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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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 かなりの速度を出していたはずだったが結局3日程かかってようやく目的の大陸に着いた。

 桟橋に居た海の男とは到底思えないようなイケメンなエルフを異次元庫に舟を入れては驚かせ大陸間の移動に合わせて入国申請を行った。


「ようこそ、クーラミス女帝国トットノゥーラへ。入国の手続きと言うことですがギルドカードをお持ちでしたらお見せください。」


 かなりの美形エルフではあるが男か女か分からないような体型をしている受付が声を掛けてきた。

 冒険者ギルドのカードを見せるとAランクに驚き頭を下げてきた。


「Aランクの方でしたか。失礼いたしました。詳細は冒険者ギルドで聞いていただきたいのですが高ランクの依頼が滞っている現状がありますのでご協力いただければと思います。手続きは必要ございませんので依頼受注などご検討いただければ幸いです」


 高ランクは貴重という事だったがこんなにあっさり入国することが出来るとは驚いた。ちなみに連れているチャミも俺のランクが高いことで細かい詮索などをされることなくフリーパスだった。

 とりあえず宿を探し宿泊の手続きをして冒険者ギルドに顔を出す。


「さっきザミーキャ大陸に渡ってきたシリューだ。明日から依頼を受けようと思うがおすすめはあるか? 」


 手の空いて居そうな受付に声を掛けギルドカードを見せる。


「ご苦労様です。ではカードを確に、んさ、せ、て……、えーっ、Aランクですか? 」


 受付が俺のランクを大声で叫んだことでギルド内に居た連中から注目を浴びることになった。

 値踏みするような視線、疑うような視線、何かを企んでいるような視線、また面倒なことが無ければいいなと思いつつ受付に文句を言う。


「ここのギルドは冒険者のランクを大声で周りに知らせるのが当たり前なのか? こんなところでは依頼は受ける気になれないからカードを返してくれ」


 受付が持っていた俺のカードをひったくると懐に入れてギルドを出ようとした。

 後ろから呼び止めようとする声は聞こえたが完全に無視してギルドから出てきた。


「シリューちゃん、もしかしてだけど受付の子がぺったんこだったから優しくしてあげなかったとは言わないよね」


「そんなことはない。ランクを公表されて周りの冒険者が絡んできそうだったから出てきただけだ。そもそも依頼を受けなくても生活できるだけの蓄えはあるから面倒事だけは勘弁してほしい。まあ絡んでくるようならどうとでも蹴散らすことは出来るからどうでも良いけどな」


 そのまま宿に戻っても良かったが少し街の中を散策することにした。エルフが大半を占める大陸だけあって街を行きかうのは美形で耳の尖ったエルフで時々ダークエルフはいるが獣人やドワーフなどは稀に見かけるだけだった。人族はそれなりに見かけるが来ている服装を考えるとあまり裕福な生活は出来ていないと感じた。


 店先に並んでいるのは初めて見る野菜や果物が多くチャミが店主に聞きながら色々買い込んでいた。

 買い物をしながらザミーキャ体力について話を聞けた。

 元はハイエルフと言われる種族が1つの国として統治していたがある時ハイエルフが生まれなくなり当時の王族の中で継承権について揉めて2つの国に別れそこから更に別れ5つの国があるらしい。


 ただ俺が居るクーラミス女帝国とそこが従っているザミーシーガ精霊国で大陸の7割ほどを統治しているらしい。残りの3割をテェッチクテン神霊国とそこに従うマーガス信仰国とオルーエリ公国が統治している。

 分かれているとは言え国同士が争っていることはなく精霊と共存するか崇めるかで意見の対立はあるが精霊を大切にする気持ちは同じで平和だという。


 精霊が過ごしやすい環境を作るため極力自然に手を加えないような生活をしているので森の中で火を使うのはご法度らしく風や水の魔法を使う冒険者がほとんどだった。

 元々大きくなりやすい木らしいが100年以上の樹齢を持つ木は精霊が好むということで伐採する際は特別な許可が必要になるらしい。


 身分証としてギルドカードは使ったが依頼は受けずに街道を歩いたり馬車に乗ったりして観光しながら移動し2週間ほどかけて帝都ゲーテイルに着いた。

 道中は大きなトラブルはなかったが何処にでも調子に乗ったやつらは居るようで俺たちを人間というだけで下に見て絡んできたエルフを2度と逆らわないよう教育しておいた。


 帝都では流石に絡んでくることはないだろうと思っていたが輪をかけてカーストが出来上がっていた。エルフの貴族や王族を頂点にしてエルフの平民がいて獣人やドワーフと続き人間は最下層の扱いだった。


