第104話 夏といえばバーベキュー
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夏っていうのはどうしてこうも暑いのだろうか。
外に出るだけで肌を焼く日差しが憎い。
「お兄ちゃーん!ここの川涼しいよー!」
今日はこの間約束した咲耶ちゃんとの交流会だ。
俺はてっきり家でダラダラ過ごすのだと思っていたけど、川辺のキャンプ場に来ている。
当初は一泊すると言って聞かなかった妹だったが、凛が次の日用事があるらしく、バーベキューだけして帰る事に。
凛もお泊まりはしてみたいらしいので、絶対に夏休みの間でしようねと約束を交わしていた。
家族以外の女性が寝泊まりするのは、何ともむず痒い感情になるので出来れば凛の家でやって欲しい所。
「今日はよろしくお願いしますね!お兄さん!」
「誰がお兄さんだ。俺に弟はいないはず。」
「お兄ちゃん、翔をいじめないの。」
確かにもう一人友達呼んだ方が三・三でバランスが良いんじゃないかとは提案した。
けど、男を呼ぶとは思わないだろ。
五人女性を相手にするのも大変だろうから許してやるが、余計な事をしないように注意しておこう。
「本当、シスコンだよね陽太くん。」
「俺がシスコン?そんな訳ないだろ。ちょっとしたお約束みたいなもんだ。」
「じゃあ、梨乃ちゃんが誰と付き合うとか関係ないね。」
「コホンッ、その時は一応家族としてだな。」
「えぇー、絶対にお兄ちゃんには教えてたくない。」
・・・何も聞こえなかった。
妹に拒絶されてるのは聞こえなかった。
って、なんで俺一人でバーベキューの準備進めてるんだよ。
他の奴らは呑気に川遊びを始めてるけど、こっちはせっせとタープテント設置して、炭起こして。
誰か一人くらい手伝ってくれても良いだろ。
「お兄さん、俺も手伝いますよ。とりあえず、材料とか運んでおきます。」
よし、妹はお前にやろう。
こんなに気の遣える奴なら妹の我儘にも付き合えるはずだ。
おっとと、少し優しくされただけで好きになってしまうチョロインのような感覚だった。
男二人で準備を進めていくと案外早く作業が終わる。
後は、食材を切って焼くだけ。
「おーい、あと焼くだけだぞー!」
「はーい!」
妹が他の三人も連れて来て、バーベキューが始まった。
成人していれば、お酒を飲むなんて贅沢も出来ただろう。
しかし、法律がある以上仕方ない。
「今日バーベキューにして正解だったね。」
「こんだけ天気良ければな。」
「そうですよね!それにこんな美少女の水着見られるなんて役得じゃないですか!」
「翔は褒め上手なんだからー。」
本音を言えるタイプか。
美少女と言われても嬉しくない人間なんていないだろう。
こういう所は俺も見習うべきか。
いや、俺が可愛いと言ったら警察を呼ばれてしまう可能性だってある。
そんな事で傷付きたくないのでやめておこう。
凛が肩をポンポンと叩いて、俺を呼ぶ。
そして、華と一緒に並んで水着をアピールしてくる。
これは俺に褒めろと言っているのか。
罠とかじゃないよな。
「・・・ってるよ。」
「えっ?」
「二人共似合ってるよ。」
「おぉー、その言葉を聞きたかったよ。」
「わざわざアタシまで褒めなくて良いのに。」
今は顔から火が出るほど恥ずかしい。
出来ればこの場から逃げ出したいが、帰りのバスが来るまでの我慢だ。
その代わりに川へ走って飛び込む。
さっきまで準備ばかりして気付かなかったけど、夏の川ってこんなに気持ち良いんだな。
画像で見るのとは違う清涼感を味わえる。
二、三分してさっぱりとした気分になってから戻ると、ジュウーッという音と共に食欲を刺激する匂いが漂っていた。
もう焼く段階に入っていることに感心しながら、俺も作業を手伝おうとする。
