやもの探しが得意ではないのであまり期待しないで欲しい。報酬に関しては既に先払いに近い形で貰っているので俺から請求するものはない。1リルダでも構わん」
静かだが少し怒気の混じった声で話すと3人は黙って聞いてくれた。
「実は今回捜索を行ってもらう第1王子は今までも城を抜け出しお忍びで城下町を出歩いていたです。その時は隠密部隊を派遣して陰ながら護衛をしていたんですが自由に生活できる楽しさを知ったようで王位を継ぎたくないと言っていました。その時は気の迷いだと思っていましたがその後もお忍びで城下町を出歩いているようでした。そして今回護衛をすることになっていた隠密が殺されており王子が城を飛び出したことに気づくのが遅れました」
「多分あの王子は城下町は危険だと小言を貰いながらも何のトラブルもなく帰ってこれているから甘く見ていたんだと思うぜ。護衛している隠密にも全く気付かないぐらいだからな」
「ただ隠密が殺されているということと王子の側近とはいえ一緒に居なくなった者たちの行方も分からないのは不自然なので何かの事件に巻き込まれている可能性を考え有能な人間には協力してもらおうと思ったわけです」
王子の性格や今までの捜索範囲などを聞きながら王子が居そうな場所を考えていると職員が駆け込んできた。
「大変です。ドンファレ様の側近と思われる2名の遺体が発見されました。なお発見者は下水掃除の依頼をしていたFランクの冒険者でウーカリ様への連絡も行っております」
詳しく聞いてみると身分証になるようなものは持っておらず何者かとの争った形跡があり体のあちこちに切り傷があり、中には内臓まで達するものもあった。死因は失血死だという事だった。
報告を受けた職員が確認して以前王子の依頼と言うことで何度か顔をあわせて居たので知っていたらしい。
クノーシスとケッサブロは手掛かりが無くなったと頭を抱えていた。ここに居ても解決するわけではないので俺は個人的に動かさせてもらうことにした。
「ちょっと聞くが今から遺体発見現場に行っても大丈夫か? 俺たちを捕まえるように言ったウーカリってのもが出てきたらまた捕まることはないよな」
「それについては王子の側近の2人ということがはっきりして猛省していたので大丈夫だと思う。もし面倒なことになりそうならこの短剣を見せてもらえれば私の関係者だと分かると思います」
家紋入りの短剣を渡されたので腰に下げて王子の特徴を聞いて下水道に向かった。
遺体の発見現場に来てみたがやはり手掛かりのようなものは見つからなかった。そもそもここで殺されたとは限らないので何かしらの証拠が無いかと下水道の上流に向かって歩き始める。
かなり入り組んでおり途中でどっちに行けば良いか分からなくなった。
試しに風魔法で下水道内の風を操作しながら流牙拳の応用で他人の魔力に反応がある場所を調べていく。
何か所か反応の有った場所を確認に行くと低ランクの冒険者が掃除やネズミの駆除に来ていた。
「シリューちゃん、そろそろ夕方になる時間だけどまだ続けるの? また明日にしない? 」
既に数時間下水道内をウロウロしていたので心が折れそうになっていた。
「そうだな、あと2か所確認してハズレだったら明日出直そうかな」
魔力を広げ確認すると明らかに普通じゃない場所から人間の反応があった。下水道から細い隙間のような場所に入り込んで全く動こうとしない。もしかして当たりかもと思い向かう。
狭い隙間の先は少し広い空間になっているようでそこで寝ているようだった。
俺が入れない隙間だったのでチャミにスライムの触手を伸ばして貰い引きずり出した。
金髪のエルフで王家の紋章の刻印された指輪もはめていた。
顔や服は汚れていたが呼吸は安定しているようだったのでとりあえず王子だろうと連れて行くことにした。
背中におんぶして下水道を出ると既に夕焼けに空が染まっていた。クノーシスたちと年が変わらないと聞いていたが痩せておりとても軽かった。
ギルドに向かっていると背中の王子が動いたような感じはしたが気のせいかと思った。
「そうだチャミ、先にギルドに行って報告してもらえるか。このままギルドに入って騒ぎにならないとも限らないからどうすればいいか聞いて来てくれ」
歩く速度を緩めてチャミが返ってくるのを待つ。
「シリューちゃん、裏口から入ってくれって言われた。案内する職員を待たせてるってことだから行こうか」
やはり王子の側近が殺されたことで冒険者に話を聞いておりそのためギルド内が騒然としているらしい。
ギルドの裏口に付いたのでノックをすると鍵が開けられ開いた扉からはダークエルフの受付嬢が顔を出してきた。
