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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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33/39

 そして3日目の午後になって鎧を着た兵士が来たがアンコがびっくりして俺の影に入り込んだが全く気配がしなくなった。


(ようやく無実が証明されるな)


 説明をしようとすると兵士が檻の鍵を開けて「帰って良いぞ」と吐き捨てた。

 俺の中でカチンときて睨みつけていると無理やり檻から追い出そうとしてきたので怖禍威をかけて兵士を気絶させた。

 派手に倒れたので金属製の鎧が牢の石畳に当たり大きな音を出した。


「何があった」


 少し離れた場所に居たであろう兵士が近づいてきて剣を抜こうとしてきた。


(どうせこいつも真面に説明をする気はないだろうから黙らせるか)


 怖禍威を弱めに発動して気絶させる。

 2人目の兵士が怒鳴っていたこともあり数人の兵士が牢の近くに来たので問答無用で全員気絶させた。地上への連絡も行っていたのかワラワラと人が集まってきたが片っ端から気絶させていき檻の外には気絶した兵士で埋め尽くされた。


 鍵の開けられた牢の扉から出ても良かったが事情を知らないとまた拘束される可能性もあるので話が通じる相手が来るのを待つことにした。

 そこまで間を置かず豪華な鎧を着た男が入ってきた。今度も怖禍威を弱めに浴びせるが苦しそうにしても気絶することなく俺に近づいてきた。


「君が威圧を行っていると思うのだがなぜこんなことをしているんだい? 」


「お前たちが理由もつけず3日もここに留め置いてさっきも理由や謝罪もなく出て行けという。腹の虫が収まらないから仕返しに気絶させたんだ。殺されなかっただけありがたく思うんだな」


「えーっと私も良く分からない状態で呼ばれたんだけど経緯を聞いてくるから威圧を止めてくれるかな」


 話が通じそうな人間が来たので怖禍威を止める。

 苦しそうな表情は無くなり美形なエルフの中でも更にイケメンな金髪騎士が入り口に向けて声を上げた。


「この2人を拘留するように指示を出したのは誰なんだ。どういった理由で行ったのか分かる者が居ればこちらに来い」


 兵士がイケメンの声を受けて飛んできた。何やら話をしているがだんだんとイケメンの表情が険しくなってきた。イケメンの顔を見た兵士の顔が青ざめてきたことに気づいたのかイケメンが表情を戻し何やら指示を出していた。兵士が走って出て行くとイケメンが俺の方を向いていきなり頭を下げてきた。


「申し訳ない。完全にこちらの勘違いの様だ。君たちを拘留するように指示を出したのは門兵や街中の治安維持を統括している衛兵長のエイトロ・ウーカリと言うものだった。ある高貴な方が行方不明になり捜索を行っているのだが事情を知っていそうなものが男女の2人組だという情報しかなかった。その後2人の特徴なども通達されたのだが君たちとはまるで違う。そもそも都から出る人間を調べるようになっていたのに入ってくる人間を捕まえる必要はなかったんだ」


「なるほど。とりあえず分かっている情報だけで捕まえたが後から分かった特徴が似通わなかったから解放することになったということか」


「納得は出来ないだろうが許してもらえると助かる。触れもせずあれだけの数の兵士を気絶させることが出来る威圧が放てるということは高位の冒険者なのであろう。申し遅れたが私はクノーシス・アッツミカという。差し障りが無ければギルドカードを見せてもらうことが出来るだろうか」


 別に隠す必要もないので懐からギルドカードを取り出し見せると目を大きく見開き驚いていたがそれでもイケメンはイケメンだった。


「まさかAランク冒険者だったとは。そうなるとぼかした内容説明では不十分だな」


 冷や汗をかきながら困った顔をしながら詳しい説明をしてきた。


 クノーシスの話を要約すると高貴な方というのがこの国の第1王子で当初誘拐されたという事だったのでエイトロが厳戒態勢で捜索していたという。王子と男女2人組が一緒に行動していたという情報を入手し都から出ていなかったということから門を通過する男女2人組に話を聞くということになった。詰め所で身分確認を行い情報を集めることになっていた。しかし慌てていたこともあってか本来都から出る2人組に話を聞くはずが通過する2人組を片っ端から捕まえていたらしい。


 その後調べていくうちに2人組が王子の側近で誘拐ではなく城から抜け出しただけだと分かった。俺たち以外にも15組程度の男女があちこちの牢に入れられたらしいが俺たちが最後だったという。というか存在を忘れられており放置されていたという。何でも2人組の素性が分かったのは俺達が捕まったすぐ後で現場は混乱していたという。

