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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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 宿に戻り食事を済ませた後は1日中歩き通しだったこともあってなんだか疲れたのでさっさと寝ることにした。

 結局街を見て回るつもりが武器屋を巡って何も見ていなかったので今日はうまいもの探しをすることになった。

 何かの肉の串焼きがあったので食べてみるとうまかった。程よい歯ごたえの肉で何の肉かは分からなかった。


『ワーム肉の串焼き:特殊な調理方法を経て焼くことで臭みもなく独特な食感で人気がある』


 心眼のレベルを上げるため確認をしてみたがちょっと後悔してしまった。ただ味はよかったので開き直ることにした。その後もスープ料理や焼いた肉を濃い味をつけてスライスしたサボテンと一緒にパンに挟んだ物など街の人に聞きながら色んなものを食べて回った。


 流石に俺はお腹がはちきれそうになってきたので休憩していると脇差ぐらいの総ミスリルの剣のことが気になってきた。

 部分的に使った鉄剣でさえあの切れ味だったのでどんな感じになるのか試してみたくなった。


「チャミ、ちょっと腹ごなしに街の外に出て魔物を狩りに行こう」


 近くの街門から外に出て魔物が居そうな岩場を目指す。岩場には魔物の気配があったので鉄剣を異次元庫に入れてミスリルの剣を取り出す。

 鞘から抜き魔力を通すと少ない魔力で刀身全体が淡く光り重さをほとんど感じなくなった。さらに魔力を送り込んでみると刀身が伸びたようになり鉄剣と同じぐらいにした。今の状態でも鉄剣に流し込んでいた魔力の1/10もないので使いやすいと感じた。


 岩に擬態したような魔物も居るので心眼で周囲を確認していくと大きな岩の下にロックリザードが潜んでいた。一気に近づき剣を振り下ろすと全く抵抗を感じずロックリザードを両断し地面も切り裂いてしまった。

 豆腐に包丁を当てたような感じで加減を間違うと色んなものを切り裂いてしまうと思った。


 試しに各属性の魔力を通してみたらそれに合わせ刀身の色が変わり魔法剣のようになった。

 火属性では断面が焼けこげ風魔法では更に切れ味が増していた。

 楽しくなってついつい魔物を狩りすぎてしまったが丁度いい時間になったので街に帰ることにした。


 宿に着いて部屋の鍵を借りようとしたらギルド長からの呼び出しがあると宿の亭主から教えられた。

 何の要件なのか分からないがとりあえず行ってみる。受付で名前を伝えギルド長に会いたいことを伝える。


「俺はシリューだ。ギルド長からの呼び出しがあったとさっき聞いたので来たんだが今会えるのか? 」


「あっ、伺っています。お部屋に案内いたしますので付いて来てもらっていいですか? 」


 受付嬢がなぜか少し怯えたような表情で俺たちを案内してくれる。

 応接室かと思ったらギルド長の部屋に直接連れて行かれた。


「ギルド長、シリュー様が来られています。入って貰ってよろしいでしょうか」


 ドアをノックして用件を伝えると「入れ」と短く返事が聞こえた。


 ギルド長は机で書類を整理していたが俺たちをちらりと見て手の動きを止めて手でソファーに座るよう促す。

 机から俺たちが座っている反対のソファーに座ると用件を伝え始める。


「実は君たちに来てもらったのはランクの再審査がおかしなことになっている可能性があるためだ。昨日ゴブリンの耳や魔石を持ち込んだ時に確認したランクはEだった。その前日に『鉄の意思』から聞いていた情報と合わせると食い違いが出てくる」


「ちょっと待ってくれ。鉄の意思ってのはなんだ。俺は鉄と話したことが無いがドワーフは聞こえるのか? 」


「すまない。鉄の意思というのは護衛依頼を受けていた4人組で君が助けた冒険者のパーティーの名前だ」


「あー、そうなんだな。話の腰を折ってすまない。それで何か問題でもあるのか。俺は確かに乗っていた馬車が盗賊とゴブリンの挟み撃ちにあったからゴブリンを蹴散らしただけだし間違いなくEランクだ。」


「別にEランクでも魔物を倒せるのなら倒していいし報酬もきちんと払うから問題はないのだが能力に見合ったランクを与えておかないと冒険者同士で誤解を生む可能性がある。そこでランクを上げようと思い失礼だが君たちを鑑定させてもらったが名前しか分からなかった。率直に聞くが君たちはどれほどの実力なのだ」


