㉑
昼前には鉱山に着いて坑道に入ろうとしたら声を掛けられた。
「あんたたちは見ない顔だがここは初めてかい? この坑道には奥の方が稀少な鉱石を採れるが魔物が出てくるから手前の魔物が出ない場所で採掘するんだぞ。ただし人が掘っている近くに行くのはお勧めしない。鉱脈を横取りすると思われて喧嘩を売られるかもしれないから注意するんだぞ。それから夜になると魔物たちの行動範囲が広くなって入り口近くまで来ることがあるからある程度で見切りをつけて出てくるんだぞ」
坑道への出入りを管理していると思われるドワーフが教えてくれた。
早速坑道に入って行くと通路のようになっており等間隔にランタンのようなものが設置され足元まで見えていた。さらに進んでいくと採掘している音が聞こえてきたが壁際には大量の人間が居て隣りと距離を空けて掘るには無理があった。
奥の方が良い鉱石を見つけられると言っていたので通路を先に進んでいく。
岩を貼り付けたような見た目の蟻が出迎えてくれた。
『ロックアント:昆虫型
HP 24、MP 9、攻撃 34、防御 21、敏捷 17、魔力 11、知力 16、運 6
スキル:N蟻酸A N救援信号A 』
仲間を呼ばれる前にサクッと倒して奥に進んでいく。
『ロックリザード:蜥蜴型
HP 41、MP 11、攻撃 58、防御 72、敏捷 12、魔力 15、知力 14、運 7
スキル:N噛みつきA N体当たりA 』
岩のような肌を持つトカゲが突っ込んできたが何もしていない拳で殴ると簡単に倒せた。
所々魔物を倒しながら採掘している者もいたので更に奥に進んでいく。
『メタルバイパー:蛇型
HP 97、MP 38、攻撃 82、防御 103、敏捷 64、魔力 25、知力 31、運 9
スキル:R噛みつきA N締め付けA N鉄鱗P 』
締め付けようとしてきた鉛色のヘビをチャミが素手で切り裂いていた。
この辺りに来ると採掘している者は居なかったので心眼で壁を確認しながら鉱脈を探して採掘していく。
体感的には夕方になっているかなと思ったので道具や掘り出した魔鉄鋼の鉱石を異次元庫に入れて坑道から出た。
坑道から出たときに見えたのは離れた場所を更に離れて行っている馬車の後方だった。
どうしようかと思っていると近くにいたドワーフが話しかけてきた。
「もしかしておめえたちは帰るつもりだったのか? 今日の馬車はさっき出たので最後になるべ。オラたちは明日の採掘するからそこの空き地で泊まり込んで朝早くから良い場所を取って掘り始めるんだべ」
確かに広場にはテントを張り始めた者が数人いたので俺たちも野営をすることにした。
テントや食料を異次元庫から取り出しさっさと設置してしまう。
飯をチャミが作っていたがとても良い匂いがして待っていると先ほどの男が声を掛けてきた。
「あんちゃん、その良い匂いがするのはなんて料理なんだい。良かったら少し分けてもらえないべか」
今日のメニューはオークジェネラルのスタミナステーキでニンニクとソースの匂いが食欲をそそり声を掛けてきた男以外にもチラチラ見ている者がいた。
袖擦り合うも他生の縁ともいうので一緒に夜営をすることになったのだからとチャミに追加で焼いてもらい配って回った。
回りの連中は喜んで食べていたがいつのまにか酒盛りが始まり俺たちに酒を渡してきたので遠慮なく飲んだが俺とチャミが平気な顔をしていたのでドワーフたちも楽しそうに飲んでいた。俺たちが寝るころまでかなりの量を飲んでいたようだったが明日の朝は起きれるのだろうかと心配になった。
翌日驚いたことに酒を飲んでバカ騒ぎしていたはずのドワーフたちは二日酔いの欠片など見せず元気いっぱいで朝日を浴びた坑道の入り口に整列していた。おまけに坑道に入る許可が出ると我先にと走って中に入って行った。
俺たちは人が居なかった昨日の辺りに行く事にしていたのでゆっくり朝食を食べてから出発した。それでも馬車で来る連中よりも早く坑道に入った。
昨日のように魔物が襲い掛かってきたので面倒だが相手をしているとチャミが俺に聞いてきた。
「シリューちゃんは魔物を寄せ付けないスキルを持ってたと思うけど使わないの? 」
俺は頭を金づちで殴られたような衝撃を受けた。
(そういえば怖禍威を使えば無駄な戦闘は行わずに済むじゃないか)
早速周りにいるドワーフに迷惑を掛けない程度の大きさに調整した怖禍威を使い魔物を寄せ付けないようにして奥へ進んでいった。早く入ったこともあり昨日よりも奥まで来てみると坑道の壁の色が変わってきた。
心眼で確認してみるとミスリルの鉱脈だったので手当たり次第に鉱石を採掘していく。
かなりの量を採掘して一休みしていると邪魔になった岩を壊した場所で小さな卵を見つけた。
何となく隠して置いていたような卵だったので何なのかと思い心眼で確認した。
『?????の卵:魔力を吸収させることで孵化させることが出来る』
今まで心眼で確認して分からなかったことはなかったのではっきりした鑑定結果が出ないことに驚いた。それでも魔力を吸収させて孵化させれば何の卵なのかはわかるだろうと思ったので魔力を流し込んできた。
魔力をグイグイ吸い込んでいたがそろそろ帰る時間になると思って異次元庫に卵を入れて坑道から出ることにした。
シリューたちが立ち去ると卵があった場所にあった魔法陣は送り込むべき対象が無くなったことで機能を停止させたが長年立ち入ることのなかった場所に堆積した埃で誰にも気づかれることはなかった。




