第081話 気付かぬ間に入る輪
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かれこれ二時間はゲームをぶっ通しでしている。
進捗は、メープルクイーンの花冠と火火狐の襟巻きを入手したので大手柄だ。
そして、驚く事にラストアタックはどちらも華。
これがビギナーズラックというやつかと感心していたが、よくよく考えてみると華は普通に運が良い。
「今日で全部集め切りたかったけど、時間が時間だから今日の部活は終わりにしようか。」
「最後の一つくらい自分で集めさせるべきだし、アタシも帰る準備しよう。」
みんなが黙々と帰る準備をしている中、凛だけは悔しそうな表情を浮かべている。
気持ちは分からないでもない。
自分の得意分野での相談なのだから、出来る限りのことをして相談者に会いたいと思っているはず。
しかし、時間は有限だ。
一生ゲームをしていられる訳でもない。
それに、華が行ったように最後ぐらいは自分で集めないとサプライズの意味はなくなる。
自分がどれ程相手を思っているかは行動で示すべきだからな。
「帰るぞ凛。先輩達は俺に鍵渡して帰ったぞ。」
「アタシ、今日は楽しかったからまたゲームしよう。だから、元気出して帰る準備しよう。」
「・・・本当に?また、ウチとゲームしてくれる?」
「呼ばれたらいつでも飛んでいくからさ。なぁ、陽太。」
「華、ゲームはオンラインでも出来るぞ。」
「バッ、そういう意味じゃないっての!」
「あはは!・・・ありがとう二人共、ウチ焦ってたみたい。」
いつもの空気に戻った。
本当に戻ったか聞かれれば、はっきりとした根拠は説明出来ないんだけど、この肌で感じるのだから間違いない。
「焦る気持ちは分かる。手に届かない場所にみんながいるような感覚で苦しくなるよな。」
「陽太くんもそんな時があるの?」
「しょっちゅうあるっての。でも、そん時は一旦立ち止まって考える。そして、自分の最大限が発揮できるタイミングになったら一気に追い越してやれば良い。」
「ウチでも追い越せるかな。」
「きっとな。でも、俺は全力で走るから追い越せないけど。」
立ち止まっている人を見て、あえて自分も立ち止まる必要はない。
来ないなら、全力で引き離すだけだ。
「さて、部室閉めるぞ。」
「はーい。」
ようやく鞄を持って立ち上がる。
そして、俺達の後を追いかけて部室から出て来た。
もう焦りなどない表情だ。
「それにしてもまんじゅうさんってどんな人なんだろうね。」
「チャットを見る感じは優しい感じしたけど。」
泉田さんには悪いけど、ネットなら人の本性はうまく隠せる。
素性を知られていなければ、先入観で見られる事はないのだから。
もしも、まんじゅうというプレイヤーも優しい人間を演じているだけなら、本性は一体。
なんて、ただの考え過ぎかもな。
ただただ良い人であるなら、話が向かう方向はハッピーエンドだと願いたい。
「アタシには考えられないな、顔も知らない相手と付き合うの。」
「その発言、全く持って時代にそぐわないな。」
「周りが怖くてやってられるかっての。そんな事より、一度ぐらいは会ってから決めるべきだと思うけどね。」
「良いんだよ、色んな形があって。顔が見えなくても心が繋がってるんだろ、そういうのは。」
そんなもんかと言って納得する華。
だけど、これは綺麗事だ。
大半の人間は、顔もある程度は付き合う上で重要視する。
それは好みというものがあるのだから、仕方のないこと。
実際に会った人が余りも想像と掛け離れていて、交際には至らないなんてのはザラにある話だろう。
やっぱり、問題点は付き合った後の心配だよな。
しかし、相談内容は付き合うまでの補助。
そこまで深く入り込んだ事を投げ掛けるのは失礼だ。
「待ってたよ陽太、帰ろー。」
玄関に行くと翼が待っていた。
まだ、陸上部は練習とかしてる時間だと思っていたのだが、どうしてここにいるのだろうか。
「途中で抜け出して来ちゃったー。陽太と放課後遊べる機会が少なくなるでしょ?だから、今は陽太優先ってことで。」
「誰も怒らないのかよそれは。」
「そこはどうにかこうにか誤魔化して来たからね。」
「でも、いつ終わるか分からなかったんじゃないですか?」
それもそうだ。
この部活は他と違って終わる時間は決まっていない。
大半の相談がない日は早く帰れるが、日によっては遅くなる事だってある。
いつ抜け出して来たのか知らないが、三十分以上待っていた可能性も高い。
「一時間くらいしか待ってないから大丈夫だよ。」
まさかの予想を上回る時間待っていたようだ。
部活中はずっと携帯を触っていたので、メッセージの一つくらい送ってくれたら気付けたかも知れないのに。
約束なんて取り付けてもいないはずなのに、申し訳なくなって来たのは不思議な話だ。
「帰るか。そこまでして、待ってたんだし。」
「陸上部入ったんだったなアンタ。」
「アンタじゃなくて翼だよ。」
「・・・翼は、陸上部入ったんだな。」
「そうだよー。嬉しいねー、華ちゃんがボクに興味を持ってくれるなんて。」
俺もそれには驚いた。
翼の事は煙たがっているとさえ思っていたが、適切な距離感を測っていただけかもな。
今までにないタイプのテンションを持っているので、話し掛けるタイミングが難しいのも分かる。
ずっと翼のターンが続いてるような感覚だし。
「陸上部って感じのイメージするよ、翼。」
「そうかな?結構、ストイックな人が多いイメージあるけど。」
「翼、ストイックでしょ。隠してるけど。」
「おいおい、俺が言うのもなんだけどそれはあり得ないって。成り行きで過ごしてるタイプだろ、翼は。」
「言って良いのか分からないけど、体格がしっかりしてるし、筋肉の付き方が毎日トレーニングしてる人の付き方だって。」
意外にも裏では真面目に努力していることを、華によってバラされた翼は顔が真っ赤だ。
見たことのないリアクションを見せられて、俺達もどんな反応をしたら良いのか分からない。
「意外と真面目なんだな。」
恥ずかしそうなので、慰める為に一言。
「ち、違うよ?ほら、陽太と思いっきり遊びたいから体力作りって意味で運動してるだけだよ?」
見え見えの嘘ついた所でもう誤魔化せない。
初めて見る照れた姿。
こう言った女性らしい一面を見るたびに、昔見ていた翼とは違うのだと思い知らされる。
それが良い事なのか、寂しい事なのかは分からない。
「ボクに真面目キャラは似合わないからやめてくれよ。それに筋肉で言ったら華ちゃんだってあるし。」
「これは、昔の名残り。もう、大分前の話だけどな。」
「でもでも!華ちゃんはすごいんですよ!一緒に買い物言ってナンパとかされた時も一瞬で追い返してくれるんですから!」
「本当に嬉しそうに話してくれるね友達の事。」
少しだけ羨ましそうに凛と華を見ている翼。
まだこちらに来たばかりで、交友関係の不安もあるのだろう。
「安心しろ翼。今は会ったばかりだけど、その内あの輪に入れるから。」
「ボク、面倒くさい性格してるよ?」
「それはお互い様って事で。」
「ふふ、それもそうかもね。」
「二人共、早く早く!」
凛に呼ばれて、走って駆け寄る翼。
その元気な姿を見て安堵する。
彼女の元気は、人を巻き込んで元気にする力があるのかも知れない。
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