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数日ゆっくりして面白そうな依頼でもあるかとギルドにいくと受付嬢がものすごい速度で駆け寄ってきた。
「シリュー様、折り入ってお願いがございます。今お時間よろしですか」
質問しているが反論を許さない勢いと表情だったので促されるまま応接室に連行された。
「実は一昨日ある貴族の方から依頼が出たのですが出来るだけ急いでクリムゾンフィッシュを捕まえてほしいということなのですがお願いできませんでしょうか? 」
開口一番依頼を受けたがクリムゾンフィッシュのことを何も知らないのでとりあえず確認してみる。
「確認なんだが急ぎというがどれぐらいの余裕があるんだ。そもそもクリムゾンフィッシュを知らないし生息場所への移動も考える必要がある。移動に3日かかるのに明日までにと言われても無理があるだろう」
「申し訳ございません。何分慌てていた物で説明を忘れておりました。まず納品期間ですが3ヶ月以内となります。それから生息場所ですが王都から南に馬車で10日程の火山内の溶岩の中に生息しております。捕獲後は準備しております専用の容器に入れて持ち帰っていただければ輸送の問題は無いかと思います」
「捕獲と言うことは生きたまま持ち帰る必要があると思うけど溶岩の中のそいつをどうやって捕まえるんだ」
「過去の捕獲方法としては溶岩を冷やし行動範囲を狭めていき溶岩から飛び出したところを捕まえたとありますが如何せん半年以上かけて成功した方法で今回は難しいのです。これまで数々の依頼を熟してきたシリュー様であれば何とかしてくださるのではと思いお願いしているのです」
完全に手詰まりで俺に丸投げ状態だということが分かった。
「ちなみに報酬はどうなってるの? 違約金とか発生するなら受けないけど」
「それについては先方の貴族家とも話をして急ぐ代わりに失敗しても違約金は発生しないということになっており代わりに複数の冒険者に依頼を出すので先着1組の白金貨1枚の報酬になります。もし2番手だったとしてもクリムゾンフィッシュ自体が珍しいためギルドで金貨30枚で買い取らせていただきます」
報酬が1/3になるとは言えそれでも金貨30枚は破格だと思ったので引き受けることにした。
タワーシールドで飛んで行くことも出来たがチャミを膝に乗せるとモゾモゾしてくるので今回は馬車で移動することにした。
「シリューちゃん、先方は急いでいるんだからこの前みたいに飛んで行けば早いんじゃないの」
俺の膝に乗ろうとしているのかチャミから馬車の使用に対しても抗議が出てきた。
「確かに急ぎかもしれないが早すぎると移動手段を聞かれて困るから緊急時以外使わないことにした」
俺の言葉を聞いて仕方ないと諦めたようで馬車乗り場に向かっていく。
10日かけてアンリケの南端にある巨大火山の麓の村に着いた。クリムゾンフィッシュは火の精霊の幼体として有名でドワーフたちの中では好事家達が美しさや大きさを競っているらしく捕獲者がそれなりに居るらしい。
それでも捕まえるのは難しく成果を持ち帰れない者が多いらしい。
「ちょっと聞きたいんだがクリムゾンフィッシュを見たことはあるか? 」
村の宿の主人に聞いてみると大きさは20cmほどの真っ赤な魚でヒレの部分が炎のように揺らめいて居ると言って絵を見せてもらったがめちゃくちゃ金魚だった。
「今までの成功者から聞いた話では火の魔石を使っておびき寄せて捕まえたと言っていましたがそれなりの大きさの魔石でないと反応しないみたいですよ。だいたい人前には殆ど出てきませんからね。お客さんも捕まえに来たのなら帰りに見せてくださいね」
クリムゾンフィッシュが居る洞窟に行く前に火山に登って魔物の魔石を集めることにした。レッドボアやマグマスライムやファイアベアなどを倒して魔石を30個ほど確保した。ファイアマウスやレッドウルフなどの細かい魔石も一応回収していく。
洞窟の中に入ると激しい熱波が襲ってきた。慌てて風の壁を作り中を冷気で満たしていく。魔物が襲ってくるかと思ったが熱波の影響かほとんど魔物は居なかった。殆どというのは所々にある溶岩内にワニのような魔物が居て近づくと飛び出してきて噛みついてくる。頭の部分しか出さないので斬りつけても胴体は溶岩の中なので魔石の回収が出来ないので外で取ってきて正解だった。
洞窟の最奥につくと静まり返った溶岩の湖面が見えた。
早速釣り竿と糸に不壊を付与して魔石を括りつけて溶岩内に落としていく。
しばらくして反応があったので糸を上げてみると見事に魔石が無くなっていた。
試しに低ランクの魔石をつけてみたが本当に見向きもしないのか全く反応が無かった。
