第123話 再始動は異変だらけ
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俺達がこの街を離れている間にとある異変が起こっている。
蛇龍門、彼等の名を聞けば記憶に新しい。
その彼等が悪行だけでなく、善行もしていると言う噂だ。
虐めている不良を殴り飛ばしたとか、老人ばかりを狙う詐欺集団を壊滅させたとか。
どれも信じるに足らない噂である。
だけど、もしもそれが本当なら何が目的なのか。
絶対に裏があると勘繰ってしまうのは仕方のない事だ。
その不安を助長するかのように天竹から連絡が来た。
無視をしようかとも考えてみたが、前例があるように何か身内を巻き込んだ事件だったとしたら出ない訳にもいかない。
スリーコールが鳴ったと同時に電話に出た。
『藍連駅、十一時だ。』
「はぁ?何言ってんだよいきなり。」
聞き返した時には既に電話が切られていた。
十一時に藍連駅へ来いと言う意味なのは分かる。
だが、余りにも身勝手な要望だ。
どんな内容か分からないのに行かなければならないのは余りにも恐ろしい。
もしも、面倒なことに巻き込まれるのであれば遠慮したい所だ。
そんな中で恋愛支援部一年のグループメッセージが動き出す。
二人の話を聞いてみるとどうやら二人も似たような事を電話で言われたようだ。
どうしたものかと三人で悩んでいたが、もしも何か事件を起こそうとしているなら、止められるのは俺達しかいないと言う結論に至った。
嫌々ながらも準備を済ませて駅の方へと歩く。
時間は十時半過ぎ。
こんな時間に外に出て動かないといけないなんてな。
最近は用事が沢山あって忙しかったので今日こそは休もうと思っていたばかりなのに。
「十分で終わる話し合い・・・な訳ないよな。どれだけ早く終わっても一時間は掛かるか。」
「一番最初は貴方でしたか。」
集合場所に着くと彼等は既に揃っていた。
パッと見た感じ俺を見ていきなり襲ってくることはない。
ひとまず殴り合いの喧嘩では無さそうな雰囲気に肩を撫で下ろした。
でも、そうでないなら何が目的だ。
本当に仲良く買い物とかだったら切れて帰るぞ。
「何か嫌な予感しかしないね。」
「呼び出しとか変だし。」
凛と華がそれぞれやって来て似たような事を口にする。
律儀にやって来たのは、変な事をされるのを恐れてなのか、将又噂の真相を確かめる為なのか。
「ようやく集まったみたいよ。」
「呼んだらすぐに来い。それが常識だ。」
「どんな常識だ。お前等と仲良く遊ぶ仲じゃないからな。呼ばれても少しは躊躇うもんだろ。それでも来てやった事に感謝して欲しいくらいだ。」
「恩着せがまし言い方だな。来なかったら時のリスクを恐れただけだろ。」
天竹の言っている事は正解なのだが、こいつが言うのは腹が立つ。
自分達が今まで何をして来た胸に手を当ててよく考えて欲しい物だ。
一番最初に怒りを口から出したのは華だった。
「要件があるならさっさとしてくれない?わざわざ三人呼び出したんだから何かあるんでしょ?」
「本当でしたら音無さんもお呼びしたかったのですが、あの方は恋愛支援部じゃないからと断られてしまいました。でも、三人は集まってくれたので話を進めましょうか。説明してください、深澤さん。」
「げっ、ウチかぁー。・・・んん、あー、この度、新生蛇龍門として勝負を仕掛けさせてもらう。それに伴って、新メンバーも紹介させてもらうね。」
おい、なんだこの茶番は。
確かにいきなり襲いかかってくるとか、暴力行為をしてくるようには見えない。
だけど、ある意味それより辛い時間を過ごしている。
「くくくっ、コイツは面白いですね。僕が実際に薔薇姫を見る事が出来るなんて。僕は名前を明かしたくないので、情報屋のXとでも呼んでください。」
「お前の所は色物を入れるようになったのか?」
