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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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 シリューside


 翌朝俺たちは馬車乗り場に居た。急いでランクを上げようと思っていないが紹介状まで貰ってしまったので王都であるアンチュウに行く事にした。

 王都までは目と鼻の先と言うことで早便は使わず普通の馬車を選んだ。


 特にトラブルなどもなく夕日が沈むより早く到着した。流石に王都というだけあって入るためには身分証のチェックがされていた。


「よし、次の者。シリュー、Cランクの冒険者か。王都には何の要件だ」


「オンバのギルド長から王都のギルド長への手紙を届けるために来た」


 懐から紹介状を出して見せると差出人と宛名を見て俺に返した。


「そっちの女は? 」


「こいつはチャミと言って俺の家族だ。身の回りの世話をさせている。冒険者ではないので身分証はない。これは通行料だ」


 銅貨を出すと問題なかったようで通ることが出来た。


 門の近くで教えてもらったおススメの宿に泊まれたので部屋で寛いでいる。


「シリューちゃん、ウチは呼び出されたモンスターで家族じゃないわ」


「俺は多くの人間を殺し元の姿とは変わってしまったのだからある意味モンスターだ。そんな俺が呼んだ物なら家族と言っても良いんじゃないか。俺が元々住んでいた世界では飼っていたペットも家族と呼んでいたぞ」


「むぅーー。ウチはペットじゃないわよ。ちょっと嬉しくなったのに最後に落とすなんてひどいわよ」


「あんまりうるさいと膝枕させないぞ」


 俺が膝枕をしてもらっているのにさせていると偉そうなことを言ってチャミを黙らせゆっくりして食事を待った。


 王都とは言え野菜などは少なくやはりサボテンを加工したものに何かの肉を焼いたものがほとんどだった。

 それでも色々な調理法を工夫しているようで美味しかった。

 料理の味付けが酒に合うとかで宿泊客以外にも料理と酒を目当てに多くの客でにぎわっていた。

 食堂のあちこちでは飲み比べが始まり店員たちもお替りの酒を運ぶのに走り回っていた。

 食事をとりながらチャミが食堂の様子を見ている姿が女将さんを思い出させる。

 女将さんと距離が縮み始めたころ『食堂が賑わうようにしたい』と言っていた姿に重なった。


 俺は胸が苦しくなったので先に部屋に戻ることにした。


「チャミ、俺は先に部屋に戻る。もう少し料理もあるだろうから楽しんでいいからな」


「シリューちゃんが添い寝してほしいだろうからウチも戻る。料理は覚えたから自分でも作れる」


 今まで添い寝を頼んだことなどなく勝手に俺の布団に潜り込んできているのはチャミの方だがここで言い合いをしても解決しない。

 実害はないので聞き流すに限る。部屋に戻るとさっさと寝ることにした。


 寝る時は居なかったはずのチャミが当たり前のように俺のベッドに寝ている。

 俺は無視してベッドから出ると着替えて出かける準備をする。


「シリューちゃん、家族に対しておはようのチューは無いの」


「俺の家族にはそんな習慣はない。全くどこでそんなことを覚えたんだ。この世界にもそんな習慣があるのか? 」


 朝から一騒動あってから目的のギルドに行く事にした。


「悪いがギルド長に手紙を届けに来た」


 オンバのギルド長から預かった紹介状を渡す。裏を見た受付嬢は驚きそのまま俺たちをギルド長の部屋に連れて行った。


「ギルド長、失礼します。オンバのカトスラカジー様からの手紙を持った冒険者が来ております」


「いいぞ」


 部屋から了承の声が聞こえたので中に入る。上等な机に向かっているのは額から頭頂部はツルツルなのにサイドの髪はフサフサを越えてゴワゴワした感じの白髪が生えていい年の筈なのになぜかタンクトップを着た筋骨隆々の爺さんが居た。


 受付嬢が手紙をギルド長に渡すと中の手紙を確認する。「ほー」とか「へー」とか言いながら読んでいると俺をジッと見つめてきた。

 特に疚しい事はしていないので普通に見返しているとしばらくしてギルド長が笑い出した。


「がっはっはっは、確かにこいつは大物じゃ。ワシの威圧をまったく気にしておらん。こんなのをEランクにした馬鹿はどこのどいつじゃろうな」


「ところでランクを上げるというか確定させてくれとオンバのギルド長は言っていたが試験か何かあるのか? 」


 気になっていたので聞いてみる。


「普通の昇格であれば依頼を受けてポイントを貯めて試験を受けることで昇格できる。飛び級の場合はそこにギルド長の審査があり各国の本部での承認を受けて昇格となる。ただおぬしのようにワシの威圧をものともせん奴がBランクなわけもなくAランクでも過小評価と言っても良い。ただSランクにするには王の判断を仰ぐ必要があるし強さだけでは上げられん。ワシの権限の限界のAランクで我慢してくれ」


