第125話 カラオケをしようよ
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俺の学生証を持っているか確認すると案の定持っていた。
華の嗅覚が良くなければ一緒見つけることが出来なかったな。
あんな特殊メイクみたいな変装はずるいだろ。
それにしても改めて見ても個性的だ。
純粋な不良集団って感じなのは変わりない。
「今回もまた負けてしまいましたね。しかし、この戦いを止める訳ではないですから。」
「何度やっても同じ事だろ。」
「あら、本当にそうでしょうか。」
「くくく、明日も明後日も狙われているかも知れない恐怖に怯えるんだね。」
無口ちゃんも肯定の頷きを見せる。
どうやら蛇の様なしつこさは健在らしい。
ただ、もう毒が完成に抜け切った蛇の様な気がする。
噛まれる危険性はあっても致死には至らないだろう。
「それと一つ聞きたい事がある。」
「どうか致しましたか?其方から質問ですか?」
「巷で噂になっている人助けの話。あれは本当の話なのか?」
「ふふっ、一つだけハッキリとした答えを言うのであれば、ただの気まぐれですよ。蛇龍門は今後一段階進化した組織になる。今日は、それだけ覚えていただけたら結構です。」
この披露宴に強制参加させられる身になって欲しい。
だけど、二人とも癖こそあるが能力で言えば特出した物を持っている。
それをどうやって扱うかは本人の意志次第だが、人の為に使っていると願いたい。
さて、ここまでが鬼龍院のお戯れの時間だったと言う事で帰るか。
夏休みと言う限られた時間を無駄に過ごすのは勿体無いしな。
立ち去ろうとする俺達を見て、小さな声で呟く鬼龍院。
「二学期は一学期よりも過激な学期にしましょうね恋愛支援部さん。」
俺には聞こえた恐ろしい言葉。
もしかすると毒が抜かれた牙は思っている以上に鋭利に仕上がってしまったのかも知れない。
「あーあ、なんか疲れちゃったよね。」
「それじゃあ、現地解散にするか?」
「いやいや!待って待って!カラオケは絶対に行く。それを楽しみにして頑張ったんだし。」
「そうだよね。凛と約束してたしね皆んなで。」
カラオケでも十分休む事は出来るので問題ないか。
幸い、駅に集合していたのでカラオケまで移動するのに時間は掛からなかった。
夏休みだから駅近くのカラオケはどこも混んでいるかもと思ったのだが、意外とそうでも無い。
制服を着たままの奴らがチラホラと見えるくらいだ。
学校無いのにわざわざ制服着るなんてな。
どこの学校の生徒かバレバレだからやめた方が良い。
・・・それにしてもカップルが多いな。
個室に行くから気になる要素では無いけど、ちょっとだけ気まずい。
しかし、二人はどんな歌を歌うかで盛り上がっているので水を差す訳にもいかないな。
「陽太くんは何歌うの?」
俺が余りにも無言だったからなのか話題を振ってくれる。
しかし、歌える曲は限られているのでどうしようか。
「なんか聞いた事ある奴を頑張って歌ってみようかと思ってる。」
SNSで流行っている歌は何となく歌えるレベルでは覚えているので、それを歌うか。
一応、アニメのオープニングとかも歌えるのだが、それを熱唱するには体力が残っていない。
こんな事になるなら歌のレパートリーを増やしておくんだったと後悔している。
セルフサービスのジュースを取りに行った後で、カラオケルームに入った。
今日は散々動きまくったので、少し柔らかいだけのソファーでも心地良く感じる。
「まずはウチから歌うね。練習してた歌があるから聞いて欲しいの。」
慣れない手付きで検索を掛けて曲を入れる。
そして、入ったのはゲームの主題歌。
チョイスは凛らしいな。
イントロの軽快なリズムが癖になりそうだ。
聞いた事がある歌だったのでノリノリになりながら聴いていると、凛も楽しそうに踊り始めた。
ここの所難しい話ばかりだったので、楽しく笑えてるだけでも有難いと思える。
また、いつ忙しい日々が来るかわからないので、今は全力で楽しむ事にしよう。
凛が歌い終えると結果は九二点とかなりの高得点だった。
家でも練習してって言ってたし、この結果は嬉しいだろうな。
「やったー!これ、写真に撮っておこうー。」
「なら、凛も一緒に画面に収めてやろうか。」
「あ、それならみんなこっちに来てよ。」
手招きするので仕方なく俺と華が近くによる。
すると肩をみんなで寄せて、画面と一緒に三人で写るにシャッターを切った。
「見せて見せて。」
華が写真の撮れ具合が気になり見せてもらっている。
俺も言葉にこそ出さないがどんな風に写っているのか気になって覗き込む。
「俺の目がおかしくなければ、めっちゃ俺半目じゃね。」
「あはは!送って送って!奇跡の一枚として保存しておかないと。」
人の半目を保存するな。
ツボに入ったらしくソファーでゴロゴロと転がる華。
イラッとしたので仕返しをしようと思ったが、どうやっても俺が負ける未来しか見えないのでやめておく。
「しょうがないなぁー。ほら、こっち向いて陽太くん。」
振り向くと同時にシャッター音が鳴る。
うん、確かに半目になってることは気にしてたんだけどさ、急に撮ることはないじゃんか。
それに俺一人だけ写しても何の価値もないだろ。
「ほら、これで良いよね?」
今度は半目ではない状態で撮影に成功している。
しかし、ノーマルカメラではなく、女子がよく使う盛りに盛りまくれるカメラだ。
お陰で俺の目は原型を留めておらず、辛うじて誰か判別出来るレベル。
これを華に見せると余計に笑い始めた。
釣られて凛まで笑う。
俺一人でここまで笑いを取れているのなら、最早褒め称えても良いか。
「絶対保存とかするなよ。すぐに消してくれ。」
「なんで!こんなに可愛く撮れてるのに。」
「ならば、これで決めようじゃないか。」
目の前にデンモクを置く。
ここはカラオケ。
勝敗を決めるのはこれしかないだろ。
先程は偶々得意な曲で高得点を取ったかも知れないが、今回はデュエットで勝負してもらう。
ニ対一と言えば基本的には有利な立場だが、このカラオケにおいては違う。
まさか、こんな事になるとは思っていなかっただろうからデュエットの練習なんてしていないはず。
息の合っていないデュエットなど、タコの入っていないたこ焼き屋と同様恐れるに足らない。
あ、ちなみにタコ焼きの例えは偶々テーブルのたこ焼きが目に入ったからであって、決して普段から変な例えをしてる訳じゃない。
「良いよ。アタシと凛の仲を舐めてもらっちゃ困るっての。」
勝負事になったからなのかスイッチが入る華。
目付きが真剣そのものだ。
さっきの人と違う人が入って来たんじゃ無いかと思うレベルの切り替えである。
二人で相談タイムに入ったので、その内に俺が一番自信のある曲を入れておく。
誰にも聞かれていないというのも寂しい話だが、歌に集中出来るので良しとしよう。
俺の歌は誰も興味ないと思うので割愛させてもらう。
ちなみに結果だけ言うと八七点。
自信満々で入れた割には微妙な点数だな。
普通に点数を越される可能はある。
二人共十分に話し合った末、デンモクを手に取り曲を入れる。
曲名を見ただけでは分からなかったがイントロで何の歌か分かった。
マイクを持って立ち上がる二人。
これは良い物が聴けそうな予感がして来た。
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