「それ以上何も言うな。俺も痛い程実感してる。」
「あら、Xはかなり優秀ですよ。そちらの部活の糸井さんに匹敵するくらい情報通ですし、プログラミングの腕にも自信があるらしいので。」
「ぷぷぷ、僕に掛かればハッキングだって簡単だよ。」
特出した才能があるってのは事実らしい。
だけど、蛇龍門のメンバーかと言われたら少し色が違う気もする。
後は、もう一人。
全く持って喋らない女だ。
何も喋らないからどんな奴かすら分からない。
「あ、そうだった。この子は無口ちゃん。本名知らないからあだ名なんだけどね。得意分野は侵入とか尾行とか?」
うんうんと頷いて肯定する。
この子も大分個性的だ。
唯一冷静な男、天竹にとってはこの二人の加入は胃が痛む話だな。
それに反して鬼龍院は満足そうな顔で二人を見ている。
お前も苦労しているんだなという目で見ると、そんな哀れんだ目で見るなと視線を返された。
「それで?自己紹介なんていらないからさっさと何の勝負するか言ってくれない。」
「そうですよ。ウチはまだ許した訳じゃないんですから。」
「私は仲良しごっこをする為に来たのではないので、許して貰おうとは思っておりません。それにこれまで同様貴方達の邪魔はさせてもらいますよ。今日は再始動を兼ねたちょっとした余興みたいなものです。」
余興ってのは十分に分かったけど、長過ぎる。
夏休みじゃなかったら普通に帰っていた。
「で?何するの?」
「街中に散らばった私達を探して貰うのですよ。まぁ、お遊び風に言うなら鬼ごっこですかね?」
俺はまだ寝ぼけているのかもな。
鬼ごっこをすると言われた気がした。
まさか、不良グループのトップがそんな事を言うはずがない。
隣にいる華と凛も鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
・・・冗談じゃないのか。
一向にネタバラシがないのを見てどうやら本気で言っている事に気付く。
ただ、本気だとしたらこんなメリットの無い話に乗っかる訳がないだろ。
「帰るか華、凛。」
「時間損しちゃったね。あ、みんなでカラオケ行かない?ウチ、前の時より上手くなってるよ。」
「凛が言うなら行こうか。アタシは歌下手だから、歌わないけど。」
「えぇー、そんな事全然ないよ!」
全く何事も無かったかのように解散しようとする。
すると、目の前に無口ちゃんとXが割り込んで来た。
確かに自分達の折角のお披露目が一瞬で終わるのは悲しいかも知れないかけど、知ったことでは無い。
そっちも勝手に歓迎会でもすれば良い。
「ちゃんと理由なら用意してある。あくまで強制させる為にだけどな。」
天竹が見せて来たのは俺の学生証。
財布の中に入れているはずなのにどうして。
慌てて財布の中を確認するとやはり無かった。
「前に拉致した時に回収しておいた。悪用するつもりだったが、まさかこんな所で役に立つとは。」
おいおい。
これじゃあ、少なくとも俺は参加せざるを得ないだろ。
悪用するつもりだったと言う事はまだしていないと言うことだよな。
そうであってくれよ。
とりあえず鬼ごっこに付き合ってやれば、返してくれると思って良いんだよな。
「範囲はどのくらいだ。」
「ここから半径一.五キロ圏内だ。」
直線距離にしたら三キロ。
まあまあ広い範囲だな。
そこに五人もバラバラに動かれたら、時間は掛かるぞ。
「どうやら全員参加みたいだな。始めるぞ。」
学生証を誰が持っているか分からないようにしてからバラバラに移動を始めた。
「巻き込んで悪い。さっさと終わらせて遊びにでも行くか。」
「カラオケ代、奢ってくれたらチャラにする。」
「カラオケ行くならさっさと終わらせよう!」
俺等も後を追って走り出した。
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