 宿に泊まるにもきれいな宿は宿泊拒否され大部屋で雑魚寝をするような安宿しか選べないにも関わらず料金もボッタクってきた。

 安宿の宿泊客と話すことがありクーラミス女帝国は大国であるザミーシーガ精霊国の王族に嫁として代々女を送り出しているということで増長しているらしい。


 女帝の家系がふんぞり返っているので貴族もそれに倣い同族であるエルフも偉そうにしている。

 ザミーシーガ精霊国は差別をすることが無いということなのでこんな国はさっさと出ることにした。


 一気にザミーシーガ精霊国に行くため大楯に乗り浮塊を掛け国境の関所まで飛んで行った。

 友好国と言うことで形ばかりの関所が設けてあるが犯罪者でないかの確認をする程度で自由に行き来できた。


「人族できちんとした身なりをしているぐらいだから高位の冒険者なのだろうがあんた達にはこの国は過ごしづらいだろうから精霊国に行くのは正解だと思うぞ」


 自国の兵士にもダメ出しを食らっているぐらいなので他にも問題があるのかもしれないと思った。


 国境を越えてザミーシーガ精霊国に入って最初の街では普通に希望の宿に宿泊出来て買い物でボッタクられることはなかった。ギルドに顔を出しても変な顔をされることもなく他の大陸と変わりなかった。

 Aランクのカードを出しても驚くことなく淡々と手続きをしてくれたので適当に依頼を受けることにした。


 バイトワームという木の根っこを齧っては枯らし卵を産み付ける厄介者の駆除をすることになった。

 普段は地中に潜んでいるが縄張り意識が強いとかで地面の振動で敵と判断し襲い掛かってくるらしい。


 森の中の少し開けた場所に移動し大きめの岩を浮かせ地面に叩きつける。何度かしていくと微弱な振動がしてきたと思ったら鋸のように鋭い顎のデカい幼虫のような魔物が出てきた。

 カカンカ大陸のダンジョンで身に付けた剣聖のスキルと流牙拳の応用で頭部だけを斬り取り勝利した。

 討伐証明は顎の鋸部分だったのでそこ以外は異次元庫に入れておいた。


 何か所か場所を変えて岩で音を出しとりあえず依頼に有った5匹のバイトワームを駆除できた。

 討伐証明としてバイトワームの舌を切り取り持ち帰る。他の部位は異次元庫に入れてしまう。


 ギルドに持って行くと「こんな短時間で依頼を達成するなんて」と驚かれたが倒しからさえわかれば簡単な依頼だった。

 正当な扱いをしてくれるのでこの国なら大丈夫だろうと思い精都クシュフルールを目指すことにした。

 困っているエルフが居れば助けながら3週間ほどかけて目的の精都が見えてきた。


 ザミーキャ大陸で一番賑わっていると言われている都だけあって入都門に並ぶ数も多かった。

 流石に都の出入りと言うことだろう。審査も厳重になっているのかかなり手間取っているようだった。


 2時間ほど待ってようやく俺たちの順番になった。

 冒険者カードを見せようとしたらいきなり衛兵に囲まれてしまった。


「隊長の指示に有った男女の2人組だ。抵抗するようなら多少痛い目に合わせても構わん。捕縛しろ」


 ちょっと偉そうな兵士が問答無用で俺たちを捕まえようとした。


「ちょっと待ってくれ。抵抗はしないが何故俺たちが捕まることになるんだ」


「うるさい。お前たちには嫌疑がかかっている。取り調べが終わるまで拘束させてもらう」


 荒っぽく腕を拘束されチャミと共にどこかの地下室にある牢に押し込まれた。


 全くと言って良いほどこちらの言い分を聞くことなく牢にぶち込んでくれた。檻をぶっ壊して出てやろうかとも思ったが謂れのない疑いを掛けられ指名手配でもされるのは本意ではない。取り調べが終われば出してくれるだろうから大人しく待つことにした。