1日粘ってみたが全く釣れる気がしなかった。試しに怖禍威を溶岩に向けて放ってみたが驚いて飛び出すこともなくとりあえず休憩することにした。
翌日もチャレンジするが魔石を取られるだけだった。俺には釣りの才能は無いのかもしれないと思っているとチャミからの指摘に恥ずかしくなった。
「シリューちゃん、ずっと気になっていたんだけどエサの魔石は付けてるけど吊り上げるための針は付けなくていいのかしら? 」
エサである魔石を食べても針が無ければ吊り上げることなどできるはずもなく才能以前の問題だった。
チャミから縫い針を分けてもらい溶岩を使って熱し形を曲げて釣り針を作る。返しが無いので吊り上げるのは難しいかもしれないが感覚を掴んでいけば出来るようになるだろうと再チャレンジしていく。
針に魔石を括りつけて溶岩内に落としていくと先ほどより反応が分かりやすくなった。それでも魔石だけが取られてしまうが回数を重ねるごとに感覚が掴めてきた。
3日目の昼前には見事にクリムゾンフィッシュを釣り上げることに成功したが溶岩から引き揚げた瞬間に風の壁越しでも熱波を感じ汗が噴き出すほどだった。
ギルドから預かっていた専用の容器に入れると熱波が和らいできた。
容器の中のクリムゾンフィッシュを心眼で確認する。
『クリムゾンフィッシュ:火精霊(幼体) 炎を司る精霊の幼体で高熱を発し続ける。ヒレの形や色は蓄えている魔力により変化する』
攻撃力や魔力などが表示されないということはクリムゾンフィッシュ自体に攻撃する能力がないということだと分かった。しかしあの熱波はしっかり準備しておかないと火傷では済まないかもしれないと思った。
容器には水の魔法が付与されており熱波で燃えることはないが普通の物では溶けたり燃やされたりしてしまうだろう。
釣り上げる感覚は掴めたのであと数匹釣ろうかとも考えたが釣り上げたとて使い道がないので帰ることにした。
試しに異次元庫に入れてみたら生き物ではないと判断されたようで問題なく収納できた。
村の宿に泊まり主人に見せてやると驚かれた。
「お客さん、この短期間で捕まえるなんてすごいですね。それにこの尻尾のヒラヒラは見たことが無い大きさですよ。良いものを見せてもらいました」
翌日馬車に揺られながら王都を目指し帰る。
途中で魔物や盗賊などに出くわしたが護衛の冒険者が問題なく片付けてくれたので何もしなくて済んだ。
予定通り10日目の午後には王都に到着しその足でギルドに向かった。
「依頼のクリムゾンフィッシュを捕まえてきた。確認をしてもらえるか」
受付で声を掛けると驚いている。
「えっ、もう捕まえてくださったんですか? うわっ、本当にクリムゾンフィッシュですね」
「間違いないようだが依頼は達成で良いのか? もしかして他の冒険者が捕まえてきているか? 」
「まさか。万全の準備をしないと大けがをするから受けた冒険者の方もこの前出発したばかりですよ。間違いなく一番なので依頼達成です」
確かにあの熱波は装備なども含めて準備が必要だろうなと思いつつ報酬の白金貨を受け取り宿に帰った。
アリンケ大陸にもそれなりに居たので次の大陸に行っても良いかなと思いつつもギルドに顔を出すとエプロンおじさんが待ち構えていた。
(このおっさん仕事してないんじゃないのか)
俺を見つけると掲示板の方に連れて行って1枚の依頼書をはがして渡してくる。
「頼む。何も言わずこの依頼を受けてくれ」
差し出された依頼書にはロックタートルの捕獲とあった。
『ロックタートルの捕獲 報酬:金貨5枚
ロックマウンテンの洞窟内に生息している 』
ロックマウンテンは王都から南西に馬車で3日程で着くと言うが見え始めた山を見て依頼を受けたことを後悔し始めた。
「ちょっと聞きたいんだがロックマウンテンというのは見えているあの山のことで間違いないか」
「そうだべ、あんちゃんは分かっててこの馬車に乗ったんだべ」
遠目に見ても山肌にはいくつもの洞窟が見えておりどの洞窟に居るのか分からないロックタートルを探す必要があるということになる。
唯一の救いはロックタートルは相手を威嚇するため周りの重力を上げて動きにくくするらしいので近くに居るかの目安にはなる。
早速山を登っていくが近くに行くと更に込み入った地形であった。
そもそもロックタートルは直径20cm程度の球形をしておりボウリング玉ぐらいなのでちょっとした岩の隙間などに入り込まれると探すことが難しい。
魔物の気配を頼りに探そうとするがロックタートル以外の岩系の魔物も多くおり冒険者もそれなりに居るから怖禍威で刺激して重力を上げさせるわけにもいかない。
