↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[隔週更新]「女みたい」と笑われた僕ですが、美少女VTuberとして配信したら毎日が楽しくなりました。  作者: 双葉アリア


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/17

12話 僕のもう1つの名前

挿絵(By みてみん)

ーー翌日


「これがパソコン……?」


「パソコンだよ?」


僕の机は、いつ買ったのか分からない大きな机へと交換され、その下には虹色に光る何かが置かれている。


「最近はこうやってLEDを光らせるのが流行っていてな」


一拍。


「後で色は変えるが、寝る時は消さないと眩しいぞ?」


「……お姉ちゃんのも光ったっけ?」


「光らないね……」


「真由の場合、気が散るだろう」


「まあねー」


お姉ちゃんはイラストを描く仕事をしている。


たしかに、ずっと横でピカピカ光っていたら邪魔なのかもしれない。


でも――。


「僕のはいいの?」


「千尋のは見た目も大事だからな」


「見た目?」


「配信者らしいだろ?」


「そういうものなの……?」


よく分からない。


ただ。


白いケースの中で色とりどりの光がゆっくり変わっていくのは、ちょっとだけ綺麗だった。


「ちなみに何色がいい?」


「え?」


「光の色だ」


「変えられるの?」


「もちろん」


「じゃあ……白と、薄い水色がいい」


「雪みたいな?」


お姉ちゃんに言われて頷く。


「うん。この子にも合いそうだから」


「わかった」


そう言ってお父さんは何やら設定を変え始めた。


少ししてLEDの色は派手な虹色から白と水色に変わった。


「これなら主張が強くなくて丁度いいな」


お父さんは腕を組みながら頷く。


「じゃあ……」


「まだ完成ではないぞ?」


「え?」


「今から必要なソフトをダウンロードする」


そう言って僕がいつも使っているChromeを開く。


「えーとまずはOBSに、Atelier Liveは必要だな……」


この時点でもうわからない。


「お父さん」


「なんだ?」


「OBSってなに?」


「配信するためのソフトだ」


「Atelier Liveは?」


「3DモデルやLive2Dモデルを動かすためのソフトだな」


一拍。


「他にも配信者向けの機能が色々入ってるが……そこら辺は多分、百合が使うことになるから気にしなくていい」


「お母さんが?」


「ああ。配信の管理やスケジュールなんかもまとめて扱えるからな」


「……僕が使うソフトなのに?」


「このソフトは個人勢が主に使うソフトだからな。自分で活動を管理できるようにマネジメント機能も付いている」


「まねじめんと……?」


「配信の予定だったり、活動に必要なことをまとめて管理する機能だ」


「それも僕がやるの?」


「いや」


お父さんはあっさり首を振った。


「百合がやるなら千尋には必要ない」


「お母さんが全部やってくれるの?」


「多分な」


「……僕、配信するだけ?」


「今のところはな」


「…………」


なんだろう。


僕がVTuberになるはずなのに。


僕が一番何もしていない気がする。


「これで大丈夫だな」


そう言うとお父さんはYouTubeの画面を開く。


「次はこの子の名前を決めてチャンネルを作成しないとな」


「名前かー……」


……何も考えていなかった。


「お姉ちゃんは何か考えてないの?」


「え?」


「この子を描いたの、お姉ちゃんだし」


「うーん……」


お姉ちゃんは腕を組んで、画面に映る女の子を見つめる。


「雪がモチーフだから、雪に関係する名前がいいよね」


「やっぱり?」


「千尋は何かないの?」


「急に言われても……」


僕も画面を見る。


白い衣装。


雪の結晶をイメージした飾り。


お姉ちゃんが僕のために描いて。


お父さんが動けるようにしてくれた女の子。


この子が、これから僕のもう1つの姿になる。


そう考えると。


適当には決めたくなかった。


「雪……」


僕が呟く。


「雪乃とか?」


お姉ちゃんが言った。


「ゆきの?」


「うん。でも、ちょっと普通かなー」


「雪音」


今度はお父さんが口を挟む。


「ゆきね?」


「悪くないが、もう少し覚えやすい方がいいか」


「うーん……」


3人で画面を見つめる。


「……ゆの」


「え?」


