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王 ブリンガス・スーガラキside
余の城に呼びもしない者が我が物顔で入ってくる。シャンバリア大陸の覇者になる余に平伏もせず話しかけてくる。不届き者を始末するよう厳命していたにも関わらず傷一つ追わず目の前までやって来た。
近づいてくることでこの者の怖ろしさを理解し逃げなければと警鐘を鳴らす。
しかし騎士たちが見ている前で王たる余が敵に背を見せるわけにはいかない。
攻撃してくる様子はないため平静を装う。
「あんたがこの国の王で間違いないか」
良く分からぬ黒い面をつけた男と思われるものが声を発した。
怖気づいて答えないと思われても癪に障るため尊大に答えてやる。
「その通り。余はブリンガス・スーガラキ。この国の王にして大陸を統べる者である」
「はっ、この城に居る騎士にも言うことが聞かせられないでいる愚鈍が国やまして大陸など統治できるわけがないだろう。お前は滅ぼしたと思った小さい村の生き残りに負けたんだよ」
有ろうことか目の前の不届き者は余を愚弄し始めた。
「この不届き者を始末せよ。出来たものへの褒美は思いのまま…」
余が騎士たちに命令を出そうとすると不届き者は軽く手を振ると突風が吹き騎士たちを壁際まで吹き飛ばしてしまった。
あまりのことに驚いていると男が更に近づいてくる。
心臓は早鐘のように動き背中には感じたこともない汗をかいている。それでも表情は王としての余裕を浮かべている。
「あんたは俺に負けたんだ。そこであんたに選択肢を用意した。ここで俺に殺されるか、俺の配下になるか」
そう言って男は巨大な宝石を手に持っていた。
(あれはもしやダンジョンコア。こやつがサウスカンザのダンジョンを潰した張本人であったか。それにしてもこやつは馬鹿である。コアに触れれば所有者が書き換えられることを知らんのだろう。余の手の届く範囲にコアを出している。おそらくヤツの強さはコアの所有者としての権能を使っているからでその権利を奪ってしまえばヤツの強みは無くなる。奴の気を逸らしコアに触れることが出来れば余の勝ちである。)
「余は殺されとうない。配下というが余は王である。それなりの地位を確保してくれなければおいそれと返事は出来んな。ところでそれは一体何なのだ。偉く大きい宝石の様じゃが余は初めて見るのう」
「ああ、これかこれは…配下になるというなら教えてやっても良いが今はダメだ」
(下賎の身分の分際で余と取引しようなどおこがましい。しかし今はどうにかしてヤツの気を逸らせなければ)
「余としては配下の前であまり弱いところは見せられぬ。部屋から追い出すのでしばし待ってくれ」
壁際に固まっていた騎士たちに指示を出し謁見の間から出させる。
「この者とこの国の未来について話をする。その方たちはここから立ち去るが良い」
起き上がった騎士たちがお互いを支え合いながら扉から出て行く。
扉を出る際にバランスを崩したのか騎士が倒れ激しい音を出した。普段であれば不始末を起こすようなものなど城から摘まみだすところであるが今日は褒美をやりたい気分じゃ。音を気にして馬鹿者は余から視線を外し後ろを振り返った。
余のスキル剣王をもってすれば視線が切れている一瞬でコアを奪うことなどたやすい。
大馬鹿者がこちらを見たときは既にコアは余の手の中にある。
(勝ったのじゃ)
勝利を確信した瞬間余の体から魔力が急激に失われていく。意味が分からずしゃがみこんでいると大馬鹿者が不敵な笑みを浮かべている。
「あーあ、触っちゃったね。ずーとコアを見てたから触ろうとしてるのは知ってたけどホントに触るなんて頭おかしいんじゃないの? コアは正当な所有者しか触れることを許さないんだ。ダンジョンのボスでさえコアに触れることは出来ない。ボスを倒した者だけがマスターになる権利があり設置されていないコアはボスが存在しない以上所有権が移動することはない。つまり俺が持っているコアをあんたが触れた時点で命を吸われる未来は決まってたんだよ」
