003 はじめての場所で初めての友達
雪が降る田舎の町を家の中からつまらなさそうに季流は眺めていた。
家族三人が暮らすにはちょうどいいくらいのリビングに暖炉がある家に季流はつい最近引っ越してきた。
全く変わらなかったのは、この国では当たり前に広がる一面の雪景色。
前の家とのお別れは少し寂しかったけど、新しく変わる世界にわくわくもしていた。
もっと暖かいところでお花もいっぱい咲ける場所に住めることを期待していたのだけど、案の定その期待は裏切られた。
季流は、それを仕方がないと受け入れて、また同じような家の中での生活が始まるのだと思ったのだ。
引っ越してきてから数日間、父さんと母さんは新しい土地で仕事を見つけに交互に外へと出て行った。
そして今日は父さんが外に行き、母さんが家で僕と一緒にいた。
「あー、忙しい。忙しい」
母はこの数日でたまった服やズボンを洗濯物したり、各部屋の掃除をしたり、今、手が離せそうでなかった。
季流はそんな母に遠慮がちに話しかけた。
「お母さん、忙しそうだね……一緒に遊べない、よね?」
「あー、もうちょっと待ってね。季流。後で」
「うん」
母はその後、暖炉があるリビングを離れ、別の部屋へと向かっていった。
季流は再び窓から外を見る。
少しだけ離れたところにある近所の子供たちが、高台の方にある自分の家の方まできて雪遊びをしていた。
「たのしそうだなぁ」
そう呟いた季流は次の瞬間、そっと手を振った。
すると、それに気づいた一人が手を振り、それを見ていた後二人の子供も季流に気づいたようでこちらを見ている。
最初にこちらに気づいた赤いニット帽子をかけた子はこちらに手招きしていて、季流は窓を開けた。
すると赤い帽子の男の子は笑いかけてきた。
「一緒に遊ぼう?」
「え、いいの?」
「うん。いいよ」
そして、周りの二人の子たちもこちらに手招いてきて、
「こっちに来なよ」
「出て来られる?」
季流はその言葉を聞いてある葛藤にかられるのだった。
母からは【化け物】が見える自分は危ないからと一人で外に出ることを禁じられていた。
母の言いつけを破るのは、忍びないけど今はせっかくの彼らの誘いを断る事はできそうになかった。
だから季流は言った。
「今、行くよ! ちょっと待ってて!」
そして玄関へとかけて行った。
季流はその後、三人の子供たちと共にそりや雪投げをして遊んだ。
しばらく季流は、今まで味わったことがない楽しい感覚に浸っていた。
ひとまず家事を終えたサリアはリビングに来て、季流の様子を確かめた。
「季流~。ママ、家事ひとまず終わったわよ~」
けど、季流の姿は無くて、
「って、いない……」
そう呟き、部屋中を探し回った。
「季流、季流! どこに行ったの、季流?」
それでもいなくてサリアは、 もう一度リビングに戻った。
「もう、どこに行ったのかしら?」
そこでふと窓に顔を向け、四人の子供達が家の近くで遊んでいる様子が目に入ってきた。
そして気づく。
「あれ?」
雪投げをして遊んでいる子供たちの一人だけ厚着をしていない子がいた。
その男の子を見てみると、金髪が印象的な自分の子と似ていた。
というか……
「あれ、季流よね……」
その男の子は季流だった。
サリアは唖然として、しばらく楽しそうに笑っている季流の様子を伺っていた。
彼女は一息つき、薄く笑う。
「もう、外は危険だから出てはいけないと言っておいてあるのにそれを破って、季流ったら。これは後で、説教が必要のようね」
サリアはこの後、外の様子をちょくちょく確かめながら季流の帰りを待った。
昼過ぎになり子供たちとお別れする間際、赤い帽子の男の子にある箱と手紙を渡される。
「実は俺、君が家に来た時から気になっていたんだよ。だからこれは初めまして、歓迎の証だよ。これからよろしくね」
そう言われ季流はとてもうれしかった。
「うん! ありがとう!」
そう微笑んだ季流はプレゼントを受け取った。
三人はこそこそと顔を見合わせて笑っていた。
「おい、本当に渡すのかよ」
「やるね。アルマ」
「いいだろう、別に」
「ん? どうしたの?」
季流がそう聞くと、赤い帽子をかぶったアルマという男の子は、手を振って返した。
「なんでもないよ。それじゃあ、またね」
「また、遊ぼうね。季流くん」
「それじゃあ」
これから、また一緒に遊べるんだ。
そう思うと心が舞い上がるように嬉しかった。
母さんにも後でこのことを話そう。
季流はそう思って、わくわくして家の中へと駆け込んだ。




