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人形怪奇  作者: 詞記ノ鬼士
第六章 花月と月花
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011 【月花】は消え、花月とみんなで昼ご飯

「って感じで仲直りしたんだけど……分かった?」

「いや、雪野の話、ところどころ簡略し過ぎていて気になるんだけど」

 それはもう……言えないでしょ。

 特に花月と事故だったとはいえキスしてしまった事は言えない。

 花月本人にも秘密だ。

 その他にも、自分の心のうちをさらけ出した醜態をべらべら他人に話すことはできない。

「そうよ。【月花】ちゃんとの話で雪野くんはどんなことを言ったのよ?」

「そこはちょっと恥ずかしいというか、自分のいやなとこさらけ出したから言いたくないんだよね。それに忘れちゃったし……」

 こういう理由で引いてくれ……

「だからそこが気になるんじゃないか。雪野のカッコ悪い姿が俺たちは知りたいわけ」

「鬼か、お前!」

「雪野がだめなら、【月花】ちゃんにも聞いちゃおうかな?」

「ん? なになに、私の事無視しないでくれるんだ。うれしいね。これは」

 思い出すように頭を抱えるそぶりを見せてから【月花】は喋り出した。

「うーんと、雪のんはさ。怖がっていたんだよね。こんな自分がとか思って自分を卑下して、幸せになることもためらっていた。苦しんでだから花月に八つ当たりをした。そのことを兄さんに言われて自覚して花月に謝っていた」

「【月花】それ以上は言わなくていいから」

「それに私は……」

「ちょっとストップ! やめてやめろ!」

「雪のんにこう言った。もっと笑うべきだと、人と関わるべきだと。罪の意識に苛まれている雪のんに自分で勝手に苦しんでいること、みんな雪のんの事嫌っていないことを教えたよ。雪のんにはちゃんと味方がいるってことを。花月の事もその時頼んだんだよね」

「そうか。雪野はそれを守れているかな? 【月花】ちゃん的に?」

「こいつは全然だめだねぇ」

「こいつ……!?」

「雪のんはなんどもなんども、落ち込むんだ。そのたびに花月を心配させてきたよ。そのたびに言わないと分からないんだ。その時は一瞬だが聞く耳を持つんだけど、時間がたつとすぐにまた苦しみ出す。もうこれは性格の問題だね この悲観人間」