「シリュー様、チャミ様、どうぞお入りください。ギルドマスターがお待ちですのでご案内いたします」
表からは見えない階段を使ってギルマスの部屋に行き中に入る。
部屋にはギルマスしか居なかったが俺が背負っている男の顔を見て王子だと言われた。
「ドンファレ様で間違いないな。シスとサブロはウチの職員が呼びに行っているからそのうち来ると思う。それにしても良く見つけられたな。お手柄だぜ」
気絶した王子をソファーに寝かせ2人を待っている間に大まかな説明を行っておいた。
「シリューさん、王子を見つけたんですか」
ノックもせず扉を蹴破る勢いでクノーシスが入って早々声を掛けてきた。
後ろからは息を切らしたケッサブロも付いて来ていた。
「ああ、ギルマスに確認してもらって王子という事だったが用心のためあんた達も確認してくれると助かる」
ソファーで寝ている王子を2人の騎士が見て回ると間違いないという事だった。
安心したのか床に座り込んで「よかったー」と脱力していた。
ギルマスにも言った内容を2人にも聞かせると目を覚まさないことが心配だと言い出す。
「それなら心配いらない。ちょっと気付の魔法を掛けてやるよ」
強めの怖禍威を掛けたら王子が飛び上がった。
「ぎゃー、殺される。クノーシス、ケッサブロ、僕は殺されちゃうのか」
王子は叫び声を上げながら2人の騎士の背中に隠れそのまま開いていた扉から出て行こうとしたので浮塊で浮かせて身動きを封じた。
「ドンファレ様、ご無事でしたか。心配いたしましたよ」
宙に浮いた王子にクノーシスが声を掛けているが王子は動けないことでパニックを起こしている。
「クノーシス、そんなに悠長に構えていては僕が殺されてしまうよ。モンもシュークも殺されちゃったんだから」
「大丈夫です。彼は私が依頼して王子を探して貰ったんですから。ところで王子はお城を抜け出して今まで何をしておられたのですか? 」
バツが悪そうに王子が今までの経緯を話し始めた。
案の定誘拐ではなく脱走だったようで殺された側近に作らせていた隠れ家に行ったらしいがそこを襲われたらしい。3人で逃げたが途中で王子を逃がすために敵に向かっていった側近が斬りつけられるのを見て下水道に逃げ込んだ。に浸かりにくい場所を見つけたので息をひそめ隠れているうちに寝ていたらしい。俺が背負っている時に目を覚ましたらしいが何とか隙を見つけて逃げないと殺されると思っていたと説明した。
「それで王子、その隠れ家を襲ってきた連中は何のために襲ってきたのでしょうか。何か話をしていませんでしたか? 」
「攻撃してきた者たちは僕を王子だと分かっていたみたいだったよ。王位継承者がどうとか言っていたからね。僕は王なんてなりたくないから殺さないで欲しいよ。そういえば下水道で隠れている時も王子を殺せばいい稼ぎになるって言ってたもん」
「そうですか。……ところで王子が城から抜け出したのは王になりたくないという理由ですか? 」
少し呆れたような口調でケッサブロが王子に尋ねる。
「そうだよ。だってしたくもない勉強を続けて、好きでもない人と結婚しないといけないんだよ。父上も母上が怖いからスリーズ様やハミャーユ様を側室に迎えたんでしょ……」
その後も子供の駄々っ子のような言い訳をしていた。
話を聞いていて腹が立ってしまいおもむろに立ち上がると王子の目の前に来て胸倉をつかんで持ち上げた。
「そんな奴に王様は出来ない。民を思い自分を犠牲に出来るような人間だけが王となれる。そんな王だから民は尊敬し大切にしようとする。お互いに尊重し支えあっている国はいい国になるがお前が王になればこの国は亡くなる。他の王子は知らないがそんな甘えた考えでは民が可哀そうだ。もしお前が王になるのなら俺がこの国をつぶしてやる」
始めはぽかんとして俺の言葉を理解できていなかったようだが理解が追い付いてきたのか顔を怒りに染めてきた。
「なんでお前みたいな平民にそんなことを言われないといけないんだ。王族の苦労も知らず好き勝手なことを言うんじゃないぞ」
王子が俺を掴み返そうとしてきたところでクノーシスに止められた。
「シリューさん、確かに甘い考えを持っているかもしれないがそこまでにして欲しい。王子もこの人には敵わないのだから無駄な抵抗をしないで下さい。下手をすれば本当に殺されてしまいます」
「少しの間しか関わっていないがあんたがそこまで感情的になるほどのことが何かあったのか? 差し障りが無ければ教えてもらえないか」
ケッサブロが俺の変わりようを見て質問してきた。