「Aランクか、上がってもBランク程度だと思っていたから上がりすぎな気もするが別に何か制限があるわけでもないだろうからどうでも良い」


(俺を見ていたのは威圧していたのか。えらく目力の有るおっさんだと思っていただけだったがアレでAランクに上がるのか。試験とか本当にしなくていいのか不安になってきたな)


「もしお前さんが気に入らないからと言って暴れてもワシでも止められんじゃろう。自慢ではないが現役時代はSランクだった。それぐらいお前さんは強いということだ。ちなみに教えておくとオンバのカトスはAランクじゃったが手に負えんとワシに泣きついてきたんじゃぞ。がっはっはっは」


 そんなネタバラシしていいのかと思ったが別にどこかで話すこともないだろうからと席を立つ。


「それじゃあ、俺はAランクと言うことで良いんだな」


「受付には言うておくから新しいカードを受け取ったら帰って問題ない。絡んでくる奴がいるかもしれんが殺さん程度に収めてくれ」


 人のことを何だと思っているのかとちょっとイラっとしたがシャンバリアでは大量虐殺者であることを思い出した。


 思ったより早く用事が済んだのでAランクのカードを受け取り依頼の貼りだされている掲示板を確認する。

 オンバでミスリルの剣を買い取った件で懐が少し寂しくなったのでしばらくアンチュウで依頼を熟すことにした。

 掲示板で見てみるとダンジョンという文字が見当たらない。受付で聞いてみると火山の影響で地中に魔力が溜まらずダンジョンが作られないからだろうと言われている。その代わり空気中に魔力が放出されるので魔力を吸収した魔物が狂暴化したり強化されたりするのでシャンバリアの魔物とは強さが変わると聞いた。


 アンチュウの近くには火山がいくつもあってマグマに運ばれてきた金属成分が集まり鉱山も至る所にあるが山の上から魔物が降りてくるらしく定期的に駆除する必要があるらしい。

 その魔物も火や土の属性を持っている物が多くドワーフという種族も火や土の属性を持っている者が多く水や風の属性を持っている者は殆ど居ないらしい。


 マグマスライムやファイヤリザードやロックゴーレムなどがその辺の岩場や山の裾野に当たり前に出てくるという。

 この辺りの冒険者は斧やハンマーと言った武器で力任せに叩き壊して倒しているという。


(何とも脳筋全開な戦い方だろう)


 受付で聞いた話の率直な感想だった。


 マグマスライムの核以外は錬金術の素材としても優秀らしく買い取ってもらえる。ミスリルの剣に水の魔力を纏わせ核を突き刺すと簡単に周りの粘液部分の回収が出来た。

 ファイヤリザードの皮や爪などは属性付きの武器や防具を作るのに必要らしい。同じく水の魔力で首を斬りつけると抵抗なく首を落とせた。


 ロックゴーレムの岩は建材として優秀らしいがある程度の大きさがないと買ってもらえない。核の部分が個体によって違うので普通なら叩き壊していくか切り刻む必要がある。しかしシリューは心眼で核の位置が分かるのでほとんど無傷の岩が手に入る。


 ファイヤリザードについては狩ったそばからチャミが解体してくれるので殆ど手間いらずで1日で50体以上の魔物の素材を手に入れることが出来た。


 ギルドで買い取りを頼むと量や素材の状態で驚かれた。心眼で美味しいと分かったので取っておいたファイヤリザードの肉も売って欲しいと言われたので少し残して売ってしまった。


 懐も温まったので武器屋に行ってみることにした。王都なので良い武器があるのではないかと思ったからである。

 ミスリル以上の武器があるかと武器屋を巡ったがほとんどなくミスリルの武器が有っても高くて買えなかった。


 理由を聞いてみるとミスリルを加工できる鍛冶師がいないらしく城のお抱え職人なら可能であるが街にいる職人では無理という事だった。

 鉱石やインゴットとしてのミスリルは高価なりに買えないほどではないが武器や防具になると金額が跳ね上がるらしい。


 オンバの爺さんは何気にすごかったのかと感心した。


 それなら金も貯まったので剣を戦闘で活用するためにスキルオーブを買いに行った。

 何個も買ってスキルを成長させようと思ったらノーマルランクの剣術のスキルでも昨日の稼ぎで買えなかった。ダンジョンが無いこの大陸ではスキルオーブが超貴重で輸入するしかなく輸送費で値段が高騰しているらしい。そもそもスキルオーブをいくつも使ってランクを上げようとする人間は居ないと店主に呆れられた。