何かごちゃごちゃ言っているが既に余の意識は朦朧としており良く聞こえない。
この大陸の覇王になる筈の余の意識は完全に途絶えた。
シリューside
俺が王の命を絶っても良かったが情けない感じで死んでほしいと思っていたら試しに出したコアをガン見していたので思いついた。
ちょうどもの音がしたので視線を外してエサを撒いてやると簡単に食いついて飛び出してきた。
ちらりと横目で見ると勝利を確信したような満面の笑みでコアに触れる瞬間は目を見開き歯茎まで見えるほど笑っていた。
しかし触れた瞬間驚愕と虚脱感に襲われたようにしゃがみこんだ。
種明かしをしてやるがコアの魔力吸収の速度が速く最後まで聞く余裕はなかったようだった。
王の死亡を心眼で確認して玉座の上にコアを設置した。
ついでにムートリナとシームルカのダンジョンのコアも取り出し吸収させるとポイントや記憶の合算が行われた。
ダンジョンの範囲を王都の防壁内全てにして取り込んでしまった。
ボスを召喚するために魔力を流してポイントを貯めていく。既に20桁以上のポイントが貯まったのでボスを呼び出すことにする。
頭がよくて指示が通りやすい奴が良いなと思い上位のドラゴンをイメージして召喚を行う。
『わはははは、我を呼び出したのはおぬ…し……、ご主人様、何なりとご命令を』
デカい存在が出てきたと思ったらいきなり縮んで土下座をする勢いで頭を下げてきた。
『龍皇キノサナップ:龍種最上位
HP 68477、MP 84327、攻撃 5741、防御 8539、敏捷 7451、魔力 9538、知力 9981、運 364
スキル:U殲滅哮A U次元爪A S物理攻撃無効P U龍眼A S龍魔法A S人化A S眷属召喚A S眷属強化P』
確認してみたら今までと桁違いの奴が出て来てしまった。
ステータスなんて見たこともない数値で俺の方が弱いんじゃねえかって思えるほどだった。
それなのになぜか俺に土下座をして今も頭を上げておらず若干震えている。
会話が成立しそうなのでちょっとは親しくなりたいと思いフレンドリーに話しかけてみた。
「いつまでも座ってないで少し話そうじゃないか。名前はキノサナップってことだと思うんだけど長いからキノさんって呼んでも良いかな?」
『ご主人様に名前を付けていただけるなど大変嬉しいです。本日からわたくしはキノさんです』
最敬礼のお辞儀をしてまた頭を下げてしまった。
とりあえず状況を伝える必要があると思い話を聞いてもらう。
「キノさんを呼んだのはここのダンジョンのボスをしてもらおうと思ったんだけど大丈夫?」
『問題ございません』
「ダンジョンはこの人間の城と城下町全部で城下町は基本的にそのままで城の中を迷宮にしようと思う。それとキノさんのスキルに眷属を強くするスキルがあったからドラゴンを多めに呼び出そうと思うけど問題ないかな?」
『仰せのままに』
「ドラゴンとかってホントの姿と人間の姿ではどっちが楽なの? ダンジョンの通路を考える時に気になるんだけど」
『ご主人様のご指示に従います』
完全にイエスマンと化して意見を言おうとしない。
(俺そんなにビビらせるようなことしたっけな?)
とりあえず頼りになるボスが召喚できたので市民に向けて発表していく。
「俺は王を殺し新しくこの城の主となった。そしてこの城と城下町を全てダンジョンに取り込んだ。城下町については特に変わりはないが犯罪を犯せば命で償ってもらう。出て行きたいものはいつでも出て行ってくれて構わない。城の中に入らなければこちらから襲い掛かることはない。」
コアを通してのダンジョン内のアナウンスが終わったのでキノさんと打ち合わせという名の指示だしを行っていく。
指定区画以外で人を襲うことを禁止する。
もし破ったものは処刑。
ただし外部からの襲撃に対する防衛の場合は許可する。
可能であるなら情報収集が得意な配下に各国の情報を集めさせ事前に攻め込まないような調略を行わせる。
色々好き勝手言ったけど大丈夫かなと思ったら2文字で終わった。
『御意』