 持っていた安物の鉄製の剣は没収されたが大事なものは異次元庫に入れていたので問題はない。それでもただ待つだけというのも暇なのでシャドウ種の卵に魔力を吸わせていく。

 流し込む魔力を多くしたり少なくしたりと時間を潰していたがその日は誰も来ず結局牢に泊まることになった。

 翌日もそのまま放置され取り調べどころか食事を持ってくる者も居なかった。


 俺たちは手持ちがあったので良かったが普通の人間なら餓死や脱水で死んでいると思った。


 面倒になって卵への魔力供給を最大出力で流し込んでいると魔力の吸収が止まった。どうしたかなと思っていると卵がいきなり動き出し内側から卵の殻を壊そうとしている。

 ヒヨコが卵の殻を壊して出てくるのは試練だと何かの本で見た気がするので出てくるのをジッと待つことにした。

 卵に罅が入り卵を割ると出てきたのは卵の大きさには収まらないサイズの大きめの黒い猫だった。

 とりあえず確認のため神眼で見る。


『NO NAME:シャドウタイガー:幼体

 HP 53、MP 87、攻撃 106、防御 127、敏捷 208、魔力 361、知力 81、運 138 

 スキル:S潜影A S影移動P N影魔法A 

 従属:シリュー』


(えっ? 猫じゃなくて虎? 俺に従属? 俺そんなスキル持ってなかったと思うんだけど、誰か教えて)


 あまりの驚きに思考が混乱しているがシャドウタイガーが俺の足に体を摺り寄せてくる。


「シリューちゃんはウチという存在が居ながら他にもちょっかい出すなんてひどい。ウチとのことは遊びだったのね」


 なぜかチャミがヤキモチを妬いてきてめんどくさい絡み方をしてくる。


「そうだな、こいつの方が素直に言うことを聞きそうだ。誰かさんは村に居ろと言っても反発して俺に付いてくるぐらいだから今後も言うことを聞かない可能性があるなー。そういえばこいつの名前を決めてやらないと可哀そうだなー」


 チャミへの意趣返しに揶揄いながら名前を考える。

 真っ黒かと思えば黒でも濃淡があり虎独特の縞模様があった。頭からお尻まで1m程度でしっぽを入れると1.5m程度ぐらいで俺の足元で丸まっている姿が大きなおはぎに見えた。


(種族的には影の虎だけど見た目の印象で闇の虎でアンコにしよう)


「よし、お前は今日からアンコだ。よろしく頼むぞ」


 アンコの頭を撫でてやると嬉しそうに喉を鳴らしていた。

 ただチャミに関しては揶揄ったからなのか分からないが少し警戒しているようでチャミが近づくと低く唸り声を出している。


「アンコ、大丈夫だ。ちょっとめんどくさい絡み方をするが仲間だ。俺やお前に危害を加えることはないから安心しろ」


 アンコの背中を撫でながら話しかけると警戒を解いてくれた。


(テイムしたわけではないが魔力を注いで孵化させたから俺の言うことを聞くってことなのか? )


 従属している理由を考えたが結論には至らなかった。


 アンコを撫でていると安心しているのが分かる。チャミなどはダンジョンの機能としてある意味使役している状態で考えていることは分からない。従属と使役の違いなのかと考えた。

 アンコの出来ることを確認してみると影に潜り影を伝ってショートワープのようなことも出来るようだった。


 ただ残念ながら攻撃手段となるようなスキルはないので影魔法を成長させるか狩りをさせながらスキルを覚えさせる必要がある。

 とりあえず檻から出るまでは手元に置いてモフモフを堪能することにした。

 膝の上にのせてモフモフを堪能しているが上質な絹を触っているようでとても滑らかだった。



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