しかし、ここからは女性陣がするからと止められてしまった。
ご厚意は有り難く受け取る物だと教えられて来たので、椅子に座って待つ。
日差しは鬱陶しいが、バーベキューで使う火は何故か嫌にならない熱さだな。
そんなどうでも良いような考えが巡るほど暇だった。
「はーい、出来たよー!陽太さん、翔くーん!」
咲耶ちゃんが声を掛けてくれる。
ようやく、バーベキューのスタートだ。
「全部、美味そうだな。まずは、肉から。」
この良い肉は凛のお母さんからの提供らしい。
確かに凛の母親だったら、娘がバーベキューすると言ったら喜んで準備してくれそうだよな。
ちなみに野菜は華が、海鮮系やその他は俺が準備をした。
どれも頬が蕩けてしまいそうなほど美味い。
「そう言えば、服部さんと冬町さんは部活とか入ってるの?」
突如始まった質問コーナー。
初対面の相手には質問が多くなってしまうのは仕方ない事だ。
質問の中で会話のきっかけになるような話題を見つけられるかも知れない。
「部活は、美術部に入ってますよ。」
「美術!絵を描くの好きなんだー!」
「絵ではなくて、木彫りをメインなんですよ。」
中々、渋いのを選択したもんだ。
うーん、木彫りと言えば熊のイメージがあるな。
あの木彫りの熊って、和風な感じに木の暖かみもあって悪くない。
話の道筋から逸れてしまった。
意外だねとか珍しいねと言いたい所だけど、今まで散々言われて来ただろうから、敢えて言葉にはしないでおこう。
「いつか見せてもらいたいな。」
「本当ですよね、俺らにも見せてくれないんですよ。」
「自分の作品を顔見知りに見せるの恥ずかしくて。」
「めっちゃ気持ちは分かる!ウチも似たような経験あるよ!」
意外な所で共感出来る部分があったな。
もしかしたら、この調子で行けば仲良くなるのもあっという間かも知れない。
「あ、ちなみに俺の部活はバスケ部ですよ。」
「聞いてないけどな。で、バスケはどれくらい上手いんだ。」
「聞いてないとか言いながら、深掘りしてくれるお兄さん優しいですね。」
「よし、次の話題でも探そうか。」
「わぁあー!冗談、冗談ですから!」
コイツ、少し話振ったら調子に乗るな。
まぁ、会話が途切れないという意味では有り難いけど。
それに節々から気遣いという物も感じられる。
そこら辺の陽キャよりもワンランク上の存在だな。
さぞかし、学校でもモテるのだろう。
うーん、そんな事を考えていると腹が立って来たのでここでやめておく。
「でも、確かに陽太ってツンデレな気がする。」
「華さん。お兄ちゃんはツンデレじゃなくて、スーパーネガティブ天邪鬼捻くれ野朗なだけですよ。」
「その、この世の暗いワード全て煮詰めた称号はなんだよ。」
「いやいや、スーパーって使ってる分マシだよ。」
「そのスーパーは肯定的な奴じゃなくて、否定的な言葉を強める奴だから寧ろマイナスだから。」
「うーん、英語って難しいね。」
英語の問題じゃないだろ。
あっ、そういえば梨乃は今年受験があるはずだよな。
いくら定員割れしてるからと言って、筆記の点数低ければ落ちるぞ。
明日からは勉強漬けの毎日にするべきか。
いや、梨乃の性質上毎日勉強ばかりすると逆に頭に入らなそうだし。
「梨乃、とりあえず明日は勉強な。」
「えっ!なんで!急に深刻そうな顔なんだけど。」
「多分、英語難しいっていう所から梨乃の受験を思い出したのかも。」
「察しが良いね咲耶ちゃんは。」
「いやぁーーーー!!!」
綺麗な叫び声だけど手加減しないぞ。
その後は、勉強の事を一旦忘れてはしゃぐ妹。
どれだけ切り替えが早いんだと感心するばかりだ。
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