「実力と言われても誰かと競い合ったこともなければ何かの基準があるわけでもないだろうから何とも言えないが俺たちはシャンバリアから海を渡ってこの大陸に来た。シャンバリアではBランクではあったが大陸によって生息している魔物が違うからと再審査を受けてEランクになった。だから俺の強さは良く分からん」


「実は君が助けた鉄の意思は全員Cランクの冒険者でそれもBランクが近いと言われている者たちだ。そいつらが口をそろえて『4人で戦っても勝てる気がしない』と言っていたんだ。Bランクに上げたいと思っているが単独のギルド長の権限ではCランクが上限になっているので申し訳ないが王都のギルドで最終的なランク確定を行ってもらいたい」


 俺としてはどうでも良かったがギルド長からどうしてもと頼まれてしまったので暫定のCランクのカードと王都アンチュウのギルド長に宛てた紹介状を受け取って宿に帰った。



 オンバ冒険者ギルド ギルド長 カトスラカジーside


 この辺りでは有名な鉄の意思の4人がボロボロの状態でギルドに入ってきた。最近街道を行く馬車を襲い護衛の冒険者も返り討ちにしていた盗賊を倒したという。

 騎士団の詰め所で確認してもらった証明書も持って来ているので間違いないと思うがもうすぐBランクになるだろうと言われている鉄の意思が苦戦するような盗賊が討伐されたのは幸いだった。


 安心していられたのはここまでで鉄の意思から驚きの情報が告げられた。

 盗賊の対応中にゴブリンの集団が襲ってきたが乗客の一人が剣1本であっという間に倒してしまった。数は28匹だったが一瞬で片付いた。剣を振っているのは分かったが残像がどうにか分かるほどの動きで鉄の意思が4人がかりでも勝てないと思ったらしい。


 そのうちゴブリンの討伐報酬を受け取りに来るだろうからと言って鉄の意思は帰って行った。

 銀髪の人族の冒険者でメイドを連れているということを受付に伝え少しでも情報を集めようと思った。

 翌日には銀髪の冒険者シリューが来たというが冒険者のランクがEだという。

 何かの間違いではないのかと思ったが受付も私からの指示があったので数人で確認していたらしい。


(30匹近いゴブリンを一瞬で切り倒しもうすぐBランクの鉄の意思が完敗を宣言するほどの男がEランクの筈がない。事情を知らない冒険者が低ランクと揶揄って大けがを負わされても困る。一度会って話を聞く必要がある)


 門番の兵士に聞くと街から出ていないという事だったので泊まっている宿を探しギルドの来てもらうよう伝言を残させる。


 宿を見つけられなかったと夕方に報告を受けたがEランクと言うことで安宿を回っていたらしく翌日は高級宿から回るよう指示を出した。

 案の定職員の一人が最高級とは言わないがそれなりの値段のする宿に泊まっていたので亭主に伝言を頼んできたと帰ってきた。

 ランクで判断する奴が居るので能力に合ったランクを与える必要がある。ただ私一人の権限ではCランクまでしか与えられないので最終的には王都のギルドに頼む必要があるだろうと頭を悩ませた。


 夕方にはシリューが来たのでこっそり鑑定を掛けてみたが名前しか分からない。おまけに一緒に居るメイドも名前だけ。何か鑑定阻害の魔道具を身に付けているのかと思ったがそれなら名前すら分からないはずなのでおそらく力量の差で分からないのだろうと思った。

 怒らせないようにしかしギルド長としての威厳は守りつつ話をすると理解してくれたようで事情を聞かせてくれた。

 しかし話を聞くうえでどこかのギルドが手抜きの仕事をしたのが原因だと分かるので今度抗議を入れようと思った。早速紹介状を書いて暫定ではあったがCランクのギルドカードも渡した。


 受付の責任者の職員がお茶を持って来て「大丈夫ですか」と聞いてきた。そもそも斥候職だった私がギルド長になっても威厳を出すだけでも無理をしているのに怒らせたら間違いなく死ぬような相手と話をするなんて出来るわけないじゃないか。誰か変わってくれと心の中で叫んで「問題ない」と返しておいた。



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