 調書を取っていた2人組は順次解放されたらしいが混乱で俺たちのことをすっかり忘れていたというのだから俺の取った行動は攻められることはないと思う。


 都から出ていないのにまだ見つからないということで騎士も駆り出され捜索している時に兵士が慌てていたのでここに来たらしい。しかし見たのが気絶した兵士の山で挙句心臓を掴まれるような威圧が向けられ混乱していたという。


「改めて今回は異常事態とは言え城のものが大変なご迷惑をお掛けした。私の権限内ではあるが謝罪の意味を込めて希望に沿えればと思っている。何か欲しいものがあれば言って欲しい」


 説明を終えたクノーシスが欲しいものを聞いてきた。


「いきなり言われてもぱっとは思いつかないし俺も事情を知らず兵士たちを気絶させてしまったのは申し訳なかった。今回はお互い痛み分けと言うことで水に流すというのはどうだろう」


 無難な提案をしてみたが何かを考えているようだった。


「それではせめておすすめの宿を紹介させて欲しい」


(それぐらいであれば俺としても気負わずに済むな)


「分かった。精都についてすぐにここだったから泊る宿も調べていなかったから俺も助かる。それで手打ちとしよう。協力できることがあれば宿に知らせてくれ。可能な限り協力させてもらう。その時は依頼と言うことで報酬は貰うからな」


 人が多い環境に慣れていないアンコは町中を連れ歩くのが難しいため影に入ったままだった。

 クノーシスに紹介してもらった宿屋に向かいながら行きかう人々を見ているとエルフがほとんどだった。ただ帝都と違うのは人間や獣人も笑顔が見られ普通の生活が出来ているようだった。


 色々な商品を見ながら進んでいくと大木が立っていると思っていたが近づくとただの木ではなく木が宿屋になっていた。

 幹の部分の太さの割に高さはそんなにないがそれでも樹齢がどれくらいあるのか分からないほどだった。

 宿の看板を見れば教えてもらった万葉の大樹亭と書かれており間違いなかった。


 細かい細工のしてある木製のドアを開けて入ると右側にちょっとした歓談スペースがあり左には階段があった。正面の受付にはエルフにしては珍しく年配の男が柔らかい笑顔で出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。本日はご宿泊でよろしかったでしょうか。よろしければお名前を伺っても? 」


「ああ、俺はシリュー、こっちはチャミだ。この宿がおススメと言われたから来たんだが泊まれるか? 」


「ウンウン、なるほどなるほど。分かりました。シリュー様、それではお部屋の方へご案内いたします」


 俺たちの名前を聞いて何か納得しているようだったが部屋に案内してくれるという事だった。しかし基本的に宿代は前払いだったはずなのに金額を言わないうえに徴収することもなかった。不思議に思いながらもダンディーなイケオジに案内されるままついて行くと中央に木があり周りには妖精のような生き物が楽しそうに遊んでいる彫刻が施された芸術品のような扉があった。


「ちょっと待ってくれ。確かに泊まるとは言ったがこの部屋は俺が泊まって良いような部屋じゃないような気がするんだが」


「ああ、申し訳ございません。ご説明が足りませんでした。アッツミカ様よりシリュー様たちが来られたら最上のもてなしをするよう申し付けられており料金も既に頂くことになっております。ですので心行くまでご滞在いただければと思っております。申し遅れました、ワシはこの宿の店主をしております、ミィーチュック・ニーミトでございます。ミィー爺とお呼びください。」


 案内された部屋に入り見回すと大きな窓があり都を一望できるほどだった。他にも大きな木や城があるので全体は見渡せないが絶景だった。

 室内も木をくりぬいて作っているとは到底思えないような作りになっており寝室やバスルーム以外にも食堂や会議室のような部屋もあり上がってきた階段を考えるとおそらく最上階、つまりスートルームと言うことになる。


 座ったら立ちたくなくなる良いソファーに埋もれながら「こんないい部屋に泊まっていいもんかね」とこぼした。


「ウチ達が頼んだわけではないけど向こうが勝手にしてくれているんだから迷惑料とでも思って使えばいいんじゃない」


 独り言のつもりだったがチャミから返事が来て、それもそうだなと思い使わせてもらうことにした。


 翌日目を覚ますと当たり前のように俺のベッドにチャミが潜り込んでいた。

 アンコはベッドの下に大人しく寝ており改めてアンコを可愛がろうと思ってしまった。

 朝食代わりに異次元庫に入れていた肉を出してやると喜んで食べていた。頭を撫でてやると嬉しそうに喉を鳴らして体を摺り寄せてきた。


 際限が無いからと異次元庫に何でもかんでも入れていたと思いこの大陸で手に入れた魔物の素材などで要らないものを処分してしまおうと思った。お金に余裕はあるが金に換えてしまった方が良いかなと思い冒険者ギルドに行く事にした。


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