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フカイのフカイな異世界の旅  作者: アングリー尺損


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22/23

 坑道を出ると丁度帰りの馬車が着いたようで乗る人間が居ないか声を掛けていた。俺とチャミは乗ることを伝え馬車に乗り込んだ。

 他にも採掘した鉱石を売るために街に戻る者や食料などを買いだすために一旦街に行くもの等が乗り込んで来ると丁度良い時間になったので出発し夕方過ぎにはハギャシの街に着いた。


 ギルドに行ってEランクの冒険者証と昨日採掘した魔鉄鋼と今日採掘したミスリルを買い取りカウンターで出すと量や鉱石の種類に受付は驚いていた。


「なんであんた達みたいな低ランクの冒険者がこんな貴重な鉱石が掘れるのよ。おかしいじゃない」

 受付嬢が騒ぎ出したことで周りにいた冒険者も近づいてきてカウンターに置かれた鉱石を見て驚いていた。


「おいおいあの鉱石の色はミスリルじゃないのか。あそこの鉱山でミスリルが採れるなんて聞いたことないぞ」


「何を言ってるんだ。あるにはあるがかなりの高ランクの冒険者じゃないと行けないような奥まで行く必要があるんだよ」


「そうそう、でも奥に行ったからと言って必ずミスリルが掘れるとは限らないから高ランクの冒険者はわざわざ採掘せずダンジョンで魔物を倒した方が実入りが良いからそっちに行くんだよ」


 自分の言動でギルドが騒然としていることに気づいた受付嬢が俺たちを応接室へ案内してきた。


「ちょっとあんた達、この鉱石を持ってちょっと奥まで来て頂戴」


 出していた鉱石を異次元庫に入れ直して言われるまま部屋に入って待っていた。

 暫くすると身なりのいいおじさんとそのおじさんの腰巾着かと思えるおっさんが部屋に入ってきた。


 俺たちの前のソファーにおじさんが座り話しかけてきた。


「先ほど受付から聞いたのだが君たちはミスリルの鉱石を掘ってきたのは本当かね」


「ああ、間違いない。それなりの量になるがすべて買い取ってくれるのか? 」


 異次元庫からいくつかの鉱石を取り出し机の上に並べたがおっさんの方が怒鳴ってきた。


「あんだ貴様は。ギルド長に向かってそんな口をきくとは無礼だろうが」


 面倒なおっさんだなと思っていたがおじさんことギルド長は俺が出した鉱石を見て驚いていた。

 何やら虫メガネのようなものを取り出し調べているようだったが確認が終わると話しかけてきた。


「どれも素晴らしく質の高いミスリル鉱石だった。すべて買い取らせてもらう。魔鉄鋼もあるようだがそちらも買い取らせてもらうから後で倉庫に出して計量してくれ」


「分かった。それじゃあ俺たちは鉱石を倉庫に出したら帰らせてもらうが問題ないな」


 ソファーから立ち上がろうとするとギルド長が待ったをかけてきた。


「君たちの実力を見込んでこれからもミスリル鉱石を掘ってきてくれないだろうか」


「あいにくだが俺たちは鉱夫になりたくてこの街に来たわけじゃない」


 きっぱり断ると腰巾着のおっさんが顔を真っ赤にして怒り出した。


「さっきから聞いておればギルド長に対して偉そうに返事をしおって。亀様のような低ランクの冒険者は黙って言うことを聞いておれば良いのだ」


 おっさんの物言いが俺たちを物のように扱っていたスーガラキの王族に似て人を見下していると感じ思わず怖禍威を漏らしおっさんを睨みつけた。


 真っ赤だったおっさんの顔は真っ青になりガタガタと震え出しギルド長は辛うじて平静を保っていたが

「無理を言ってすまなかった。ワシ達も貴重な素材が手に入るのではと思って君たちの都合も考えずすまなかった」と頭を下げてきた。


(マズイ、つい怖禍威が出てしまった)


「いや、分かってくれたらそれでいい」


 返事をして応接室から出ると倉庫の場所を聞いて鉱石を出して計量してもらい金を受け取り宿に向かった。



 ハギャシ冒険者ギルド ギルド長 ムオサナ side

 ワシはこの冒険者ギルドの長としてそれなりにしていたし冒険者としてもAランクとして活動していたこともあり大概のことは驚かなくなっていたがこの日のことだけは忘れることはないと思う。

