第118話 若さ故
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駄菓子屋って言うのはあまり見かけないよな。
でも、幼い頃にあったら通っていた自信がある。
お手軽な価格で丁度良い小腹を満たすことが出来るのは、子供にとって嬉しい限りだ。
「こんにちは。」
「あら、いらっしゃい。高校生が来るのは何年振りかね。」
「高校生って分かるんですか?」
「そりゃ、今まで数多くの子供達見て来たからね。一目見ただけで分かるよ。あんま買い過ぎないでね、他の子供も買うから。」
「いえ、今日はお話しがあって来ました。」
こちらを振り返らずに話を聞いている。
もしかすると、俺達がここに来た時点でどんな話をされるのか察していたのかも知れない。
街の奥に位置する駄菓子屋だけど、七瀬先輩が家出したことくらいは知っているはずだからな。
そこに先輩と同じ高校生が現れたら考えることもあるだろう。
「単刀直入に言うと七瀬先輩のお見合いを反対するデモに参加して欲しいんです。」
「七瀬先輩とは同じ部活に入っていてウチ達すごくお世話になってるんです。その人が困ってると聞いたら居ても立っても居られなくて。」
情に訴えかける。
本当に七瀬先輩のことを可愛がっていたのなら二つ返事で了承が得れるはずだ。
一人が捕まれば芋づる方式で協力者を集められる。
そんな期待がどこかにあった。
ただ、それは俺の甘い希望に過ぎないらしい。
話を聞いていたおばあさんは話を聞き終えると厳しい言葉を投げ掛ける。
「それで成功するのかい?却って楓ちゃんの立場は危うくなる可能性は?」
「それは・・・ないとは言い切れません。」
「若いってのは悪いことじゃない。だけど、それが誰かを巻き込むのならよく考えた方が良い。例え、必ず成功するとしても。」
俺と凛は黙った。
これ以上は何を言っても意味がないし、おばあさんの言っている事は正論だ。
俺達が高校生だからとか、七瀬先輩の友達だからって言う理由だけで第三者を巻き込むのは余りに身勝手だと言える。
どれだけここに留まろうと俺達の聞きたい答えは返って来ない。
そんな結論が頭の中で浮かび、駄菓子屋も後にしようとした時だった。
「間違いですか、誰かを助けたいってのは。」
「一人で出来ない事をしたがるのは偽善って言うんだよ。」
「偽善でも善でも関係ないです。友達見捨てる人生が嫌いなだけ。どうかご協力していただけませんか。」
頭を下げた。
俺らも華と同じ気持ちなので、頭を下げる。
「良い友達がいるんだね楓ちゃんも。昔は、誰とも上手く行かなくてウチに来ては私とばかり話していたのに。そうかそうか。」
大きく頷きながら昔を思い返しているようだ。
「別に意地悪してやろうって意味で言ってたんじゃないってことだけ分かってね。ただ、貴方達が危なかっしく見えたから。」
人生の先輩からのアドバイスってことか。
有り難く受け取っておこう。
俺達は確かに焦りから強引な行動に出てしまっていた節はあったからな。
「楓ちゃんね、自分の家に帰る前うちに寄ってくれたんだよ。その時にボソッとお見合いしたくないって。貴方達ならどうにか出来る?」
「任せてください、俺達恋愛支援部ですから。絶対七瀬先輩救って見せます。」
「そうかい。困ったり、何かあったら私に言ってね。私で良ければ協力するから。」
俺達はまた頭を下げた。
最初の協力者が出来た事によって、勢いは加速する。
街の人々は、それぞれの想いを語り、協力してくれると言ってくれた。
これは俺達が動いた結果ではない。
今まで七瀬先輩が気付きあげて来た人脈が成すもの。
問題は、具体的にどうやってアピールするかだな。
お見合いを中止させられるように、あの冷酷である七瀬蓮也の心を動かさないと。
ただ、住民が七瀬先輩の良い所を挙げて訴えかけたって成果は得られない。
利益を追求することだけが彼を突き動かす。
「もしもし、糸井先輩ですか。佐倉です。」
『どうしたの?そっちは順調?僕の方は結構動けてるけど。』
「人は集められたけど、集団で抗議するだけでは効果が無さそうだと思いまして。それで、アドバイスが欲しくて。」
『アドバイスか。うーん、パッと出来るようなアドバイスは思い付かないけど、どんな人でも心を持っていると思うよ。それが厳しく娘を育てる父親でも。』
つまりは、意外と情に訴えても押せるということか。
珍しく納得出来ないアドバイスだな。
俺は直接あの父親に会ったからこそ分かる。
どんなに血縁者であっても感情を揺れ動かすようなタイプではない。
自分の好きな人の事だから、いつもより冷静な判断が出来ていないのか。
いや、糸井先輩に限ってそんな事はないはずだ。
なら、本当に七瀬先輩の事を本当は心配して。
しかし、それでは今までの行動に納得出来ない点が多すぎる。
『そうだ、そこに古東くんと星海くんもいるかい。』
「えぇ、丁度隣にいますけど。」
『それならスピーカーにして貰えるかな?』
「スピーカー?はい、分かりました。」
指示通りスピーカーにして二人にも聞かせる。
今から何が起こるのか分からないけど、大事な要件なのだろう。
『あー、聞こえる?私、七瀬よ。』
「えっ!七瀬先輩ですか!今どこにいるんですか!ちゃんとご飯食べてますか!ウチ、ウチ、心配してたんですからね!」
真っ先に俺の携帯を取って七瀬先輩に話し掛ける凛。
目元は真っ赤になっている。
声が聞けて安心しているのだろう。
安心したら、次は質問に答えて貰うターンだ。
凛と同じように聞きたいことは山ほどある。
その全部を答えてもらうのは無理だと分かっていても、いくつかは絶対に聞いておきたい。
『まだ電話越しでごめんなさい。外に出るときっと捕まってしまうから。場所も同じ理由で言えないけど、絶対安全な場所にいるわ。』
「それだけ聞けたらとりあえずは一安心ですよ。」
「なんでアタシ達に一言言ってくれなかったんですか?」
『急にあの人に呼び出されて、その後色々あったから連絡すらも出来なくて。』
このタイミングで電話をして来たと言うことはある程度落ち着いたと思って良いのか。
『明日、痺れを切らした七瀬くんのお父さんが街全体を強行調査に入るらしい。そうなったら、街全体に迷惑が掛かるから自分から決着を付けるって七瀬くんが。』
中々強引な手段に出たな。
そんな事をするなら、まず捜索願を警察に出すべきだがそうしないのは世間的を気にしてか。
警察のお世話になれば確実に情報が出回るだろうからな。
世間からの印象も大事な世界で生きている彼が、家族と上手くいっていないとイメージダウンに繋がるという判断か?
先輩の事には気を配らない癖に、どうでも良い事は気になるんだな。
「俺達に一日だけ時間をくれませんか。」
『ダメよ。明日にはあの人が動き出すから。』
「絶対になんとかして見せます。」
『・・・。明日一日だけ。それがタイムリミット。もしそれを少しでもオーバーするなら私が動くわ。』
「ありがとうございます。」
俺達を信じて時間を与えてくれた七瀬先輩。
この時間を無駄にすることは出来ない。
何としてもでも七瀬蓮也を止め、お見合いを中止させる。
先程まで晴れていた空に雲が掛かった。
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