第114話 仮初の家族
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「貴方達、ここがどこか分かっているの?」
メイド服を来た人達が俺達を囲う。
ここがどこか分かっているのか。
そんな質問をしなくても、分かっているから来たに決まっているだろ。
「見る限り、そんな量の荷物を持っていると言うことは旅行者ですか?」
「いえ、七瀬楓さんに会いに来ました。」
「お嬢様に!これは、何か知っていることがあるかも知れませんね。」
一旦、メイド同士で集まり会議を始めた。
ここにはタクシーの運転手が言っていたように七瀬先輩はいない様だ。
この人達も七瀬先輩を探しているようで、俺達から何とかして情報を取れないかと考えているのだろう。
メイド長らしき人がどこかへ電話を掛けている。
そして、数分してから戻って来た。
「お嬢様のお友達と言うことでよろしいですか?」
「そうですね。部活の後輩です。」
「それでは、客室にご案内しますのでこちらへどうぞ。」
言われるがまま後ろを付いて行く。
今から何が起こるのか全く予想も出来ていない。
でも、この様子だと手荒な扱いは受けないだろうと勝手に思っている。
庭も相当に広かったけれど、屋敷の中に入るとそれよりも大きな衝撃が走る。
まず目に入るのは、玄関の正面にある大きな階段だ。
こんなの洋画でしか見たことない造りだぞ。
華も凛も先程から言葉を失っている。
ある程度はお金持ちであることは知っていたが、まさかここまでのレベルだとは誰も思わないだろう。
「それではこちらの部屋に入ってお待ちください。」
扉を開けられて、中へ入るように促される。
客室というだけあって、生活感はまるで感じられないな。
それに必要最低限の物は置かない様にしているのが伝わってくる。
机を挟んで二つのソファーがあり、俺達はとりあえず大人しく座って待つこと。
もっと隅々まで探って見ても良かったけど、誰かが来た時に言い訳するのが面倒だ。
コンコンコンッ
扉を叩く音が聞こえる。
恐らく、誰かが来たみたいだ。
「失礼する。ようこそ、七瀬邸へ。私が七瀬蓮也だ、以後お見知り置きを。」
「初めまして。俺達七瀬楓さんの部活の後輩で、本日合わせてもらいたくて来ました。」
ここは敢えて何も知らない人を装って聞いてみる。
「あのバカ娘なら今はいない。そうだろ?」
後ろに立たされているメイド長に問い掛ける。
まるで、他人事の様だな。
自分の娘の事なのに、怒り以外の感情を一切感じられない。
不安や焦りはないのか。
これはお見合いどうこう抜きにしても、家出するだろ。
「今週の木曜日午後十四時頃にお嬢様が行方不明になりました。現在、四名が独自に捜索を行っていますが現在に至る四日間では所在が不明となっております。」
「だそうだ。楓だけでここまで逃げられるとは思えない。恐らく、協力者がいるのは確かだ。」
「なるほど。俺らはとりあえず会えそうにないんですね。」
なら、この家には用はないな。
父親との関係もある程度は把握出来たし、どれだけの時間いないのかも知れた。
後はどうやって話を切り上げて逃げるかだけど。
「君達、娘と同じ部活に入っていると言ったな。何か行方を知っていたりはしないのか?」
やっぱり話はそうなるよな。
知ってても言うはずはないが、今回は本当に何も知らない。
このまま帰してもらえるないなんて事もありそうだ。
適当な事を言って後から大事になるのも面倒だし、あくまでも中立であるように振る舞うか。
「いえいえ、ただ夏休みなのでと思い来た次第です。お困りの様でしたら、見つけ次第ご連絡を差し上げますよ。」
「そうか、それは頼もしい。君なら探し出せそうだね。」
あまり期待はしないでほしい。
元から教えるつもりなんてないのだから。
「お話し中失礼します。河野です。」
誰か新キャラが入って来たな。
こっちはようやく逃げられそうな雰囲気だったのに邪魔しやがって。
名前は河野と名乗った男。
身長は高く、スラッとした細身でスーツが良く似合う。
「君達には関係ないと思うが紹介しよう。この人が河野厚人くん、娘のお見合い相手の一人だ。」
「ちょっと七瀬さん、まだ僕に決まって無かったんですか?」
「そうは言ってもだね。確かに君は財力も知力も経営力だってある。でも、歳が三四だ。世間体も一応あるから保留なんだよ。」
三四って七瀬先輩の十六も上じゃないか。
それは流石に抵抗があるらしく、この父親も決めかねているようだ。
でも、気にしているのは娘の事ではなく、その結婚を許してしまった時に起きる非難の声だろう。
あくまで表舞台に立つ人間。
評判の一つで全てが消え去って行く事もざらにある。
「君達が楓ちゃんのご学友かな?君達からも彼女を説得しておいてくれないか。彼女自身が乗り気になれば、お父様もきっと了承してくれるからね。」
「あはは、俺達もさっきあったばかりなので説得しても意味ないと思いますよ。」
「うーん、それもそうだね。まぁ、僕が一番先に彼女を見つければ納得してくれるかもね。」
そうなるかは別として、この男に見つけさせてはいけない気がする。
一番楽なのは、先輩方のどちらかに連絡が着けば聞き出す事もできるのに。
これ以上、ここにいる理由もないので華と凛を連れて逃げ出す。
最後の最後に見つけたら連絡するように釘を刺されたが、絶対連絡はしないに決まってるだろ。
あの会話で家族間の仲が良くないのは一発で分かる。
あと、お見合い相手の男。
華と凛の事、ずっと舐め回すように見ていたのバレバレだぞ。
若い子だったら誰でも良い、見境無いやつだって一瞬で分かる。
家から何とか出られた瞬間に大きなため息が出る。
二人も一切喋っていなかったけど、ようやく口を開いた。
「全部含めて気持ち悪かったー。あんな所で生活してるなんて七瀬先輩可哀想だよ。」
「普段は寮だって言ってよ。実家が遠いからって理由だけだと思ってたけど、今全部理解した。」
「それよりもだ。この家が捜索を始めているのに、四日も見つからないってのは糸井先輩も相当本気だ。真意を聞くためには会うしかない。俺達も探すぞ。」
先に見つけられてはいけない。
特にお見合い相手の方にはな。
でも、今日はだいぶ日が落ちて来た。
泊まれる様な場所を見つけないと野宿が決定してしまう。
最悪、俺だけだったならそれも可能ではあったが女性陣には酷な話だ。
この辺に宿屋があるか聞いておくべきだった。
日が暮れてしまった今、先程はたまたま通っていた車も通らない。
一応、ネットで検索をしてみると宿屋はあるみたいだな。
文句を言っていても始まらないので、歩いてそこまで行く。
完全に日が落ち切ったので、日差しが体力を奪う事がないのは唯一の救いだ。
歩く事十数分。
結果的には宿屋に着く事が出来たけど、全員疲労困憊。
明日こそは先輩達を見つける事が出来れば良いんだけど。
和風な造りが心を癒してくれる宿屋の自動ドアが開く。
中にはそれなりの人数がいるな。
カウンターの方へ行き、今部屋が空いてるかの確認をする。
ここが一番の問題点だからな。
「すみません、二部屋空きってありませんか?」
「あー、そうですね。三人部屋が一箇所なら空いてますけど。」
二人に確認の意味を込めて振り返る。
「アタシはそれで良いけど?」
「ウチも問題無いよ!」
おいおい、男女が同じ部屋で寝るって。
何事も無いって分かってても気疲れしそうだ。
今夜は寝不足にならないと良いけど。
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