 その日の夕方も大きな問題はなく仕事が終わるかと思っていると受付の方から騒がしい声が聞こえてきた。

 何事かと思っていると普段は大人しい受付のメロラインが髪を振り乱してワシの部屋に駆け込んできた。


「ギルド長、大変です。ミスリル鉱石が持ち込まれました」


 メロラインの言った言葉に一瞬理解できなかったが近くの鉱山から掘り出された物だと分かり驚いてしまった。


「とりあえず話を聞くから応接室に連れて行くように」


 落ち着かせるため深呼吸をしてから副ギルド長のヘッピリンを連れて応接室に向かう。

 そこには銀髪の男とメイド服を着た女が居た。どちらも人族で特に強者の雰囲気などはなくどうやってミスリル鉱石を掘りだしたのかと思っていた。


 彼らの対面のソファーに座り経緯を聞くとやはり近くの鉱山から掘り出したものだと言われた。魔物が出ない範囲で掘れるのは殆が鉄鉱石で稀に銀が出て運がよくても魔鉄鋼が1つ2つ見つかる程度だったはずだった。

 魔物が出る場所でも手前では到底ミスリルなど見つかる筈もなくまして机に置かれた鉱石は一目見ただけで明らかに純度が高くどれだけ奥で採掘したのか分からないほどだった。


 買い取って欲しいと言われたのでこちらとしては願ったり叶ったりなので問題なかったのだがなぜかヘッピリンが彼らに噛みつきだした。

 確かに人族ではあるがあの坑道を奥まで行けるのだからかなりの強さを持っていると分かるだろうにこいつは何をしているのかと呆れてしまった。


 馬鹿は放っておいてまずは鑑定用の魔道具でミスリル鉱石を確認すると『ミスリル鉱石:特級 高濃度の魔力が含有されている』と出てかなりの金額で取引されることはすぐにわかった。

 買い取る意思を伝えると帰ろうとしてきたので今後もミスリル鉱石を掘りだして貰おうと思い声を掛けた。これが掘れる場所ほどの奥にはワシでさえ万全の準備をして行かないとたどり着けないと分かっていたので出来るだけ丁寧に頼んでみたが断られてしまった。


 確かにこれほどの実力があればわざわざ鉱石を掘りださなくとも大きな魔物を倒し大金を手に入れることも出来るだろう。かなりのミスリル鉱石を掘って来てくれただけでもありがたいと思い諦めようとしているとここでもヘッピリンがしゃしゃり出てきた。


(こいつは相手の力量も分からないほど馬鹿だったのか?)


 相手の心証を損ねて売ってくれるはずだったミスリル鉱石を売らないとでも言われたらどうするんだと思い止めようとすると銀髪の男からものすごい圧迫感を感じる。


(現役時代に戦ったドラゴンでもここまでの圧迫感はなかった。やはりこの男はただものではない)


 意識を集中して堪えて男を確認してみるとヘッピリンを睨みつけている。

 当のヘッピリンはひっくり返り震えて動けないでいた。ワシは男に慌てて謝罪を述べると圧迫感が無くなり2人は返事をして部屋を出て行った。


 彼らが応接室を出て行った後もしばらくは動けないでいた。この原因になったヘッピリンは気絶していた。

 メロラインを呼んで彼らのことを調べさせるとEランクだと分かった。


(人族という事はシャンバリアから来たのだろうから再審査の結果のランクだと思うが明らかにおかしい)


「メロライン、彼らの再審査についての資料を集めてくれ。それと鉱石を倉庫に出していると思うので計量して正規の購入額で買い取るように。間違っても安く済ませようとは思わないように」


 始めほどではないが慌てたメロラインが持ち込んだ鉱石の量を報告に来たがどうにかギルドに有った金をかき集めて何とか支払いは出来たがまさに規格外の男だったと思った。

 翌日の朝には彼らの再審査のことが分かりヘッピリンが強気だった理由もわかった。


 ワシの部屋にはワシとメロラインのほかにヘッピリンと再評価を受け付けたフィシアナも居た。


「集まってもらったのはシリューという冒険者について聞きたいことがあったからだ。最初にフィシアナ、君はシリューが数日前に来たときに再審査をしたと思うが試験官は誰だった? 」