 そう考えるとスーガラキの城の地下でオーブを使いまくったのはすごいことだったのだと思った。

 スキルが無い今の状態でも普通に戦えているのでそのうちお金をためて剣術のスキルを買おうと心のメモに書いた。

 今までは死なない程度の食えればいいかと思っていたがお金も必要だろうからと稼ぐことにした。

 折角Aランクになったので高額の依頼を受けまくる。


 『ファイアドラゴンの素材(革、爪、牙)を提出   報酬:金貨10枚

 火山の頂上近くに住んでいる。指定以外の部分は状態によって買取を検討する』


 王都から東に馬車で4日ほど進んだ場所に火山があり頂上付近にいるとギルドで情報を得たので早速向かう。最寄りの街まで4日かけていくがその先は岩場と言うことで徒歩の移動となる。

 裾野は岩がゴロゴロしており歩きにくかった。時々岩に混じってロックゴーレムやロックリザードも居たがミスリルの剣の前にはただの素材であった。


 岩場を通り山を登り始め3日かけて頂上付近まで来たがドラゴンの姿は見えない。

 情報が嘘だったのかと思ったが周りを探してみると大きな洞窟があった。何か魔力の反応があったので入って行くと広い空間で寝ている赤いドラゴンがいた。

 『ファイヤドラゴン:竜種 

 HP 681、MP 822、攻撃 317、防御 329、敏捷 409、魔力 504、知力 217、運 68 

 スキル:SファイヤブレスA S体当たりA R炎吸収P R打撃無効P』


 心眼で調べるとファイアドラゴンと出て剣の攻撃が効くとわかったので素材を傷つけないように斬首一撃で仕留めた。

 下手に素人が解体をしてドラゴンの素材を無駄にしたくなかったので異次元庫に入れてそのまま持ち帰ることにした。

 目標の素材は手に入れたので飛んで帰っても良かったが折角なのでその辺の魔物を狩りながらのんびり帰った。


「依頼のファイヤドラゴンを狩ってきたんだが解体を頼みたい」


 冒険者ギルドの受付で伝えると驚いていた。


「えーっとドラゴンはどこに有るんでしょうか」


「俺のスキルに保管できるものがあるからそこに入れている。どこに出せばいいんだ」


「少々お待ちください」言ってどこかに行ったと思ったらギルド長に負けないゴツイおっさんがエプロン姿で出てきた。


「お前がファイヤドラゴンを狩ったってボウズか。解体はギルドの裏でするからそっちに出してくれ」


 エプロン姿のおっさんに付いて行くと他にも魔物の解体をしている男たちが忙しくしていた。


「ファイヤドラゴンならこれぐらいの広さで十分だろう。よしボウズこの辺に出してくれ」


 言われた場所にファイヤドラゴンを出した。


「他にもいろいろ狩ってきたからついでに解体してくれるか。うまそうな肉は持って帰りたいんだが」


「とりあえず出すだけ出してみろ。手の空いた連中が居れば解体してやらんこともない」


 ロックベア、ファイアフォックス、ラージワームをそれぞれ10匹ずつ出すと止められた。


「ちょっと待て。まだあるのか? これ以上は他の仕事が出来なくなるから受け付けられない。どうしてもというなら明日出直してくれ。えーっとこれとあれとそれが10匹とでかいのが1匹と、これが預かり証になるから明日また来い。」


 受付でチャミが解体していた素材を買い取って貰い宿に戻った。

 翌日ギルドに行くと昨日俺を対応した職員が覚えた居たようでエプロンおじさんを呼んできてくれた。


「おう来たなボウズ。おめえギルド長の威圧を物ともしなかったらしいな。どおりでファイヤドラゴンをほとんど傷なしで倒せるはずだな」


 背中をバシバシ叩かれて傷は出来てないと思うが地味に痛かった。


「ファイヤドラゴンに関してなんだがきれいな状態で持ち込まれたから依頼主に確認したら丸ごと全部を白金貨2枚で売って欲しいと言ってきたがどうする」


「あー、それで良い」


「それと持ち込んだ別の魔物だがあれは食うには向いていない。ただベアやフォックスの毛皮は高級品で高値になる。ワームの牙は石材を削り出す工具に加工できるからそれなりの需要がある。毛皮を持ち帰ってそっちの嬢ちゃんにプレゼントするってんなら2匹分で十分だと思うぞ」


「この大陸で毛皮を着てたら暑いだろう。全部買取で頼む」


 それぞれの買取金額などを書いたメモを渡して受付で金を貰うように言われた。

 受付にメモを渡し買い取り代金の白金貨2枚と金貨18枚を受け取り宿に戻った。


「シリューちゃん、女性は季節に合わない物でもプレゼントは嬉しいのよ」


 チャミから催促されたので宿に着く前に目についた腕輪を買って渡した。喜んで受け取り当たり前のように不壊を付与させられた。


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