「悪かったな、どうせ俺は死にたがりの悲観人間ですよーだ。これで満足かみんな」

 そういう雪野の言葉に【月花】はまるでスルーするように続けた。

「では、話の続きと行きましょうか。雪のんと始めてお話したあとなんだけど、私は意識が無くなり木から落ちたんだ」

 この話はもしかして、

「すると、その時、雪のんが花月を支えようとして二人のく……」

 雪野は【月花】の口元を抑えて、これ以上は言わせないようにした。

「もう、ぺらぺらと、余計なことまで喋る口はどの口かな?」

「うがふがもふ……」

「え、何て言っていっているか分からないよ?」

【月花】は花月の怪力で無理やり雪野の腕を外していった。

「雪のんったら、そんなに慌てて。秘密にしておきたいなら別に言わないでおいてあげるよ。もう心配性なんだから」

「本当か? なら心配ないんだが……」

「えー、そこなんだか気になるなー」

「なぜ秘密なの。そんなにヤバい状況になったの?」

「怪我でもしたのかな?」

 蓮は【月花】に確かめるように聞いた。

「さあね~。後は皆さんの想像に任せまーすよー」

 そこで考え込んでいた紀菜が言った。

「うーんと、こういう場面はどうかしら? 二人はうっかりキスしてしまった、とか」

「……」

 雪野は青ざめて黙り込んだ。

「あれ、どうかした? 雪野くん」

 そして、雪野は蓮と紀菜から目線を逸らし、調理中の鍋を見た。

「あはは、もうすぐブリ大根ができあがりそうだぞー」

 雪野は火を止め、鍋の取っ手を掴みあげた。

「そうかー。私も食事に付き合いたいところだけど、もうすぐ意識が無くなってきそうだなぁー」

【月花】が雪野の持つ鍋の中を覗き込んで、おいしそうだなぁ~と自分はそのブリ大根を食べられないことを唸っていた。

 雪野から少し離れて横にいる蓮と紀菜は、

「あっていたのか……」

「つまりキスが正解……?」

 そう呟いた。

「え、なんの事かな? 花月とキスなんかした事ないぞ、俺は。……うん、記憶にないなぁ」

 そう言ってごまかす雪野に蓮は言う。

「正直に言ってごらんよ、雪野」

「雪野くんと花月ちゃんは、もうファーストキスをすませているのかしら?」

「もう、うるさい、うるさい二人ともなんでこういうことに興味津々になるのかな? 本当に何もなかったよ」

 嘘だけどね。

「えーそうなの?」

「本当かしら?」

「ああ……」

 雪野たちがそう言っている間にも、【月花】は意識をなくす前兆が現れたかのように、顔は虚ろになり、体は立っていられないほどふらついていた。

 それを確認しながら雪野は鍋をいったん台に置き、【月花】の近くによる。

「お前、そんなよろよろで倒れないようにしろよ」

「分かって、いるよ。花月の大事な体だからね……」

「それじゃあ、またな【月花】」

「じゃあね、雪のん……それに蓮さんに紀菜、さん……」

【月花】はそこで目を閉じた。

 その瞬間、彼女は雪野に身をゆだねるようにして倒れ込んだ。

「もう、【月花】ちゃんは消えたの、雪野?」

「ああ、消えた。そして次は花月の意識が戻ってくるはずだから、うまく話し合わせてくれ、二人とも」

「うん、分かったよ」

「分かったわ。雪野くん」

 二人がそう頷いた後、花月は、

「んん? あれ? 私……」

 薄く目を見開き、雪野を見て蓮と紀菜の方を見て、状況を確かめようとしているそぶりを見せていた。

「花月、戻って来たか?」

 雪野がそう声をかけてみると、花月は自分が意識を失っていたことに気づきこう言った。

「またですか? 雪野さん。私は意識を失っていたんですか?」

「ああ、いつも通りまたしばらくぼーっとしていたぞ」

 花月は雪野から視線を蓮と紀菜の方に移し、そして言った。

「二人とも驚かれたでしょう」

「ああ、心配しないでいいわよ。花月ちゃん」

「君が意識を無くしている間に雪野が説明してくれたから、そのー大変だね。こんな現象が続いているなんて」

「はい。そうですね……」

 花月はいつものように心配そうに自分の不可解な現象について考え込むように下を向いていた。

 自分がそんな状態になるたびに周りに迷惑をかけていることに彼女は申し訳なくなるのかもしれない。

 雪野は話を変えるようにして、花月や蓮たちに言った。

「そうだ。もう昼ご飯ができたからみんなで食べようぜ」

「そうだね。じゃあ俺、皿出すよ。どこにあるのかな、雪野?」

「えっと、右側の棚の上の方にいろんな皿があるんだけど、適当な皿を選んでくれてかまわないから」

「うん。了解」

「それじゃあ、私はご飯をいそうわ」

「ありがとうね、二人とも。それじゃあ、俺ははしやコップでも出しておこうか」

 そう言いながら、三人は動き出した。

 花月はなにもすることがなく、一人突っ立っていた。

 その姿はどこかしゅんとしているようにも見える。

 それを見て、雪野は声をかけた。

「花月、もし暇なら……はい!」

 雪野は水回りの台に置かれていた布巾を花月に向けてポイッと軽く投げた。

 それを花月は受け取る。

「机をふいてきてくれるか? それならお前にもできるだろ」

「雪野さん」

「慌てず、力はそんな入れず、ゆっくり丁寧にやるんだぞ。それがテーブルふきのこつだ。分かったか?」

「はい。分かりました!」

 こうして花月は嬉しそうな様子で急いで食べる場所がある隣の部屋へと向かった。

「さすがにこれはできるよね……」

 雪野は心配な様子で彼女を見送った。

 そして、それぞれが皆、自分の役割を終えた後、そしてクロとシロが食事場に着た後、机を囲んでご飯を食べたのであった。

『いただきまーす』

 クロとシロの語尾の言葉がその後はずれて響きわたった。

「ニャ!」

「ニャン!」

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