気づけば、僕はそう呟いていた。


「ゆの?」


「うん。なんとなくだけど……この子、ゆのって感じがする」


お姉ちゃんがもう1度画面を見る。


「ゆの……」


そして、にっこり笑った。


「いいじゃん! 可愛い!」


「名字はどうする?」


お父さんに聞かれて、また考える。


「名字までいるの!?」


「VTuberなら付けている人も多いな」


「また考えるの……?」


「雪がモチーフなんだから――」


お姉ちゃんが少し考えて。


「白雪、とか?」


「白雪……ゆの」


声に出してみる。


白雪ゆの。


不思議だった。


さっきまで名前すらなかった女の子なのに。


名前を付けただけで、本当にそこにいるような気がした。


「……好き」


「じゃあ決まり?」


「うん!」


僕は画面の中の女の子を見る。


「今日から、この子は――」


「白雪ゆの」


これが。


僕のもう1つの名前になった。


「じゃあチャンネルだけ作って、アイコンとヘッダーは――」


そう言ってお父さんはお姉ちゃんを見る。


「真由――頼んだぞ」


「がってん承知の亮!!」


「……お姉ちゃん」


「なに?」


「19歳だよね?」


「19歳だよ?」


「それどこで覚えたの?」


「お母さん」


「…………」


まさかの出所だった。


「アイコンはこの前描いた立ち絵を調整すればいいとしてー」


お姉ちゃんはそう言いながら、自分の部屋へ向かおうとする。


「ヘッダーはどうしようかなー。雪っぽくして、ゆのちゃんを真ん中に置いて――」


「待って」


「ん?」


「もうゆのちゃんって呼んでるの?」


「だって名前決まったじゃん」


「そうだけど……」


ゆのちゃん。


自分で決めた名前なのに。


誰かにそう呼ばれると、なんだか少しくすぐったい。


「千尋」


「なに?」


「チャンネル作るぞ」


「あ、うん!」


お父さんの隣へ戻る。


画面には、見慣れたYouTube。


でも。


これから作るのは、動画を見るためのものじゃない。


僕が配信するためのチャンネルだ。


そんな風に浸っていると――


ピンポーン。


「はーい」


階段の下から、お母さんの声が聞こえてきた。


「あ! お世話様です!」


「工事と伺ったのですが、現場はどちらでしょう?」


「2階です!」


「では、お邪魔しますねー」


そんなやり取りが聞こえてきて、僕たちはそろって首を傾げる。


「……工事?」


「なんの?」


もちろん、僕にも心当たりはない。


けれど次の瞬間。


ドタドタドタ、と何人もの足音が階段を上ってきた。


「失礼しまーす」


「…………」


「…………」


「…………」


作業着を着た人たちが、次々と僕の部屋の前へ集まってくる。


その後ろから、お母さんもやってきた。


「お母さん?」


「なに?」


「この人たち誰?」


「工事業者さんよ?」


「それは聞いてたから分かるよ!」


僕は部屋の前に集まった人たちを見る。


「なんの工事!?」


「防音工事」


「…………」


僕はお父さんを見る。


お父さんも僕を見る。


「……俺は聞いてないぞ?」


「でしょうね」


お母さんはにっこりと笑った。


「昨日、あなたも私に相談しないで136万円使ったものね?」


「…………」


「だから私も相談しなかったわ」


「お母さん!?」


お父さんが珍しく言葉を失っている。


昨日はあれだけ好き勝手に買い物をしていたお父さんが。


完全に押されている。


「百合」


「なに?」


「防音工事まで必要なのか?」


「必要でしょ?」


お母さんは僕の部屋を指差す。


「千尋が夜に配信するようになったら、ご近所さんに迷惑かけるかもしれないじゃない」


「それは……そうだが」


「それに」


お母さんは机の下で白と水色に光っているパソコンを見る。


「136万円も使っておいて、防音だけケチる意味ある?」


「…………」


「強い……」


思わず声が漏れた。


「では、こちらのお部屋でよろしいですか?」


業者さんがお母さんに確認する。


「はい。お願いします」


「分かりました。まずお部屋を確認させていただきますね」


「…………」


こうして。


僕のVTuber活動は、まだ1度も配信していないにもかかわらず――。


ついに部屋の工事まで始まることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。