006 季流とバカ親子
雪野たちが屋敷での任務にあたっている頃、季流は任務中で巨大な【変物】の塊と対峙していた。
人里離れた原っぱで迫りくる、脅威。
それに向かっていく。
「ハ!」
《破気》によって、振動が周りに広がり、
「グガァアアアアアアアアア」
目の前の【化け物】はたくさんの目玉をくるくるとまわして倒れる。
そんな様子を見て、隣で共に戦っている人たちが言ってくる。
「お、相変わらず、なかなかだのう」
「さすが、兄貴だぜ! ガハハハハ!」
そう言ってきたのは兼蔵という親父と、その息子である蘭という髪を金髪にして、ピアスを付けている何事も豪快な男だった。
「でも、この俺様だって、負けていないぜ!」
彼はとても目立つ赤い羽織を翻し、走り【変物】へと向かっていく。
「蘭、お前の力をあのすかした金髪の男に見せつけてやれ」
「ああ、そのつもりだぜ!」
そして、手を前に掲げ、放つ放つ放つ――
彼は牙にような前歯を見せながら笑みを見せていた。
「ワハハ! 砕け散れ!」
爆発的な破壊力で【化け物】を蹴散らしていく蘭のその姿に季流は、
「この分だと、自分の出番はなさそうですね」
そう言って緊張を解き半眼で、蘭に続いて攻撃に向かう兼蔵の姿を捉え、二人が戦っている様子を見ていた。
蘭や兼蔵は《破力》を放ち、また季流と同様《破気》を使う事も出来た。
それを混合して【化け物】に攻撃を加えていっていた。
そして【変物】退治が終わるまでには五分もかからなかった。
「やったか……」
息が上がった兼蔵。
一方の蘭はそうでもないようすで、【変物】が消えた。
「兄貴、俺様の活躍をしっかり見てたか? これで兄貴にもちょっとは近づけたなー。ガハハハハ!」
「あー、はいはい」
この男の力量は決して低くはない。
季流は、能力の面では蘭は自分と負けず劣らずの相手だと認めてはいる。
あとは、技術面と性格の問題だろう。
無作為に《破力》を放つところと無駄で派手な動きがめ立つので、それを改善すればもっとましになるのにと季流は思っていた。
「そういえば、兄貴は途中から戦っていなかったけど、どうしたんだ?」
「それはバテていたんじゃないか?」
「そんなはずがないだろ、親父。俺様が認める兄貴だぞ。そんなそこら辺にいるへなちょこな奴らと一緒にするなよな。というか、親父もへなちょこだな。もうへばってやんの。ガハハハハ!」
「うるさいわい!」
そう言って、兼蔵は蘭の頭を思いっきりはたいた。
「いってぇ! 何すんだよ、もう。頭痛いじゃねぇか!」
「そりゃあ、いたく叩いたからな」
「暴力はいけないんだぞー。親父。兄貴もそう思うよな?」
「え……」
なぜか、振られる。
いつもの自分は雪野に平手打ちだのしていて、全く暴力はしていないとは言えなかった。
いや、それについてわざわざ今、答えなくてもいいから考えることもしなくていい!
「なあ、兄貴、聞いているか?」
季流は先程から蘭に口走るその言い方に違和感を覚えていたので、その事について蘭に聞いた。
「あなたは、毎回なんです? 私の事を兄貴と呼んで、私はあなたの兄ではありませんよ!」
すると、先の進んでいた蘭は季流へと振り向き、人差し指を立てて言った。
「ち、ち、ち、分かってないな、兄貴は。その金髪の髪、この俺様と同じ、つまり同類! 俺様は兄貴のその髪に惚れたんだぜ!」
「意味が分かりません……」
「それで兄貴の力量も敬うに値すると見た。俺様が思うに金髪に弱い奴なんかいないんだぜ! そして悪い奴もいねぇ」
いや、いると思いますよ。
それもたくさん……
あなたの相手の強さを測る基準値は髪色できまるんですか?
「私の能力に惹かれるのは分からないことはないですが、なぜ金髪にこだわっているんですか?」
季流の問いに蘭は気分高らかに答えた。
「金髪は目立つ! とてもグレートなんだぜ! 俺様は目立つのが大好きだから金髪は最高にいい髪色なんだ。ちなみに兄貴は年上だから兄貴なんだぜ! それで年下だったら俺様の子分にしていたところだったぜ!」
「それは、それは……いやなことこの上ないですね。きっぱりお断りしますよ、そんなの」
「そうか? それより兄貴はいつごろから金髪に染めてんだ。俺様は中学の頃だぜ!」
「あなた私の顔をちゃんと見ていますか? 私、ハーフですよ。これは地毛です」
「それ地毛? マジ最高だな。生まれ持っての最強人間なんだな兄貴は、すげー!」
褒められている。
そのことは嬉しくは思うのだが、バカに何いわれてもそれは半減してしまう。
内容も金髪の話題だけに呆れてしまう。
だから、こう言っておいた。
「すごくないですよ」
「季流の坊主、俺の息子を洗脳しやがって、何て奴だ……さすが、[JHSA]一の祓い屋の一人と呼ばれるだけはあるな」
「え、お宅の息子さんを洗脳した覚えはないんですが! って、ほめられている?」
兼蔵は続けて季流に言う。
「お前さんなんかより、うちの蘭の方がすごいんだからな。金髪なんて関係ない事は今の俺は知っているぞ!」
あなたも金髪は無敵的なことを思っていたんですか!
そんなバカ親子に季流は呆れかえった。
「そんな事はない。兄貴は俺様なんかよりよっぽど強いんだからな」
「はいはい、ありがとう。蘭くん。それよりその呼び名はやめてほしいです。私を兄貴と呼ばないでください」
「そんなダメだ。兄貴は金髪で強いんですから、兄貴は俺にとっていつまでも兄貴ですよ! これはマジで!」
もう本当に意味が分からない……
「もう、分かりましたよ。あなたに言った私がバカでしたよ」
「え、兄貴はバカなのか?」
「自分の事をバカだって言って、本当にバカなんじゃないのか? 大丈夫か、兄貴?」
バカ二人にバカと言われたくないですよ!
季流はため息をついてから言った。
「なんで寄りにもよって、あなた方と任務をしなければいけないんでしょうか? 私はこれくらいの任務なら一人でもよかったというのに……」
季流がそう言うと蘭は言った。
「それは、上が決めたことだから仕方ないことだろ!」
それはごもっともです。
「俺は目立ってかっこいい戦いができれば、なにも問題ナッシングだぜ!」
「あなたは……そうですよね」
どこまでも能天気な人だ。
「そんなことより次の任務にいこうぜ! 俺様の腕がたぎっているぜ! まだまだこれからだってな!」
言葉通りまだまだ余裕たっぷりの様子で蘭はバサッと、走り出し季流の横を過ぎ去る。
「親父、早く走れよ! 俺に追いつけるか?」
「待て! 俺だって、お前の年の頃には派手に走りまわっていたんだからな」
兼蔵はよれよれと蘭を追いかけて走っていく。
それを後ろで眺めながら、季流は思った。
「雪野くんたちは今頃、大丈夫でしょうか……」