何を食べているのか生態も良く分からないようでひたすら込み入った洞窟を回っていくしかない。
一月程探し回り全く手掛かりがなかったので浮塊で邪魔な岩を持ち上げようとも思ったがチャミに止められた。
「シリューちゃん、いくら見つからないからって短気を起こして他の人に迷惑掛けちゃダメでしょ」
見つけた魔物は簡単に倒せていたので何かに使えるかと思い異次元庫に入れておいた。
大きな岩が絶妙なバランスで重なっている場所を見つけた。その一角から地下へ行ける洞窟があったので入って行くとひんやりして過ごしやすい場所に出た。
岩の隙間の縦穴を足場を確認しながら降りていくと何となく体が重くなった感じがした。
(もしかしてこれは当たりの洞窟か)
手ごたえを感じて更に降りていくと黒くて丸い物体を発見したので心眼で確認した。
『黒岩:特殊な重い鉄分が多く含まれ鍛錬などに使われることがある』
持ち上げてみると確かに見た目より重かったが持てないほどではなかった。
(もしかしてこの岩のせいで体が重く感じてるだけでハズレなの? )
一抹の不安を感じながらも行けるところまで自然に出来た階段や坂を下りていくと更に体が重くなっていく。
何とか歩いているが重しを担いて歩いている感じでかなりきつい。
また黒岩が転がっていたため1つ1つ鑑定していくとロックタートルと出た。
『ロックタートル:土精霊(幼体) 土を司る精霊の幼体で周囲の重力を増やし外敵を退ける。周囲の振動に敏感で足音などを察知し威嚇してくる』
ボウリング玉というより黒いヘルメットのような形状をしていた。黒光りする表面はかなりの硬さがあると思う。試しに持ち上げようとしたが出来なかった。
大きな岩の一部を動かそうとしているようにピクリとも動かなかった。
精霊と言うことで生き物ではないので異次元庫にそのまま収納して持ち帰ることにした。
1匹捕まえたが体の重さは変わらなかったので他にもロックタートルが居るのかもしれないが持ち帰ったとしても重すぎて宿の床が抜けてしまっても行けないので余分には持ち帰らなかった。
降りてきた縦穴を登っていくが徐々に体が軽くなった感じがして体を鍛えるには良いのかもと思ったがわざわざロックタートルに頼る必要もないので忘れることにした。
ようやく岩場から解放され馬車に乗ったがどうやって渡そうかと考えた。
今は異次元庫に入れているが出した瞬間地面に張り付いたように重力が働いて動かせなくなってしまう。
(とりあえずギルドに戻ったら出す場所を聞いてから考えることにしよう)
馬車に揺られ途中の街や村でいろんな食事を堪能しながら王都に戻ってきた。
「解体場のおっさんを呼んでもらえるか? 依頼の品を持ってきたと言えば分かってもらえるよ思う」
ギルドについて受付で用件を伝えると慌てた様子でエプロンおじさんが走ってきた。
「おお、ボウズ、あんまり帰ってこないから流石のお前でも無理かと思ったぞ」
あまりの言い方にイラっとしてそのままロックタートルを異次元庫から出した。
ものすごい音を立てて床板が壊れ地面にめり込んでいる。
「これが依頼されたロックタートルだ。あとはあんたが勝手に運んでくれ。それと報酬はどうした」
そうなるだろうと思っていた状態になったが気にせず報酬を催促するとエプロンおじさんは慌て始める。
「なんでそのまま出すんだよ。出すなら逆さまにしないと運べないじゃないか」
「は? 逆さまじゃないと運べない? どういうことだよ」
「ロックタートルはひっくり返すと重くならないじゃないか。腹の上にのせたものを浮かせることが出来るようになるから荷運びに使えるだろ。解体場に大型の機材を運び込むのに使いたかったからお前たちに頼んだんだぞ」
「ちょっと待て。ひっくり返すと重くなくなるなんて聞いてないぞ。おまけにどのあたりに居るのかも聞いていなかったから山の洞窟をしらみつぶしに回ったんだからな」
「えっ? ロックタートルの居場所、言ってなかったっけ? 岩が折り重なった場所に居るって有名だからお前らも知ってると思ってた。ただ出てくる魔物が面倒だからお前たちなら大丈夫だろうと思って頼んだんだけど」
衝撃に真実を告げられ確かに場所や捕獲方法が知られていれば報酬があの金額なのが頷けた。事前に詳しく調べておけばあんな無駄な時間を過ごす必要もなかったと後悔した。
それでも八つ当たり気味に反論した。
「そんな常識、俺たちが知るわけがないだろう。ちゃんと説明していなかったおっさんが悪いんだよ。ここの修理代もおっさんが払っとけよな。それから早く報酬を寄こせよ」
納得いかないと不満顔のおっさんだったが渋々金貨5枚を渡したのでひったくったように受け取りギルドを後にした。




