第95話
投稿者:係長のわし 2027年10月5日
やったぜ。
嘘じゃ。一ミリの「やったぜ」もない。
現場の安全というのは、ピリピリとした緊張感の上に竣工(成立)しとる。
秋晴れの10月。岡山の巨大ホールで、元請けの偉いお偉いさん達が一堂に会する「安全衛生大会」が着工された。
そこへ、わしの直属の部下・金髪(25歳)が、慣れないスーツの首元を一ミリの隙もなくカチリと締め、壇上に上がりおった。
若手の模範として、安全スピーチをブチかますためじゃ。
客席の最前列には、わし(163cm 80kg)とおっさん(アルバイト)、兄ちゃん、そしてハゲ(元課長)が陣取っとる。
金髪が壇上から、わしたちを一ミリの狂いもなくスキャンした。その瞳に、白濁したような緊張の色がドバーっと浮かんどる。
「……えー。岡山工区の、金髪です。わしが現場で学んだ安全管理とは、女子レーサー渡邉のモンキーターンのように、一ミリの猶予もなく内から第1ターンマークを刺すことです」
……初っ端から、一ミリも安全に関係ない競艇用語をブチ込みおった!!!
会場の元請け重役たちが「……モンキーターン?」と、一斉にシステムフリーズ(困惑)しおったわ!
「おい、おっさん! 金髪の主機(脳)が、一気に競艇にバグっとるぞ!」
「ええモンキーターンじゃ。イン逃げ一択っす」
おっさん、感心しとる場合か! お前の安全教育(競艇ビデオの強制視聴)のせいで、金髪の安全スピーチが別の現場へ流出(脱線)しとるんじゃ!
金髪がそのまま「安全帯のフックは、パグの三郎がわしのすねをホールドする時のように、一ミリの隙もなくロックしなさい!」と、他種族汚染されたスピーチを叫び続けた、その瞬間じゃ。
おっさんが突如として立ち上がり、ステージ袖の操作卓へ、一ミリの猶予もなくスクランブル(突撃)しおった!
「おっさん、何をするんじゃ!」
わしが80kgのトルクでホールドしようとしたが、おっさんは非正規アルバイトという名の「無敵の機動力」でこれをパージ!
操作卓のケーブルを強引に引き抜き、持参したポータブル機器を一気に接続しおった!
ドバーーーん!!!
巨大ホールのプロジェクターに、一ミリの予告もなく「平和島・SG優勝戦」の映像が爆音で投影された!
女子レーサー渡邉が、白濁した水しぶきをハネ上げ、第1マークをマッハで高速旋回する姿が、巨大スクリーンを埋め尽くす!
『さあ、一コースから一気にイン逃げ! 渡邉! でーれー速い!』
元請けの会長、社長、監督官たち全員が、一ミリの出口もない「クレイジー競艇空間」に強制搬入(軟禁)され、一斉にシステムダウンしおったわ!
さらに、ハゲ(元課長)が涙でドロドロになりながら客席から立ち上がり、
「渡邉選手の旋回、三郎さんの『おやつ後の旋回』と一ミリの狂いもなく重なります! 元請けの皆さん! 一気に三郎さんのヨダレを、この磨かれたハゲ頭(反射材)で受け止めましょう!」
と、一ミリの生産性もないバイオテロ(不審な絶叫)を会場に圧入しおった!
わしはハゲの頭(反射材)をホールドし、元請けの分厚いパンフレットで、一気に頭部をパージ(隠蔽)しておいたわ!
会場は大混乱。
おっさんが画面の渡邉に向かって「イン逃げじゃ! 差せ!」と咆哮し、金髪が壇上で「これがわしの、安全ハツリ理論です、やったぜ!」と万歳三唱。
わしは一人、冷や汗という名の白濁した液体をドバーっと流しながら、元請けの所長に「すまん、うちの主機(部下)が、パグと競艇に汚染されとるんじゃ……」と全力の言い訳(点検)を喉の奥底から叫び続けた。
安全大会は、一ミリの猶予もなく強制終了。
わしたちは出入り禁止のレッドカードをホールドされ、会場をパージ(叩き出された)された。
帰り道、わしは気づいたらローソンへ走っとった。元請けへの謝罪と、今日のクレイジーな竣工を祝うための聖水を三本買った。
アパートに戻ると、三郎がソファでひっくり返って寝とった。
「三郎。金髪の晴れ舞台が、おっさんとハゲのせいで、一ミリの隙もなく解体(破壊)されたぜ」
ぶひ。
「『勝負の世界に、安全などない』か。お前、でーれー修羅の道を歩んどるな!」
ぶひぶひ。
元請けの安全大会を爆破する。
わしたちのクレイジーな工区は、一ミリの狂いもなくブレーキを喪失しとるわ。
――やったぜ。