(えっ? シリュー? 再審査? あっ、あの人族のひょろっこい男のこと? えっ? なんで今その話なの? )


「えーっと、誰だったかな、夕方のバタついている時間帯だったので誰かに頼んだと思うんですが覚えていないですね。申し訳ありません」


「ふむ、おかしなことを言うのだな。再審査の書類には試験官の名前はヘッピリンになっているのだが適当に頼んで副ギルド長に頼んで覚えていないとは問題だと思うが……」


 フィシアナは何も言えなくなって俯いたままになっていた。


「では、試験管をしたヘッピリンはシリューと戦ったと思うが彼はEランクの実力しかなかったのかな? 昨日の君の醜態を見る限り到底Eランクでは収まらないと思うのだがどう思うかね」


「あー、再審査の時は力を隠していたのか大したことは出来ず降参しましたので実力を見抜けなかった私の落ち度ですね。申し訳ございません」


「ほー、それでは君が試験官をしたというのは本当なのだな」


 ワシは懐から真偽の水晶を机の上に置いた。


「ヘッピリンは知っていると思うがこれは真偽の水晶と言って嘘を言うと赤く光る魔道具だ。虚偽の報告は重大な服務違反となるがもう一度聞く。シリューの再審査の試験官をヘッピリンに頼んでヘッピリンは正当に判断したのだな? 」


 ヘッピリンとフィシアナは俯き言葉を発することが出来ず黙ったままだった。


(なによ、真偽の水晶って。権力があるからヘッピリンみたいな不細工でも嫌なことがあれば奴がわたしの都合のいいようにしてくれたから我慢して付き合ってたのに下手にしゃべったら試験してないのバレちゃうじゃない。ヘッピリン何とかしなさいよ)


(むりだよ。フィシアナちゃん。君が弱っちい冒険者だっていうから説教しようとしたのに昨日の最後の方は良く分からないんだよ)


 下を向いたままではあったが二人が何やら目配せをしているようだった。


「沈黙しているということは虚偽の報告をしたと認めるのだな」


 ワシの言葉を聞いて2人は慌てて顔を上げて口を開こうとしたが言葉が出てこないようだった。


「ワシは難しい質問をしているわけではない。再審査の試験をしたのかどうか。ただそれだけを聞いている。再審査の書類にはお前たち2名の名前が受付と試験官として書かれている。ちなみに他の職員が書いたなどと言おうとしてもそれもしっかり真偽の水晶で分かるからな」


 二人の目は小刻みに動きこの状況をどうにかしようと考えているのが目に見えているが真偽の水晶がそれを許さない。この者達をそのままにしておけばいずれこのギルドに大きな災いが起きる可能性もある。ここでしっかりと罰する必要がある。


「答えないということでお前たち2人には罰を受けてもらう。まずはフィシアナ、お前は正当な理由もなく冒険者からの申請を不当に処理し不正確なランクを与えた。更に書類を偽造しギルドの信用を損なった。よってギルド職員を解雇し金貨5枚、500万リルダの罰金を命じる」


「そんな、人族の再審査なんか適当で良いからってヘッピリンさんが言っていたからその通りにしてただけなのに」


「ちょ、今それをここで言う必要ないじゃないか」


 どうやら今回だけではなかったようで真偽の水晶が赤く光ることはなく本当のことを言っているようだった。


「どうやら余罪もあるようだから詳しく調査をしないといけないようだな。それにお前たちは勘違いをしている。再審査をするのは大量に人族の冒険者が来て能力に合った依頼を受けられるようにするためだ。シャンバリアからの舟が帰ってきていない状態でやって来たあの2人が弱い訳がないだろう。それにあれだけのミスリル鉱石を持ち帰れるのは現役時代のワシでさえ不可能だ。昨日ヘッピリンが殺されなかったのは幸運だったのだ」


 その後の調査でヘッピリンとフィシアナは数々の不正を行っておりそれぞれが解雇され莫大な罰金を科せられることになった。


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