③
深井side
「うぎゃ」
衝撃と共に着地したが思ったより痛みはなかった。安心して落下してきた辺りを見ると天井に転移の魔法陣が書かれていた。
(そりゃああんなところに転移させられたら落ちるしかないしあの高さから落ちてケガもなかったのは間違いなく運が良かったとしか言いようがない)
それにしてもと周りを見回すと僕の周りには壊れた陶器や異臭を放つ残飯のようなものなど明らかに普通の場所ではないと理解できる。
(もしかしなくてもここってゴミ捨て場じゃないのか? 確かにステータスとかスキルとか役に立たないかもしれないけどゴミ捨て場に落とすことないじゃないか)
魔法大臣や指示を出した姫様に腹を立てるがいまさら天井の位置に戻って行けないのでどうにかしてここから脱出する方法を探すことにした。
ゴミの山からどうにか抜け出し目の前の壁に右手をつけて移動することにした。迷路なんかで時間はかかっても出口を見つけられると言われているので試してみることにした。
渡されたナイフで壁に印をつけていざ出発。
途中で頑丈な扉があり開けようとしたが鍵でもかかっているのか開かず2時間ほどで最初の場所に戻って来てしまった。
あの扉が一番怪しいけど僕のスキルではどうすることも出来ないので他の出口が無いか調べてみることにした。幸い食料は3日分はあるのでその間に何とかしようと思った。
いくら洞窟の中と入っても何もない場所で寝るのは嫌だったので壁をナイフで掘って寝床を作ることにした。
傷がつけられたので大丈夫だろうと思っていたが2cm以上は掘れなかった。
おまけに付けていた壁の傷もいつの間にか消えてしまっていた。
穴を掘っている時間を考えると3~4時間で壁の傷が消えたことになる。さっき掘ろうとした場所を腕時計を見ながら観察していると約3時間で元に戻ってしまった。
(普通の洞窟で元に戻るってことはないだろうからもしかしなくてもダンジョンなんじゃないのか? もしダンジョンというなら魔物とか出て来るんじゃないだろうか? さっきは警戒していなかったけどもしかしたら襲われて死んでいたかもしれない。)
置かれた状況を理解し急に緊張感が増してきた。
回りを警戒しているとゲームで見るようなまん丸いスライムがゴミの中に居た。
どうも高く積まれたゴミを吸収しているようだった。
魔物を倒すことで成長できると言われていたのを思い出しスライムを倒して成長して脱出の糸口をつかむことにした。
但し持っているナイフでは心もとないので何か武器になりそうなものを見つけることにした。ゴミとは言っても色んなものがあるので使い方次第では武器になると思う。
ダンジョンであれば大きな扉はボスの部屋の可能性もあるので離れた場所を探すことにした。
錆びた剣や折れ曲がった槍などもあったが穂先の無くなった槍? 柄? にナイフを縛り付けて手作りの槍を作った。
スライムを探そうとして驚きの光景を目にした。腐敗した死体を溶かして吸収しているスライムが居た。思わず嘔吐してしまったがスライムを見ると気づくことなく死体に張り付いていた。
吐き気を催しながらも僕はスライムに手作りの槍を突き刺した。しかし槍の使い方が悪いのかダメージを負わせているように見えない。
スライムも食事を邪魔されていると分かったのか僕に向かって体当たりをしてきて避ける暇もなく体当たりを受けてしまった。しかし多少の衝撃はあったが痛みなどは全くなかった。
飛び掛かってくるスライムに槍を突き刺しつつも体当たりを食らいつつ子供の喧嘩のような泥仕合も何とか僕の突き出した槍がスライムの中にある塊を壊し勝利を手に入れた。
ついでに小さい石と3cmほどの球を手に入れた。
城で聞いた魔物を倒すと手に入る魔石とオーブだとすぐにわかったがオーブの中身が何か分からない。
異世界物の小説には鑑定を覚えると言うものがあったので鑑定を覚えるまで続けることにした。
とりあえず今手に入れたオーブを壊してみると何かが体に入り込んだ気がする。
「鑑定」
試しに持っている槍に向かって叫んでみたが何の変化もなかった。
それからは成長するためと有効なスキルを覚えるためスライムを見つけては倒していった。しばらくすると何やらガシャガシャと音が聞こえてきた。見ると人骨と思われるものが歩いていた。
(そう言えばいくつか人骨を見たがまさかあの骨がスケルトンとしてよみがえったのか)
スライムは何とか倒せるようになったがスケルトンを倒せるのか不安に思ったが避けて通れる道ではなかったので覚悟を決めて槍を振り回し叩きつける。運よくスケルトンの胸骨を破壊することが出来たと思ったらスケルトンはバラバラになって地面に吸収されて魔石とオーブを残すだけになった。
2日かけてそれなりのオーブを壊してスキルを覚えたはずだがまだまだ鑑定は使えていない。問題としては食料が少なくなってきたというのもあるが一番は水がない。
終わりが見えないということで食料はかなり節約していたがのどの渇きは止めることが出来ず水筒の水が無くなった。
よく見るとスライムはプルプルしてゼリーのようにも見えた。覚悟を決めてスライムに飛び掛かり周りの部分にかぶりつくとスポーツ飲料のような味がして喉の渇きが癒せた。
暫く体の観察をしたがお腹を壊すこともなく済んだのでもう少し何とかなると分かった。
安心できる材料が増えたことで一息ついていると大きなネズミのような魔物も見つけることが出来た。これを食べることが出来るなら食料の問題も解決することになる。
慎重に大ネズミに近づき槍で突くと心臓に当たったのか魔石とオーブと肉を落とした。
思わずガッツポーズを取ったが火が無いことに気づいた。ゴミを漁り木材を見つけるとナイフで形を整え棒を作り何とか火を起こせた。
手に入れた肉を焼いてみると塩味もしないが肉の味は感じられお腹も膨れた。
閉鎖空間の可能性を考え火は極力使ったら消すようにしてオーブを見つけては手当たり次第に破壊していった。
1週間ほどしてスケルトンから手に入れたオーブを壊すと入ってきた何かが大きくなった感じがしたので試しに「鑑定」と言うと持っている槍のことが分かった。
ようやく鑑定が出来るようになったことに喜んだ。
試しに手に持っているもう一つのスケルトンのオーブを鑑定すると観察のオーブであることが分かった。
スキルーブ『観察』:対象の特徴を見極めやすくなる。繰り返し使うことで識別にランクアップできる。
(観察のオーブを何個も使ったから鑑定に進化したってこと? 確かにスライムやスケルトンの攻撃を見てよけやすくなった感じはしていたけどこれもスキルの効果だったのかもしれないな)
試しに自分の鑑定をしてみた。
『深井獅琉 HP 8、MP ∞、攻撃 12、防御 8、敏捷 12、魔力 34、知力 41、運 4
所有スキル:N不快P U不壊P S腐界A R浮塊A R付加意A R鑑定A S無限収納A N水魔法A N闇魔法A』
ステータスが成長しスキルが増えていた。ただ前半の5つはどう見ても『ふかい』と読めるので元々持っていたスキルかもしれない。ただどんなことが出来るのか分からないので鑑定結果のスキルの部分に意識を集中するとスキルの内容も分かるようになった。
N不快P:周囲の者を不快にする。範囲は任意だが操作は訓練が必要
U不壊P:通常の攻撃などでは破壊不可。無意識でも常に発動しているためダメージを受けることはない
S腐界A:周囲に腐敗の魔力を出すことができる。範囲、方向は任意
R浮塊A:任意の物を浮かばせる事ができる
R付加意A:所持する能力を他の物へ思い通りに付加できる
R鑑定A:対象の詳細なステータスを確認できる
S無限収納A:生物以外を無限に収納できる
N水魔法A:水を生成し攻撃できる 威力は魔力に由来
N闇魔法A:闇を生成し敵の行動を阻害できる 相手との知力の差で成否を判定
僕がダメージを受けない理由がようやくわかった。おそらく2つ目のスキルの不壊があったのでダメージを受けなかったのだろうと思う。攻撃では傷つかないということなのでもしかしたら絡め手のような攻撃だとまずいかもしれないけどある意味無敵だということになる。
例えば溺死や餓死などは攻撃ではないので死ぬ可能性があると理解した。
魔物の攻撃では死なないと分かったのでかなり安心できた状態で魔物を倒すことが出来るようになった。
スライムを鑑定すると
『スライム:不定形生物。HP 3、MP 1、攻撃 5、防御 2、敏捷 1、魔力 5、知力 2、運 9
スキル:吸収 溶解 体当たり、微毒
ドロップ:収納5、魔法1、空1、水2、ポーション1』と出た。
「ちょっと待って、スライムに負ける僕の運ってどういう事? おまけに微毒? 水代わりにかなり食べたけどこれも不壊のおかげなのかな? そう考えると僕って有能なんだなあ。それにしてもドロップの確率まで分かるんだな。多分数字の部分の合計が10になるから割合だと思うけど」
スライムの鑑定結果を見て一喜一憂していた。
『スケルトン:不死体。HP 6、MP 0、攻撃 8、防御 3、敏捷 1、魔力 2、知力 2、運 5
スキル:蘇生 剣術
ドロップ:観察4、魔法2、空2、骨1』
『ラット:四足魔獣。HP 5、MP 4、攻撃 6、防御 5、敏捷 9、魔力 7、知力 3、運 4
スキル:噛みつき 穴掘り 引っ掻き
ドロップ:肉3、空4、毒薬2、皮1』
壁を鑑定したら『ダンジョンの壁』と出たのでここがダンジョンであることは間違いなかった。
自分がここで死ぬのは餓死と脱水以外ではないと分かったので自分のスキルを使いながら魔物を倒しオーブを集めて行く事にした。
スライムやスケルトンが落とすマジックオーブは水魔法だけかと思ったらランダムでN火魔法A、N風魔法A、N土魔法A、N光魔法Aも覚えることが出来た。
スキルや魔法は使い続けることでもランクが上がるようで無限の魔力を使って魔法を乱射して魔物を倒していく。
火水風土光闇の魔法は使っても問題なかったがスキルの腐界を使った瞬間失敗したと思った。
身に付けている服や手に持っていた槍もどきが全て腐って粉々になってしまった。幸いお金やバックなどは無限収納に入れていたので無事だった。
回りに居た魔物は腐り落ちてゴミの一部も異臭を放つ状態になっていた。
(無差別に攻撃するのには向いているかもしれないけどスッポンポンになってしまうのはまずいしよく考えると僕の不壊が無かったら僕も腐っていた可能性もあるのか? 所謂地雷スキルって奴だろうけど今後は気を付けよう)
その後ゴミの中にあった服などを集めて何とか現代人の格好になったのでこれも内容が分かった付加意で不壊を服など身に付けている物に付与して腐界を使った場合の保険を掛けておく。ここの魔物を倒すことで肉や水の心配はしなくて済むのでひたすら魔物を狩り続け魔法の鍛錬を行っていった。
ステータスは行動した内容で上昇するようなので傷つかない体を生かして物理攻撃が有効なスケルトンなどは敢えて殴ったり蹴ったりして体を鍛えることにした。




